2016年度 横断科目11:シミュレーション社会科学   Transdisciplinary studies 11:Social Sciences with Evolutionary Simulation

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開講元
文系教養科目
担当教員名
猪原 健弘 
授業形態
講義     
メディア利用科目
曜日・時限(講義室)
水3-4(W9-707)  
クラス
-
科目コード
LAH.T411
単位数
1
開講年度
2016年度
開講クォーター
4Q
シラバス更新日
2016年9月20日
講義資料更新日
-
使用言語
日本語
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講義の概要とねらい

「我が国最高の理工系総合大学」である東工大の学生が、理工系の分野の広がりを知り、その分野の社会的位置づけを考え、分野を越えた俯瞰的な視点を獲得し、自らの専門について多元的に捉えるようにする。横断科目の各科目は、各学院とリベラルアーツ研究教育院とが協働して、科目を企画・運営する。

本講義の主題は「シミュレーション社会科学」である。社会的ジレンマに陥る様々な問題状況、たとえば、万人の万人に対する闘争状態やフリーライダー問題などを説明するとともに、進化ゲーム理論や進化シミュレーションの分析手法を用いて、これらのジレンマが、共同体、国家、市場等の制度の出現によって解決し得ることを紹介する。

講義では、問題状況を数理モデルやプログラムで定式化し、同時に、モデルにこめられた社会科学的意味を吟味する形で、言説中心の社会理論にない新しい社会理論を示す。同時に、学生とともに批判的な検討を加え、複雑な社会をシステム思考で洞察する力を涵養する。

到達目標

本講義を履修することによって次の能力を修得する。
1) 1:1や1:Nの一般交換等の社会的交換行為、万人の万人に対する闘争状態、フリーライダー問題、内集団びいき、略奪国家等の概念を理解することができる。
2) 上記概念が社会的ジレンマ等の構造を持つことが理解できる。また、これらが数理的なモデルやプログラムを用いて記述できることが理解できる。
3) 進化ゲーム理論や進化シミュレーションが社会科学にどう応用されるかが理解できる。
4) モデルから得られる結果を解釈できる。特に、数理モデルが、共同体、ネーション(国民)、ステーツ(国家)という現象の洞察につながることが理解できる。

キーワード

一般交換、万人の万人に対する闘争状態、フリーライダー問題、内集団びいき、略奪国家、社会的ジレンマ、進化ゲーム理論、進化シミュレーション、共同体、ネーション(国民)、ステーツ(国家)

学生が身につける力(ディグリー・ポリシー)

専門力 教養力 コミュニケーション力 展開力(探究力又は設定力) 展開力(実践力又は解決力)

授業の進め方

他のすべての横断科目と同様に、本科目では、学生自らが能動的に学ぶアクティブラーニングを重視します。したがって、各回の講義には必ず出席し、サマリーレポートを提出してください。特別な事情で講義に参加出来ない場合は、科目責任者に事前に報告してください。講義への出席は、科目の成績に反映されます。

本講義では、社会科学的な解釈とモデルの構造を連携させることが最も重要であることから、どの授業においても、被説明対象である社会・歴史現象を具体的に説明するとともに、これを説明する数理モデルやアルゴリズムを出来る限り簡単な数学を用いて説明する。そして、モデルに対する社会科学的な解釈に関してディスカッションし、社会や歴史を社会システム科学的に洞察する視点を学ぶ。

授業計画・課題

  授業計画 課題
第1回 社会と歴史をシステム科学する 社会科学におけるシステム科学的な問題設定を理解せよ。
第2回 集団的直接互酬システム~共同体という現象~ 集団的直接互酬性を説明せよ。
第3回 タグによる共同体システム~ネーション(国民)という現象~ タグへの信頼の発生を説明せよ。
第4回 所有権の保護システム~ステーツ(国家)という現象~ 生産と制裁の関係を説明せよ。
第5回 朝貢による防衛システム~ステーツ(国家)という現象~ 朝貢と防衛の関係を説明せよ。
第6回 商品交換システム~市場という現象~ 通貨の発生が説明せよ。
第7回 現代社会を洞察する-社会的企業家、地域通貨 社会的企業家、地域通貨の意味を説明せよ。
第8回 リアリティの捉え方-社会システム論、非線形科学そして実証へ 社会科学における進化アプローチの課題を理解せよ。

教科書

なし

参考書、講義資料等

講義資料はOCW-iか授業中の配布により与える。

成績評価の基準及び方法

授業中のディスカッションへの参加が望まれる。また、2種類のレポートを課す。1つは、本授業で示した共同体、ネーション、ステーツのモデルに対して、(1) 背景、(2) モデルの構造、(3) 結果の3項目を、批判的にレポートしてもらう。他の1つは、自身の興味のある社会・歴史現象を対象として、進化アプローチによるモデリングを企画してもらう(実際に、シミュレーション等で結果を出すことが望まれるが、必須ではない)。成績評価は、授業中のディスカッションと2つのレポートをそれぞれ評価し、20%、40%、40%の重みで統合して、総合評価する。

他のすべての横断科目と同様に、本科目では、当該分野(受講学生の専門分野あるいは本科目で扱った科学技術の分野)の「広がり」と「社会的位置づけ」についてオリジナルな考察を含むレポートの提出を単位認定の条件とします。レポートの課題の詳細については、最初の講義で解説します。

関連する科目

  • SHS.P441 : 政治・法律・行政分野特論S1A
  • SHS.P442 : 政治・法律・行政分野特論S1B
  • SHS.P443 : 政治・法律・行政分野特論F1A
  • SHS.P444 : 政治・法律・行政分野特論F1B

履修の条件(知識・技能・履修済科目等)

数理モデルやプログラムに慣れていて、社会の仕組みへの興味があることが望ましい。

連絡先(メール、電話番号)    ※”[at]”を”@”(半角)に変換してください。

猪原健弘(いのはらたけひろ)、inohara.t.aa[at]m.titech.ac.jp

オフィスアワー

メールで事前予約すること。担当教員の居室は西9号館8階813号室。

その他

当講義は理学の内容を含む。

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