今日、全ての国家は主権の上では平等ということになっているが、歴史的にみれば、そのような世界秩序のあり方は普遍的ではない。そこで本講義では、われわれが今日考えるような「国際関係」がいつどのような形で始まり、どのような推移を経て今に至っているのかを考えていく。とりわけ、戦後冷戦の中心舞台であったヨーロッパにおいて、米ソの勢力争いは何をめぐってどのように行われたのか。またその冷戦に大国がどのように関わり、それをどのように克服しようと試みたのか。こうした観点から、米ソの大国間政治の相互作用の過程を明らかにする。 本講義のねらいは、「現在」を普遍のものだと考える固定的な視座を打ち砕くことにある。
本講義を履修することで次の能力を修得する。 1)国際政治の歴史的展開を、大国間の「力」をめぐる政治の問題として理解する。 2)今日の国際政治の在りようを、歴史的文脈にもとづいて分析する。
歴史、主権、力、協調、冷戦、テロ
✔ 専門力 | ✔ 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
講義形式で行うが、受講者との双方向的なやり取りも重視する。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | ガイダンス | 現代の国際政治を学ぶために歴史を捉える意義を理解する。 |
第2回 | 国際関係論・国際政治学とはなにか。 | 「学」としての国際関係・国際政治とは何かを理解する。 |
第3回 | 主権国家の誕生 | 国際政治における「国家」とはなにか。歴史に依拠しながら、それを理解する。 |
第4回 | 戦争と大国 | 戦争の歴史をとおして国際政治のダイナミズムを理解する。 |
第5回 | 第一次世界大戦と戦間期 | 「総力戦」は国際政治に何をもたらしたか。次なる悲劇への「序章」を捉える。 |
第6回 | 第二次世界大戦 | 大国の「出口戦略」の視点から、戦争終結の力学を理解する。 |
第7回 | ブレトンウッズ体制の構築と戦後の国際秩序 | 「制度」をつうじた統治とはなにか。力と協調のバランスを理解する。 |
第8回 | 冷戦の幕開け(1) | 「覇権」とはなにか。冷戦は不可避だったのか。大国の戦後戦略を理解する。 |
第9回 | 冷戦の幕開け(2) | 冷戦を制度化した同盟とはなにか。NATOの創設過程を理解する。 |
第10回 | 冷戦の進展―抑止と協調 | 「核の均衡」とはなにか。抑止と協調の時代を理解する。 |
第11回 | デタントとナショナリズム | デタントが浮き彫りにした国際・国内レベルの相互作用を理解する。 |
第12回 | 冷戦の終結と新秩序 | 冷戦の終結は世界に何をもたらしたか。新秩序の幕開けを理解する。 |
第13回 | 帝国 | 米国は過去の帝国と同定されるか。「帝国論」の視点から理解する。 |
第14回 | 9.11後の世界 | テロとの戦いとはなにか。「新たな」戦争とよばれる所以を理解する。 |
第15回 | 歴史の連続性と断続性 | 国際関係・国際政治の基本構造を歴史のなかに見出す。 |
特になし。毎回レジュメを配布する。
・ 村田晃嗣(他)『国際政治学をつかむ』(有斐閣 2009年)
・ 石井修『国際政治史としての20世紀』(有信堂 2000年)
中間試験(20%)、期末試験(80%)
事前に身につけているべき知識はない。
shinji.kawana[at]ila.titech.ac.jp
メールで事前予約すること。