本講義では,社会的意思決定の支援のための基本的な概念やツールを提示する。主要な論点として,意思決定支援システム,社会調査,個人情報,厚生主義,帰結主義を含む。
本講義のねらいは,意思決定支援に関する概念的理解を得る機会と,この領域における独立した研究的関心を育むような機会を,受講生に提供することである。
社会的意思決定の支援に関する主要な論点を理解することを期待する。数学的手法や技術的なシステムのみではなく,分配的正義論に関する主要な論理にも焦点を当てる。
意思決定支援システム,社会調査,個人情報,厚生主義,帰結主義
✔ 専門力 | ✔ 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
社会的意思決定に関連した多くの項目を講義と議論を通して学ぶ。いくつかの項目はグループ討議の主題となる。受講生には授業前に関連書籍と参考文献に目を通しておくことを期待する。また,口頭での議論の準備にも多くの時間を当てることが望ましい。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 多数決と社会的選択の論理1 | 多数決のための基礎的な表記法を導入する。その表記法と関連する主要な数式を理解すること。 |
第2回 | 多数決と社会的選択の論理2 | 匿名性,中立性,正の反応性の概念を理解すること。 |
第3回 | 多数決と社会的選択の論理3 | 価値制限,極値制限,限定的合意の概念を理解すること。 |
第4回 | 社会調査と情報蓄積1 | 社会調査の基本的手法について理解すること。 |
第5回 | 社会調査と情報蓄積2 | 社会調査の被験者のプライバシー保護についての基本的手法を理解すること。 |
第6回 | 社会的選択と情報処理1 | 情報処理としての社会的選択の概念モデルを理解すること。 |
第7回 | 社会的選択と情報処理2 | 社会的選択手続きで処理される情報量の計量手法について理解すること。 |
第8回 | 意思決定支援の基礎技法1 | 線形計画法,動的計画法,および他の幾つかの基本的な意思決定手法を理解すること。 |
第9回 | 意思決定支援の基礎技法2 | ISMとAHPの基本概念を理解すること。 |
第10回 | 意思決定支援システムの展開 | 意思決定支援システムに関する近年の主要な論点を理解すること。 |
第11回 | 厚生主義と非厚生主義1 | 厚生主義と非厚生主義に関する歴史と近年の主要な論点を理解すること。 |
第12回 | 厚生主義と非厚生主義2 | 厚生主義と非厚生主義の論点について自身の言葉で議論できるようになること。 |
第13回 | 帰結主義と非帰結主義1 | 帰結主義と非帰結主義に関する歴史と近年の主要な論点を理解すること。 |
第14回 | 帰結主義と非帰結主義2 | 帰結主義と非帰結主義の論点について自身の言葉で議論できるようになること。 |
第15回 | 講義の要約 | 本講義の論点と構造を改めて確認すること。 |
開講時に一冊を指定します。
アマルティア・セン著 『集合的選択と社会的厚生』 (勁草書房)
学期中に3度小テストを行う。またレポート提出も2度行う。各小テストは評価全体の20%(合計60%),各レポート提出も20%(合計40%)を構成する。
必要条件ではないものの,事前に社会モデリングAを履修しておくことが望ましい。
猪原健弘(いのはらたけひろ)、inohara.t.aa[at]m.titech.ac.jp
メールで事前予約すること。担当教員の居室は西9号館8階813号室。
当講義は理学の内容を含む。