2018年度 教養特論:科学とヒューマニズム   Special Lecture: Science, Literature, and Humanism

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開講元
文系教養科目
担当教員名
BEKTAS YAKUP 
授業形態
講義     
メディア利用科目
曜日・時限(講義室)
月1-2(W934)  木1-2(W934)  
クラス
-
科目コード
LAH.T212
単位数
2
開講年度
2018年度
開講クォーター
2Q
シラバス更新日
2018年3月20日
講義資料更新日
-
使用言語
英語
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講義の概要とねらい

科学とヒューマニズム:宮沢賢治のヒューマニティと幸福について
このクラスは、日本の有名な作家で詩人である宮沢賢治(1896-1933)の技術と文学、ヒューマニズムに焦点を当てる。短い生涯で賢治は、百あまりの短編、多くの哲学的な詩を創作した。最もよく知られた『銀河鉄道の夜』(1933)に始まりあまり知られていない物語の中でも、無私の心および苦痛と貧困の救済、感謝を強く描いている。「真の幸福」―幸福を得るために他者を助ける―方法は、賢治の作品とその生涯で見られるもっとも重要な考えである。賢治にとって、無私の心で他者を助けることは、本質的であり、人間であるための手段であった。それは我々を、他の動物とは異なる人間にするための手段だった。彼の最もよく読まれている詩「雨ニモマケズ」は、このヒューマニズムのあり方を美しく表現している。
賢治の考える理想的な科学と技術は、賢治のこの見解の一部である。彼の描く技術者と科学者は、独学の博愛主義者であり、他者を助ける深い道徳的義務を感じている。『グスコーブドリの伝記』(1932)で、賢治は未来の故郷イーハトーブをイメージしている。そこでは、火山の噴火、地震、干ばつ、気候変動、そして飢饉などの自然災害の脅威を根絶するために、科学と技術が利用される。主人公のブドリは、独学の勤勉な技術者である。他者の幸福のために無私の精神で働き、それにより「真の幸福」に到達する。純粋な博愛主義者としてのブドリを、賢治は支持する。ブドリは、噴火による破壊からイーハトーブを救うために、進んで命を犠牲にしたのである。

各時間、「農民芸術」から菜食主義にわたる賢治の考え方のそれぞれの側面について議論する。また、彼の道徳的な視点から、仏教の立場、特に日蓮宗を検討する。一方、賢治の思想、文学、執筆に影響を及ぼした作家―ジョン・ラスキン、ウイリアム・モリス、エマーソン、トルストイ、ルイス・キャロル―についても考察する。

目的:
文学がどうヒューマニズムを育てることができるか、科学と技術と工学にどう社会的道徳的使命を与えることができるか、について示す。
賢治の、深く道徳的で人道的な物語と思考を通して、若い科学者、技術者に刺激を与え、勉学の目的と意味を探る手助けをする。
美しい散文のスタイルと感情表現を、学生たちに紹介する。

到達目標

---文学がどうヒューマニズムを育てることができるか、科学と技術と工学にどう社会的道徳的使命を与えることができるか、について示す。
---
美しい散文のスタイルと感情表現を、学生たちに紹介する。

キーワード

科学とヒューマニズム, 科学と文学, 宮沢賢治, ヒューマニストとしての科学者

学生が身につける力(ディグリー・ポリシー)

専門力 教養力 コミュニケーション力 展開力(探究力又は設定力) 展開力(実践力又は解決力)

授業の進め方

クラスの出席が必須です。学生は、
1)教室でのディスカッションに参加、
2)クラスの前に割り当てられた文献を読む、
3)短い論文を書く。

授業計画・課題

  授業計画 課題
第1回 科学、文学、ヒューマニズム 特になし
第2回 賢治、生涯と作品 ベクタス、「宮沢賢治のイハトブについて」
第3回 「雨ニモマケズ」: 日本の心の詩 宮沢賢治「雨ニモマケズ」
第4回 鉄道、星めぐり、詩、メランコリー 宮沢賢治「銀河鉄道の夜」、樺太の旅
第5回 人間であることの本質 宮沢賢治「学者アラムハラドの見た着物」
第6回 農民芸術と賢治自身のスケッチ 宮沢賢治「農民芸術概論綱要」
第7回 科学と宗教 ベクタス、宮沢賢治の羅須地人協会」
第8回 「羅須知人協会」: 賢治の革命的農業学校 ベクタス、「宮沢賢治の羅須地人協会」
第9回 セロ弾きのゴーシュ:成功、勤勉、自然 宮沢賢治「セロ弾きのゴーシュ」
第10回 「イギリス海岸」: 北上の川岸の名前  ベクタス、 「宮沢賢治のイギリス海岸」
第11回 「ビジテリアン大祭」 宮沢賢治「ビジテリアン大祭」
第12回  菜食主義の道徳的基盤 : 賢治とソローの比較  宮沢賢治「ビジテリアン大祭」
第13回 イーハトーブの大惨事と困難 グスコーブドリの伝記
第14回 ウィザードのような科学者 グスコーブドリの伝記
第15回 技術者ブドリ:独学の英雄  グスコーブドリの伝記;
第16回 「真の幸福」とは何か?    評価と自由討議
第17回 研修旅行(オプショナル) 特になし

教科書

特になし

参考書、講義資料等

Gary Snyder, The Back Country (New York: New Directions, 1967); Makoto Ueda, Modern Japanese Poets and the Nature of Literature (Stanford University Press, 1983), pp.184–320; Sarah M. Strong, “Miyazawa Kenji and the Lost Gandharan Painting,” Monumenta Nipponica, 41 (2) (Summer, 1986), pp. 175-197; Miyazawa Kenji, The Night of the Milky Way Railway, translated by Sarah Strong (New York: 1991).
Miyazawa Kenji, Once and Forever: The Tales of Kenji Miyazawa (Translated by John Bester. Kodansha, 1994).
Miyazawa Kenji, Milky Way Railroad, (Translated by Joseph Sigrist and D. M. Stroud, 1996),
Master Works of Miyazawa Kenji (Translated by Sarah M. Strong and Karen Colligan-Taylor, (Tokyo, 2002)
Kikuchi Yūko, Japanese Modernisation and Mingei Theory: Cultural Nationalism and Oriental Orientalism (Routledge Curzon, 2004); Roger Pulvers, Miyazawa Kenji, Strong in the Rain and Selected Poems (Bloodaxe Books, 2007).
Hiroaki Sato (ed.) Selections, Miyazawa Kenji (University of California, 2007);
Helen Kilpatrick, Miyazawa Kenji and His Illustrators: Images of Nature and Buddhism in Japanese Children's Literature, (Brill, 2014).
Bektas Y, “Miyazawa Kenji’s “English Coast” (2016)
“Miyazawa Kenji’s Rasu Earth People’s Association” (2015)
“In Search of Miyazawa Kenji’s Ihatobu” (2014)
“Kenji’s Vegetarianism” (in progress)

AUDIO-VISUALS (in Japanese):

Night on the Galactic Railroad (銀河鉄道の夜)
The Life of Guskō Budori (グスコーブドリの伝記)
Gauche the Cellist (セロ弾きのゴーシュ)
The Night of Taneyamagahara (種山ヶ原の夜)

成績評価の基準及び方法

クラスの参加状況とショートペーパーに基づく

関連する科目

  • 特になし

履修の条件(知識・技能・履修済科目等)

特になし

オフィスアワー

各授業後1時間。他は事前予約のこと。

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