本講義「土木と環境の計画理論」では、土木環境工学に関わる公共の政策および計画の理論を学ぶ。そのため、環境政策の全体像を広く生活分野から土木・交通分野まで学習した後、社会的ジレンマ等の環境問題の構図を明らかにする。それらの問題に対処するため、住民や消費者、利用者の視点での効用・厚生に基づく経済理論、集団の意思決定としての投票理論、社会的手続きに関わる法哲学の理論等の基礎を学ぶ。その上で土木計画や交通計画など、環境政策に密接に関わる実践領域を対象に、計画確定に至る手続きやコミュニケーションの理論と適用について演習を行いつつ学習し,今後の土木計画や環境公共政策の実践のために、社会が満たすべき仕組みや制度についての考え方を学ぶ。
本講義のねらいは次の通りである。すなわち、人びとの様々な価値が対立しがちな現代の社会にあって、今後の都市や地域を安全、環境、活力、生活等の様々な面から望ましい姿に形成するためには、土木工学の建設技術とともに、社会が納得するように合意形成を促進し物事を決めるための社会的な枠組みや仕組みが重要となっている。そのような考え方を教授することが本講義のねらいである。
本講義を履修することによって次の能力を修得する。
1)気候変動問題から開発に伴う環境影響配慮まで、土木と環境の両者に関わる計画課題を理解し、それらに対応する基本的政策事項を理解できる。
2)土木と環境の計画理論の基礎として、ディレンマ理論、効用理論、投票理論、手続き理論等の概要を講義と演習と通じて説明できる。
3)土木計画における計画確定に至る手続きや、コミュニケーションの理論を理解し、具体的な計画プロセスの概略をデザインできる。
4)今後の土木計画等の実践のために満たすべき計画の枠組みや仕組みを理解できる。
土木計画、環境公共政策、社会的ディレンマ、効用、厚生、投票、手続き、計画理論、コミュニケーションプロセス
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
毎回の講義の最初に前回のまとめを行い、今回の講義の要点を示す。講義の最中に必要に応じて課題を出し、講義終了時に提出させる。また、必要に応じて講義中に討議を行い、翌週までの宿題を出す。講義前にOCWより資料をダウンロードして予習が必要。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 環境政策1:概論、地球温暖化対策と地域計画の方向 | 土木と環境の計画理論の扱う範囲の確認 |
第2回 | 環境政策2:土木事業と地域公共政策 -近年の課題- | 環境と公共の利益 |
第3回 | 環境政策3:環境公共政策(計画)の全体像 | 総合性と政策継続性の理解 |
第4回 | 環境ディレンマ1:公と私の対立を描く基本的構図 | 公共性と公共心 |
第5回 | 環境ディレンマ2:ディレンマ解消の多面的な方策 | ディレンマと実践的な対策 |
第6回 | 環境公共政策の構成に関する課題演習 | 個人演習 |
第7回 | 選好・効用・集団決定1:選好と効用の考え方の基礎 | 選好と効用の理論の理解 |
第8回 | 選好・効用・集団決定2:効用理論の展開 | ランダム効用理論の理解 |
第9回 | 選好・効用・集団決定3:社会的決定の理論1 -厚生関数と投票理論- | 投票理論の理解 |
第10回 | 選好・効用・集団決定4:社会的決定の理論2 -法哲学アプローチ- | 法定手続きと正義 |
第11回 | 環境公共政策の実現1:政策・計画決定のプロセス | 計画プロセスの理解 |
第12回 | 環境公共政策の実現2:住民参加とPI | パブリックインボルブメントの理解 |
第13回 | 環境公共政策の実現3:政策・計画策定の実践 | 政策実践の理解 |
第14回 | 土木と環境の計画評価のための課題演習 | 計画評価の考え方 |
第15回 | 土木と環境の計画実現のための課題演習 | 計画実現の課題 |
本年は教科書を指定しないが、講義資料はOCWを通じて提供する。
佐伯胖:きめ方の論理、東京大学出版会
安彦一恵編:公共性の哲学を学ぶ人のために、世界思想社
竹村和久:行動意思決定論、日本評論社
ウイリアム・パウンドストーン:選挙のパラドックス、青土社
佐々木・金:公共哲学9、地球環境と公共性、東京大学出版会
植田和弘:環境政策の経済学、日本評論社
藤井聡:社会的ジレンマの処方箋、ナカニシヤ出版
森地茂、屋井鉄雄編著:社会資本の未来、日経新聞社
森地茂編著:国土の未来、日経新聞社
講義中の提出課題、提出レポート、発表(35%)
期末試験(65%)
特になし
tyai[at]enveng.titech.ac.jp
メールで事前予約すること
特になし