2020年度 海岸・海洋工学   Coastal Engineering and Oceanography

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開講元
土木・環境工学系
担当教員名
中村 隆志  中川 康之  鼎 信次郎 
授業形態
講義    (Zoom)
メディア利用科目
曜日・時限(講義室)
木5-6(W936)  
クラス
-
科目コード
CVE.B310
単位数
1
開講年度
2020年度
開講クォーター
2Q
シラバス更新日
2020年9月18日
講義資料更新日
-
使用言語
日本語
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講義の概要とねらい

 海洋は宇宙と並んで人類に残された大きなフロンティアの一つであり,最近では,温暖化等の地球規模環境問題に関わる地圏-水圏-気圏での水・熱・物質循環過程を理解する上でキーとなる重要な対象として位置づけられている.海岸域は,海洋と陸域をつなぐ接続域であり,港湾建設など人間活動が盛んな領域であるが,国土の狭い我が国では,海岸近くまで居住空間や道路等が迫り,一方で台風による高波や高潮・津波等の猛威にさらされていることから,如何にして海岸の背後地を防御していくかという防災上の課題が大きなウェイトを占めている.2011年3月に発生した東日本大津波災害はそのことを端的に示している。しかも,今後より顕在化していくと考える地球温暖化に伴う海面上昇や台風の巨大化などに如何にして対処していくかという問題も大きな課題になってきている.また,海岸域は,大きな基礎生産性と高い生物多様性によって特徴付けられる生物的に豊かな領域である.しかし,陸域・外洋域と接しているがゆえに,さまざまな環境負荷を受けやすい構造を持っている.実際,干潟・藻場・サンゴ礁等の重要な沿岸生態系の広範な劣化が進行しており,適切な保全策の立案と遂行が求められている.
 海岸・海洋には,水理学で扱う開水路や管路の流れとは大きく異なった特徴を持つ諸現象が存在する.その最たるものが「風波」「うねり」「潮汐」「津波」などといった様々な波動現象の存在である.さらに,海の中には「海流」や「潮流」「吹送流」「海浜流」といった様々な流れが存在し,海岸・海洋の流体運動をバラエティー豊かなものにしている.これらはいずれも,重力や圧力勾配によって駆動される単純な一方向流れである開水路や管路の流れと比べると,その力学構造がそれぞれ大きく異なる現象である.本講義では,これらの諸現象の基本的な物理過程を理解し表現するための基礎理論を講述するとともに,工学上重要となる海岸構造物への波の問題や漂砂(波・流れによる砂移動)の問題等についても言及する.さらに,最近重要性を増してきている沿岸域の環境問題や水産・海洋資源問題,広域沿岸管理,地球環境問題との関連等について講述し,将来の沿岸環境のあり方について議論する.

到達目標

この講義を履修することによって,
1.沿岸域における様々な波動現象や流れについての基礎理論を理解しそれらの基本的な物理過程を把握でき,
2.それらに基づいて,沿岸域における漂砂のメカニズムなどを把握しそれらの制御について論じることができ,
3.沿岸域における様々な環境問題について理解の基礎となる重要なポイントについて習得するとともに,将来の沿岸環境のあり方について議論できるようになる.

キーワード

水の波の力学,潮汐・高潮・津波,潮流・海流・海浜流,漂砂と海浜変形,沿岸環境問題,地球環境問題と沿岸生態系保全,統合沿岸域管理,持続的水産資源管理

学生が身につける力(ディグリー・ポリシー)

専門力 教養力 コミュニケーション力 展開力(探究力又は設定力) 展開力(実践力又は解決力)

授業の進め方

第1回の講義の際に,講義計画の概要を説明するとともに,各回の講義のプレゼン資料等は,事前にOCW-iにアップすることを試みる.講義14回に加えて見学会1回を実施する.講義海には随時小テスト等を実施する.

授業計画・課題

  授業計画 課題
第1回 イントロダクション/水の波の基礎理論 沿岸域での防災や環境保全上の課題等の重要性について例示し,講義計画について概観する.界面波の一種としての水の波の基本的な特徴を理解する
第2回 波の変形(浅⽔変形,屈折,回折,反射)および砕波 海岸近くの浅海域での⽔の波の変形過程についてその メカニズムと評価法について理解する
第3回 潮汐,高潮, 津波, 海の中の流れ:潮流・海流・吹送流 潮汐や高潮、津波の発生メカニズムを理解するとともに、潮流・海流・吹送流の駆動メカニズムについて学ぶ
第4回 沿岸環境の数値シミュレーション 沿岸環境を再現し将来予測を行うための数値シミュレーション手法について理解する
第5回 漂砂と海浜変形(1) 漂砂のメカニズム、シルテーション 海浜流や波動に伴う沿岸域での砂移動現象の特徴や移動メカニズムを理解する
第6回 漂砂と海浜変形(2) 漂砂の収支と海浜変形およびその制御 漂砂の収支から見た海浜変形のメカニズムを理解するとともに,そのいくつかの制御方法について学ぶ
第7回 見学会 港湾空港技術研究所等を訪問して先端的な研究施設を見学するとともに,現地での質疑応答等もふまえてレポートを提出する

授業時間外学修(予習・復習等)

学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。

教科書

特に指定しない

参考書、講義資料等

堀川清司『新編 海岸工学』東京大学出版会,ISBN-13: 978-4130611084
宇野木早苗,久保田雅久『海洋の波と流れの科学』東海大学出版会,ISBN-13: 978-4486013808
栗山善昭『海浜変形 -実測,予測,そして対策-』技報堂出版,ISBN-13: 978-4765516822

成績評価の基準及び方法

講義中の小テスト(約85%),見学会レポート(約15%)

関連する科目

  • ZUT.B202 : 水理学第一

履修の条件(知識・技能・履修済科目等)

なし

その他

見学会のスケジュールは後日調整される。

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