細胞や組織の恒常性維持は、細胞内、細胞間、組織間における複雑なシグナリングネットワークによって厳密に調節されている。その機能的な破綻は、さまざま疾患の発症と進行を引き起こすことが知られている。
本講義では、生化学、分子生物学、細胞生物学、免疫学、生理学の基礎知識を確認するとともに、高次生命機能や病態生理学的過程について学びを深める。例えば、1)アレルギー疾患および体内時計制御が及ぼす影響、2)がん発症から悪性形質獲得の分子メカニズム、3)細胞間、臓器間の分子コミュニケーションと疾患との関係について学ぶ。
本講義を履修することによって次の能力を修得する。
1)生化学、分子生物学、細胞生物学、生理学の基礎知識(ホメオスタシス、代謝、シグナル伝達、ユビキチン化など)について説明できる。
2)基礎免疫学とアレルギー発症の仕組みを説明できる。
3)体内時計の仕組みと体内時計の免疫系への関わりについて説明できる。
4)がん発症と悪性化の基本的概念とがん医療への応用について説明できる。
5)がん転移、妊娠合併症などの疾患に関わる細胞間コミュニケーションの重要性について説明できる。
6)ミトコンドリアの機能維持におけるミトコンドリアダイナミクスやユビキチン化の重要性について説明できる。
細胞生物学、生理学、免疫学、アレルギー、体内時計(概日リズム)、がん(発がん、浸潤・転移、診断・治療)、疾患分子生物学、細胞間コミュニケーション、ユビキチン化、ミトコンドリア
✔ 専門力 | ✔ 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
授業は5名の担当教員によるオムニバス形式で、英語で実施する。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | アレルギー発症のメカニズム(折原) | 基本的な免疫学について学び、アレルギー発症の仕組みを説明できるようになる。 |
第2回 | 体内時計と免疫システム(折原) | 体内時計の仕組みについて説明できるようになり、そのシステムが免疫系に与える影響について学ぶ。 |
第3回 | ホメオスタシス(小倉) | ホメオスタシスについて説明ができるようになる。 |
第4回 | 代謝とその制御(小倉) | 代謝とその制御について説明ができるようになる。 |
第5回 | シグナル伝達(小倉) | シグナル伝達について説明ができるようになる。 |
第6回 | がん発症のメカニズム(越川) | がん発症の分子メカニズムについて説明できるようになる。 |
第7回 | 悪性化進展のメカニズム(越川) | がん細胞の悪性化進展制御の分子メカニズムについて説明できるようになる。 |
第8回 | がん診断と治療(越川) | 科学的根拠に基づくがん診断、治療について説明できるようになる。 |
第9回 | がん転移(臓器特異的転移)(星野) | がん転移機構について説明できるようになる。 |
第10回 | 発達障害と細胞間コミュニケーション(星野) | 発達障害に細胞間コミュニケーションが関わる可能性について説明できるようになる。 |
第11回 | 妊娠と細胞間コミュニケーション(星野) | 妊娠および妊娠合併症に関わる母子連関機構について説明できるようになる。 |
第12回 | 細胞生物学:ユビキチン化(1)(中村) | ユビキチン化について説明できるようになり、ウイルスの免疫回避における役割について学ぶ。 |
第13回 | 細胞生物学:ミトコンドリアダイナミクス(中村) | ミトコンドリアダイナミクスの分子メカニズムについて説明できるようになり、ミトコンドリア機能維持に果たす役割について学ぶ。 |
第14回 | 細胞生物学:ユビキチン化(2)(中村) | ミトコンドリアにおけるユビキチン化の機能について説明できるようになる。 |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
特になし。
講義資料は必要に応じて事前にOCW-iにより公開する。
【参考書】The Biology of Cancer (Garland Science)
上記到達目標を達成できたかかどうかを成績評価の基準とし、評価は、各担当者が出題する小テストやレポートの結果により行う。
履修条件は特に設けないが、生物化学第一、生物化学第二、分子生物学第一、分子生物学第二を履修し、基本的な生化学、分子生物学とゲノム生物学の知識を習得していることが望ましい。