本講義は、物理化学第一、第二、第三で習得した内容を元に、さまざまな生命現象の背後にどのような物理化学が潜んでいるのかについて具体的に学ぶことで、生命の本質を理解することを目的とする。特に、タンパク質をはじめとする生体分子の物理化学、さらには、生物のエネルギー生産に関わる反応である代謝および光合成を熱力学と量子化学を利用して理解する力を養う。また、分子動態の基本となる、運動とエネルギー、光と電子の基本法則・原理を学ぶ。これにより、広く生命理工学の発展に向けた基礎が身に付き、科学技術応用の基盤とする。本講義は、物理化学第一、第二、第三の履修を前提とする。
1)生命現象における水の役割を理解できる。
2)生命の機能分子であるタンパク質のフォールディング、物性、構造形成、相互作用、運動を理解できる。
3)細胞を形成する膜について理解できる。
4)生体内の反応のエネルギーを議論できる。
5)生体内の電子移動反応を説明できる。
6)光合成における光化学過程を説明できる。
タンパク質、立体構造形成、タンパク質間相互作用、モータータンパク質、膜タンパク質、熱力学、化学、代謝、光合成
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
講義を中心に進める。講義内容の理解度を確認するために演習を適宜行う。講義中に紹介した参考資料等を利用して、各回の復習を行い、理解を深める。
授業計画 | 課題 | |
---|---|---|
第1回 | イントロダクション:物理化学から見た生命科学 | 生命科学における物理化学の考え方の位置付けが説明できる |
第2回 | 生体分子と水 | 生命活動における水分子の特殊性・重要性について説明できる |
第3回 | タンパク質の立体構造形成 | タンパク質の立体構造形成(フォールディング)とタンパク質の機能の関係について説明できる |
第4回 | タンパク質の安定性 | タンパク質の熱安定性を物理化学で記述できる |
第5回 | タンパク質間相互作用 | タンパク質とタンパク質の間の相互作用の様式を記述し、その生理学的な意味を説明できる |
第6回 | モータータンパク質 | ATP加水分解のエネルギーを使って動くタンパク質の分子機構を説明できる |
第7回 | 脂質二重膜と膜タンパク質 | 生体膜における脂質とタンパク質(膜タンパク質)の役割を説明できる |
第8回 | 第1回〜第7回までの内容の発展を解説し、中間試験を実施する | 講義前半の内容を総合して説明できる。 |
第9回 | 熱力学・平衡論から眺めた代謝 | 代謝における平衡熱力学の説明 |
第10回 | 電子移動理論 | フランクコンドン原理とマーカス理論の説明 |
第11回 | タンパク質の電子移動反応の速度論 | 電子移動速度と再配向エネルギーの説明 |
第12回 | タンパク質電子移動の活性化エネルギー | 活性化エネルギーと再配向エネルギーの関係 |
第13回 | タンパク質の光化学とエネルギー | 光化学反応の量子力学的取扱いの説明 |
第14回 | 光合成における光励起分子の反応1 | 量子論と電子移動論に基づいた光合成反応の理解 |
第15回 | 光合成における光励起分子の反応2 | 光合成における光化学過程の光励起電子移動と光励起エネルギー移動の理解 |
未定
クーパー 生物物理化学
中間テストおよび期末テストを行い、基本的な事項に関する問い、本質的な理解を問う記述問題、定量的な理解を問う計算問題などにより評価する。
物理化学第一、第二、第三を履修していることが望ましい
田口英樹(taguchi[at]bio.titech.ac.jp, 045-924-5785)
朝倉則行(asakura.n.aa[at]m.titech.ac.jp・03-5734-3469)
メールで事前に予約することが望ましい。