文化人類学的視点から、人間が持つ苦悩とそこからの解放について探究する講義である。 人間は誰もが幸せになりたいと望んで生きている。しかし私たちは多くの苦悩に直面しながら生きる存在でもある。人間にとっての苦悩とはいかなるものか、文化が違えば苦悩の形も違うものなのか、それとも人類に共通の苦悩の形があるのか。日本社会に特有の苦悩はいかなるものなのか。そうした人間にとっての苦しみを前半では扱う。
後半ではその苦悩からの解放を論じる。講師が長年論じてきた、人間にとっての「癒し」とは何か。宗教は人間の解放を導くのか。祭や儀式などのパフォーマンスの開く世界はいかなるものか。人間はなぜアートを必要とするのか。
様々な文化における苦悩の形、そしてそこからの解放の形を知ることは、人生にとって有益な体験となることだろう。また講義形式だけではなく、参加型のワーク、ディスカッション等も頻繁に行われるので、活発な参加が期待されている。
本講義を履修することによって、以下の能力を習得する。
1)人間の苦悩と解放を、文化人類学的な視点から理解できるようになる。
2)人間性の深さを獲得し、それを表現できるようになる。
文化、社会、歴史、自然、科学技術
専門力 | ✔ 教養力 | ✔ コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
講義の他、フィルム・セッション、ワークショップを行う。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | イントロダクション1 | 人間の「苦悩」を探究することの意味を考える。 |
第2回 | ワークショップー苦悩とは何か | 現代社会における苦悩、受講者にとっての苦悩とは何かをディスカッションする。 |
第3回 | 社会構造と差別 | インドのカースト制などを取り上げ、社会構造の内包する苦悩を理解する。 |
第4回 | フィルム・セッション | 多様な文化間の摩擦が引き起こす葛藤を体験する。 |
第5回 | ワークショップー葛藤を超える | フィルム・セッションを下敷きに、葛藤の原因とその改善策を議論する。 |
第6回 | 日本社会の生きづらさ | 日本社会はなぜ幸福度が低いと言われるのかを理解する。 |
第7回 | フィルム・セッション | 世界の幸福感について理解を深める。 |
第8回 | ワークショップー幸福とは何か | 文化による幸福感の違いをめぐってディスカッションする。 |
第9回 | 宗教は解放となるか | 宗教は苦悩の救いとなるかを探究する。 |
第10回 | 儀礼、祭の持つ可能性 | 儀礼や祭の持つ機能について理解を深める。 |
第11回 | ワークショップーバリ島のケチャ | バリ島のケチャを実際に体験し、祭と芸能の意味を実感する。 |
第12回 | 宗教的救いの功罪 | 宗教的救いのプラス面とマイナス面を理解する。 |
第13回 | フィルム・セッションーダライ・ラマ | 講師とダライ・ラマの対談を見て、人類の救いの未来を考える。 |
第14回 | 苦悩からの解放とは何か | 苦悩からの解放はいかなる者なのかを知る。 |
第15回 | ワークショップー未来を構築する | 受講者の直面する課題を超え、未来を展望する。 |
教科書は使用しない。資料は毎回の授業で配布する。
上田紀行『生きる意味』(岩波新書)、『人間らしさ 文明、宗教、科学から考える』(角川新書)、『『人生の〈逃げ場〉 会社だけの生活に行き詰まっている人へ 』(朝日新書)、『かけがえのない人間』(講談社現代新書)、『ダライ・ラマとの対話』(講談社文庫)、『スリランカの悪魔祓い』(講談社文庫)
中間レポート、期末レポート、講義の感想シート。
ワークショップへの参加、講義中の質問など、積極的な参加を求める。