本講義は、連続体の概念から始まり流体力学の基本概念を与えるものです。この講義では、非粘性流体に関する基礎知識、基礎方程式、オイラーの運動方程式、循環と渦度、ベルヌーイの定理、流線と流関数、速度ポテンシャル等について講義を行います。講義と演習を密接に組み合わせて,機械工学分野における実際の流体機器の設計において重要となる完全流体に関する基礎概念を習得します。
流体力学は機械工学における諸問題を扱う上で根幹となる重要な専門分野であり、本講義は最初に学ぶべき必須科目として位置づけられます。これは,「実在流体力学」や「応用流体力学」といった講義の履修に際して必要となります。
本講義を履修することによって次の能力を修得する。
(1)完全流体力学を中心に基礎方程式を導出できる.
(2)循環や渦度に関連した基本定理を説明できる
(3)ベルヌーイの定理を用いて基本的な流れの特性を導くことができる.
(4)流線と流関数の定義,基本的な流れの速度ポテンシャルや複素速度ポテンシャル等を説明できる.
(5)完全流体中の物体に働く流体力を説明できる.
非粘性流体、基礎方程式、オイラーの運動方程式、循環と渦度、ベルヌーイの定理、流線と流関数、速度ポテンシャル
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
授業は講義形式で行われ,第7回および第14回の終了後,演習課題が課されます。各回の課題を予習・復習して下さい。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 連続体力学、応力、完全流体と粘性流体、圧縮性 | 連続体の近似、応力の定義、完全流体と粘性流体の違い、圧縮性を理解する |
第2回 | 流れを表す物理量、Lagrangeの方法とEulerの方法、Eulerの連続方程式 | 流れを表現する物理量とその記述方法を理解する |
第3回 | Eulerの運動方程式、運動量の流れ、状態方程式 | Eulerの運動方程式と運動量の流れについて理解 |
第4回 | 流線・流れの道すじ・ストリークライン、流体粒子の運動 | 流体の運動を表現する各種手法を理解する |
第5回 | 運動方程式の第一積分、ベルヌーイの定理 | 運動方程式の第一積分とベルヌーイの定理を理解する |
第6回 | ベルヌーイの定理の応用 | ベルヌーイの定理の応用法を理解する |
第7回 | 流線曲率の定理、ラグランジュの渦定理、渦度と循環、渦管の強さ | 流線曲率の定理やラグランジュの渦定理を理解する |
第8回 | ケルビンの循環定理、ヘルムホルツの渦定理 | ケルビンの循環定理とヘルムホルツの渦定理を理解する |
第9回 | 流関数と速度ポテンシャル | 流関数と速度ポテンシャルの定義を理解する |
第10回 | 球周りの速度ポテンシャル | 一様流中の球周りの速度ポテンシャルの導出とその特性を理解する |
第11回 | 複素速度ポテンシャル | 複素速度ポテンシャルの定義とその特性を理解する |
第12回 | 基本的な流れの複素速度ポテンシャル | 基本的な流れを表現する複素速度ポテンシャルを理解する |
第13回 | 複素速度ポテンシャルの応用 | 複素速度ポテンシャルの応用方法を理解する |
第14回 | クッタ・ジェーコフスキーの定理 | 揚力と抵抗力を与えるクッタ・ジェーコフスキーの定理を理解する |
第15回 | シュバルツ・クリストフェルの定理 | シュバルツ・クリストフェルの定理とその応用を理解する |
宮内 敏雄・店橋 護・小林 宏充、「流体力学の基礎」、数理工学社、(2014) ISBN:978-4-86481-023-4
今井功、「流体力学(前編)」、裳華房、(1973) ISBN: 4-7853-2314-0
日野幹雄、「流体力学」、朝倉書店、(1992) ISBN: 4-254-20066-8 C305
日本機械学会編、「JSMEテキストシリーズ 流体力学」、丸善、(2005) ISBN: 978-4-888898-119-4 C3353
流体力学における基礎項目の理解度と、基本的な流れの問題に対する応用能力を評価する。期末試験(80%)および演習(20%)で成績を評価する。
偏微分方程式(MEC.B213.A),ベクトル解析(MEC.B214.A)を履修していること,または同等の知識があることが望ましい。