概要:公共空間のデザインに、住民参加が当然のように求められるようになったのは、最近わずか15年ほどのことである。なぜ参加が必要なのか、参加によるデザインは従来の専門家によるデザインと、デザインの過程そして形態において、どのように異なるのか。今日における社会―空間にまたがるデザインの課題および解決手法について、コミュニティ・デザインの実践を事例を通して講述する。
ねらい:本講義では、以上の立場から、空間―社会アプローチの実践であるコミュニティ・デザインに必要な理念と技術を事例を用いて講義し、それらを理解、習得せしめることを目的とする。
本講義を履修することによって以下の能力を修得する。
1)コミュニティ・デザインが実際に都市に介入した際におきる変化について、理解し表現できるようになる。
2)コミュニティ・デザインの具体的な事例からその意義を、理解し表現できるようになる。
3コミュニティ・デザインにおけるステークホルダーの相互関係のマネージメント方法を、理解し表現できるようになる。
コミュニティ・デザイン、住民参加、コミュニティ・デザイナー、都市デザイン
✔ 専門力 | 教養力 | ✔ コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
毎回の進め方:トピックに関する講義を45分程度行い、学生諸君のトピックに関する調査発表とディスカッションを45分程度行う。
15回の進め方:コミュニティ・デザインの実践から明らかになっている諸原則を学び、今後の方向性についても検討する。
講義形式の特徴:学生諸君の発表とディスカッションを、講義と組み合わせることで、主体的な思考を促す。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | オリエンテーション | コミュニティ・デザインの事例を概観する。 |
第2回 | コミュニティ・デザイナーという仕事 その理念 | 現場でコミュニティ・デザインを職能とする専門家の目的と倫理を、理解し表現できるようになる。 |
第3回 | コミュニティ・デザイナーという仕事 社会的位置 | コミュニティ・デザイナーが専門家として期待され果たすべき職能を、理解し表現できるようになる。 |
第4回 | コミュニティ・デザインの技術と手法 協働のデザイン | コミュニティ・デザインの基本的手法である多様な参加者間の協働のデザインを、理解し表現できるようになる。 |
第5回 | コミュニティ・デザインの技術と手法 見えないものを描く | コミュニティ・デザインの基本的手法であるオルタナティブな解決策の作成を、理解し表現できるようになる。 |
第6回 | コミュニティ・デザインの実践 ①マンテオ市 | アメリカ合衆国ノースカロライナ州マンテオ市における観光開発とコミュニティ再生の事例を学ぶ。 |
第7回 | 環境的公正 | コミュニティ・デザインの基本的理念である弱者との共存のための環境的公正を、理解し表現できるようになる。 |
第8回 | 聖なる構造 | コミュニティ・デザインにとってきわめて重要なコミュニティの形成する聖なる構造を、理解し表現できるようになる。 |
第9回 | コミュニティ・デザインの実践事例 ②ロスアンゼル市 | アメリカ合衆国カリフォルニア州ロスアンゼルス市における河川整備とコミュニティ再生の事例を学ぶ。 |
第10回 | 社会デザインと都市デザイン | 問題解決のためのコミュニティ・デザインの基本的技術である、社会的側面と空間的側面の同時的、相互貫入的操作を、理解し表現できるようになる。 |
第11回 | スケールアップについて | コミュニティ・デザインの実践において、社会的空間的なスケール変化への対処の理念と技術について、理解し表現できるようになる。 |
第12回 | コミュニティ・デザインの実践事例 ③日本 | 日本におけるコミュニティ・デザインの事例を適宜取り上げ、その成果と課題を学ぶ。 |
第13回 | 行政、企業、NPOとの協働 | コミュニティ・デザインのプレイヤーである各社会的セクターとの協働の技術を事例から学び、理解し表現できるようになる。 |
第14回 | 参加のデザインからエコロジカル・デモクラシーへ | コミュニティ・デザインの帯びがちな社会的空間的スケールの課題を超克する理論であるエコロジカル・デモクラシーについて学ぶ。 |
第15回 | まとめ | コミュニティ・デザインが実際に都市に介入した際におきる変化について、理解し表現できるようになる。 |
R.T.Hester/土肥真人「まちづくりの方法と技術―コミュニティ・デザイン・プライマー」現代企画室
R.T.Hester「Design for Ecological Democracy」The MIT Press
必要に応じて配布する。
調査発表を1回、レポートを計1回提出する。それぞれ、理解度(25点)、知識力(25点)、構成力(25点)、表現力(25点)を評価し、採点する。
事前に身につけているべき知識や技術はない。