社会選択理論の導入部分へといたるストーリーを提供するという目的ものと、その理論のひとつのマイルストーンである Kenneth Arrow の仕事(主として不可能性定理)の数学的理解とその意味解釈を提供する。この理解をもとに、社会的意思決定ルールが「合理的」であるとは何を意味するのかという問題意識の一つの重要な結論である「中村ナンバー」についての議論、その詳細を講義する。なお、内容は数学的記述と展開を必要とするものであり、前半部分で(当然ふまえておくべき)言語としての数学の復習をしていただく事となる。
1) 社会的意思決定のシステムが豊かな構造を有する数理的な対象である事を理解する,
2) 投票という意思決定フレームワークについて分析と計算が出来るようになる,
3) Arrow の不可能性定理と中村ナンバーの定理の導出を数学的に理解する,
4) 論理的結論としての Arrow の定理や中村ナンバーが,経済,政治,法律,社会へあたえるインパクトについて一定の洞察が出来るようになる
協力ゲーム,解概念,社会選択理論, 投票, 単純ゲーム,Arrow の不可能性定理,中村ナンバー
専門力 | ✔ 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
講義と演習を基軸とする。概念、定義の導入→各種定理およびその証明→演習→次の概念定義へ、というサイクルは通常の大学の講義の様態である。演習は解答および解説を授業の中で一定おこなうが、Slack 等オンライン協働サービスを並行し運用する予定。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 数学準備その1:集合、写像、演算、関係 | 基礎数学復習。素朴集合論とその周辺の「言語」の整理 |
第2回 | 数学準備その2:演習 | 素朴集合論、演習問題とその解答 |
第3回 | 単純ゲーム:投票システムの形式化 | 単純ゲームと、Shapley-Shubik power index |
第4回 | Arrow の不可能性定理:社会厚生函数 | ステートメントと、みたすべき公理(fairness 基準) |
第5回 | Arrow の不可能性定理:証明 | 数学的証明(複数あり) |
第6回 | 中村の定理:ステートメント、および証明の概要 | Nakamura number、その意味 |
第7回 | 中村の定理:証明 | 数学的証明 |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
教科書は使用しない。講義資料を配布する。オンライン協働サービスにて、説明板書を都度アップする。なお、講義開始時に資料配布および質疑応答に利用する協働サービス:Slack への招待状を送付する
Arrow, Kenneth (1963), Social Choice and Individual Values (2nd ed.), Yale University Press
Maskin, Eric et al. , The Arrow Impossibility Theorem (Kenneth J. Arrow Lecture Series) ,Columbia University Press ,ISBN-13: 978-0231153287
Austen-Smith, David; Banks, Jeffrey S. (1999). Positive political theory I: Collective preference. Ann Arbor: University of Michigan Press. ISBN 978-0-472-08721-1
期末試験70%、演習30%。
社会意思決定ルール、基礎数学、不可能性定理および中村の定理の形式的証明、帰結についての洞察。これらが講義理解の成果として求められる
素朴集合論に関連する科目、社会科学への興味があること。
下川拓平 smgw[at]u.musashi.ac.jp
事前に上記メイルアカウントへ問い合わせる。