アートとデザインは、本来まったく異なる役割を持ちながらも、見た目には違いが明らかでないことも多いためか、しばしば混同されがちな概念である。とりわけ、メディアやビジネス、そしてアーティストやデザイナーのあり方の多様化に伴い、さらに境界が曖昧になっていると言えるだろう。
しかし、アートとデザインを区別し見分けることができるようになることがこの講義の目的ではない。そうではなく、それぞれ異なった意図のもとに生み出され、社会に受容されてきたさまざまなアートやデザインの事例を通して、境界を曖昧にしている要因とそれぞれの役割を考察したいと思う。また、あらゆる表現に欠かせないものとなったテクノロジーについても取り上げたい。それらの事例に触れることで、表現する/伝えるという行為、ひいては生き方の多様性について考え、実践する機会になればと思う。
本講義を履修することによって次の能力を修得する。
1) アートとデザインそれぞれの概念を自分の言葉で説明できる。
2) 目的に応じたアートとデザインの使い分けができる。
3) 作品の意図やプロセスを踏まえた批評的な見方を身につけることができる。
4) 意図を効果的に伝えるための表現手法を選択し、発表できる。
アート、デザイン、コミュニケーション、アフォーダンス、
専門力 | ✔ 教養力 | ✔ コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
授業の前半で講義を行い、後半では前半に取り上げた概念や事例を踏まえ、ディスカッションを行う。また、授業の最後に簡単な課題を出す(数回)。普段から身の周りにあるアートやデザインと思われる表現の写真など記録をとり、それが何を伝えようとしているか考える習慣をつけること。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | イントロダクション:拡張するアートとデザイン | 時代と共に変化してきたアートとデザインの概念について説明できるようになる。 |
第2回 | アートとデザインの分岐点:アフォーダンスとコミュニケーション | アフォーダンスとコミュニケーションにおけるアートとデザインの違いを説明できるようになる。 |
第3回 | 匿名性と作家性:民藝、スーパーノーマル、ファウンド・オブジェ | アートとデザインにおける作家性について説明できるようになる。 |
第4回 | テクノロジーはツールか、モチーフか:メディアアートとデジタル表現 | テクノロジーを扱った表現の変遷について説明できるようになる。 |
第5回 | ふるまいをデザインする:ポスト・パフォーマンス、バイオデザイン | 人間や生き物の動作やふるまい、習性を扱った表現について説明できるようになる。 |
第6回 | ヴィジョンを描く:ヨーゼフ・ボイス、ブルース・マウ、ジョン・マエダ | 作品を生み出すことを超えたアーティスト/デザイナーのあり方について説明できるようになる。 |
第7回 | アートプロジェクトと都市のデザイン:クリスト、川俣正、レム・コースハース | 近年著しく増加するアートプロジェクトの流れと都市のデザインのあり方について説明できるようになる。 |
第8回 | 演習:作品をつくる | 何がそれを作品足らしめているかを念頭に、身近なものを使い作品をつくって発表し、議論する。 |
特になし
後学期に入ってから具体的な参考書や参考資料を指示する予定
出席(30%)、授業参加(20%)、課題提出(50%)
なし