本講義では、公共システムをめぐる代表的な理論と言説についてのオリジナル文献を読む。公共システムを設計するためには、説明力の高い記述的理論に加えて、規範的な理論を学ぶ必要がある。公共システムの機能は、行為の相互作用によって影響を受けるからであり、行為を理解し説明するための優れた理論は、規範性と記述性を兼ね備えている必要があるからである。公共性をめぐる理論と言説は、政治学、経済学、社会学、心理学と他分野を横断しているのが、行為のモデルと制度のデザイン原理を対応させることで、全体をも通せる共通の見通しを得ることができるように講義を進めていく。
本講義のねらいは、公共システムをめぐる理論と言説について理解を深め、現存する公共システムを批判的に評価し、再設計するための基礎力を習得することにある。
この講義では、以下の3つの目標に到達することをめざします。まず、初めに、公共システム論の2大潮流であるリベラリズムとリパブリカンの思想が、どのような行為モデルに反映されてきたか理解することを目標にします。次に、行為モデルと公共システムの類型との対応関係を理解することが第二の目標です。最後に、規範的行為モデルを記述性という観点から評価し、価値対立と不確実性によって特徴づけられる再帰的近代社会において、より適応性ある公共システムを構想しデザインする力を習得します。
集合行為ジレンマ、ナッシュ均衡,パレート最適,制度設計、市民社会、討議的デザイン、
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
各回テーマの主要文献を、オリジナルテキストで読み、討論を行う。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | イントロダクション | 批判的合理主義について理解し、社会システムデザインに対して批判的合理主義が及ぼした影響について説明できるようになる |
第2回 | 公共システムと集合行為ジレンマ(1):公的介入の正当性 | 批判理論と討議的デザインの関係を理解し、批判理論が社会システムデザインに及ぼした影響について説明できるようになる |
第3回 | 公共システムと集合行為ジレンマ(2):公的セクターをめぐる論争史 | 公理論的社会選択理論の基礎的理論(単峰性、中位投票理論、投票のパラドックス)について理解し、同理論の問題点について説明できるようになる |
第4回 | 集合行為ジレンマと分権的ガバナンス(1) :コースの理論と所有権ルール | 公理論的社会選択理論の枠組みに討議を取り込むことで投票のパラドックスが回避できることを示せるようになる |
第5回 | 集合行為ジレンマと分権的ガバナンス(2):自己組織的集合行為の理論 | ミニ・パブリックスと公共圏の理論を理解し、討議をめぐるミクローマクロ問題について説明できるようになる |
第6回 | 集合行為ジレンマと分権的ガバナンス(3):繰り返しゲーム | 逆選択、モラルハザード、およびインセンティブ契約の理論の基礎を理解し、 |
第7回 | 外郭的秩序と市民的公共性:景観利益を集合行為問題から考える | ホールドアップ問題、及び不完備契約の理論の基礎を理解し、不完備契約問題として制度設計問題を定式化し、制度の効率性評価ができるようになる |
第8回 | 投票理論とガバナンス(1):多数決原理の民主性と投票のパラドックス | 集合行為ジレンマに問題として制度設計問題を定式化し、制度の効率性評価ができるようになる |
第9回 | 投票理論とガバナンス(2) :投票のパラドックス、中位投票の理論 | 所有権理論の基礎を理解し、同理論の枠組みから制度の効率性評価ができるようになる |
第10回 | リパブリカンとリベラリズムの接点(1):G/E 仮説、協力的個人、効力感、信頼 | 構造的G/E仮説を理解し、互報酬性的規範と信頼を組み込んだ行為モデルを構築できるようになる |
第11回 | リパブリカンとリベラリズムの接点(2):個の超越メカニズム 進化 vs 発達 | 内発的動機づけ理論を理解し、MSCパラダイムを説明できるようになること |
第12回 | リパブリカンとリベラリズムの接点(3):規模問題と構造的GE仮説 | 再帰的近代論について理解し、国家、市場、市民社会の関係について批判的評価ができるようになる |
第13回 | リパブリカンとリベラリズムの接点(4):制度とソーシャル・キャピタル | J.ハバーマスのコミュニケーション論、生活世界論を理解し、国家、市場、市民社会の関係について批判的評価ができるようになること |
第14回 | リパブリカンとリベラリズムの接点(5):コミュニケーション的合理性と討議的デザイン | 制度の行為制限的機能と規範形成機能について理解し、国家、市場、市民社会の関係について批判的評価ができるようになること |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
特になし
毎回のテーマに合わせて、オリジナルテキストのコピーを配布する
毎回の課題 40% 期末レポート 60%
特になし。