本講義では,マルクス経済学に基づく資本主義の基礎理論の後半を扱います。まず,労働という人間の活動の特徴を一般的に分析したのち,資本主義のものでの労働のあり方について考察します。続いて,生産という概念についてより詳しく学びます。特に,社会的再生産という捉え方と,労働市場の構造に立ち入って考察します。その後,それまでの生産についての理解を前提に,それを処理する市場のしくみについて,価格機構に焦点を当てて考えます。その上で,取引所などを備えた資本主義の市場組織についてまとめ,最後に,資本主義の基礎理論の総まとめとして,景気循環の理論的考察を行います。
本講義のねらいは,世界で最も厚い研究蓄積をもつ日本のマルクス経済学の成果を活かし,それをアップデートすることで,現代の労働や経済停滞などの諸問題を,資本主義社会における構造的問題として捉えることができるようになることです。社会的再生産の理論においては,科学技術の確定性やその発見が,経済(学)的にいかなるインパクトをもつものかが考察されます。
1) 資本主義における労働の特徴を理解できるようになる。
2) 社会全体における生産過程を構造的に捉える方法を身につける。
3) 資本主義の市場における価格決定問題を解けるようになる。
4) 取引所を備えた市場の特徴を理解できるようになる。
5) 資本主義における景気循環を理論的に考察できるようになる。
資本主義,労働,生産,取引所,景気循環,マルクス
✔ 専門力 | ✔ 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
配布資料をもとに講義します。受講生には毎回コメントペーパーの記入を求め,講義中に質問・コメントに回答します。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | はじめに | 講義の概要および進め方,教科書はじめに |
第2回 | 労働 | 教科書101-109頁 |
第3回 | 工場制 | 教科書110-133頁 |
第4回 | 問屋制 | 教科書133-139頁 |
第5回 | 生産過程 | 教科書141-151頁 |
第6回 | 生活物資と総労働量 | 教科書152-164頁 |
第7回 | 労働市場 | 教科書165-175頁 |
第8回 | 費用価格と利潤 | 教科書183-192頁 |
第9回 | 生産価格 | 教科書192-197頁 |
第10回 | 複数生産条件の処理(1):生産条件の優劣 | 教科書197-201頁 |
第11回 | 複数生産条件の処理(2):地代 | 教科書201-211頁 |
第12回 | 市場組織 | 教科書244-251頁 |
第13回 | 景気循環 | 教科書253-270頁 |
第14回 | まとめ,期末試験 | マルクス経済学の再構築の意義と課題,期末試験 |
学修効果を上げるため,配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
小幡道昭『経済原論:基礎と演習』東京大学出版会,2009年
講義中に指示する
コメントペーパー,小テスト:30%,期末試験:70%
特になし