本講義では応用的な国際関係理論を取り扱う。 本講義のねらいは、特定の国際政治現象がもつ自己強化力学とその過程で生じる経路依存性の問題を理解することにある。 「時間性」の考察は、従来の国際関係理論が捨象してきた政治現象のパターンとプロセスを結びつけようとする試みにほかならない。
本講義では、教員による講義に加えて、受講者間の討議をつうじて、政治の方向性に影響を与える歴史の局面を解剖し、そこに作用する「時間」の諸相を明らかにしようとする。
本講義を履修することで、受講者は国際関係理論の新たな潮流を理解し、かつそれを個別の事例に援用し、批判する能力を修得する。
国際関係理論、時間、自己強化、経路依存、制度
✔ 専門力 | 教養力 | ✔ コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
本講義は教員による講義と受講者間の討議を通じて構成される。受講者(グループ)は、教員から事前に指定された教科書の該当箇所をまとめ、授業内で報告を行う。それに基づき、受講者全員で討議を行う。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | ガイダンス | 社会科学としての国際関係論の現状と方法論上の課題を理解する。 |
第2回 | 講義: 国際政治の時間性 | 国際政治現象を「時間」のなかに置き直すことの意味を理解する。 |
第3回 | 講義&討議: 自己強化 | 特定の政治現象がもつ正のフィードバックの力学を理解する。 |
第4回 | 講義&討議: 偶発性とタイミング | 「時間」は政治学における合理性仮定にいかに干渉するかを考察する。 |
第5回 | 講義&討議: 経路依存 | 政治現象の「静止画像」はその本質を映し出せるか。その成否を検討する。 |
第6回 | 講義&討議: 制度設計 | 合理的設計とはなにか。制度変化のダイナミズムを理解する。 |
第7回 | 講義&討議: 応用―なぜ沖縄に基地が集中しているのか? | 日本の基地政治のメカニズムに作用する「時間」の要素を捉える。 |
第8回 | 講義&討議: 国際関係理論再考 | 「時間」の概念が既存の国際関係理論に突きつける要請を理解する。 |
ポール・ピアソン(著)、粕谷祐子(監訳)『ポリティクス・イン・タイム』(勁草書房、2010年)
適宜、配布する。
討議への貢献(40%)、期末レポート(60%)
事前に身につけているべき知識はない。