本講義では、生物活性化合物や医薬等の入手において必要な有機化学の実践的な知識および考え方を体系的に解説する。すなわち個々の反応、合成、および生成物の利用について、生物活性化合物や医薬等に汎出するヘテロ環化合物や光学活性化合物の取り扱いを含めて説明する。さらに、天然由来の有機化合物の多様性、それらを有機化学で人工的に合成・修飾する手法、そして誘導された医薬について紹介する。すなわち、有機化学による反応・合成はもとより、構造活性相関や分子認識に基づく分子修飾と、こうして得られた医薬等が製薬工業化される過程まで講義する。
有機化学第一(アルカン、ハロアルカン)〜同第四(カルボニル化合物、アミン)で修得した有機化合物の性質、分析、反応、および合成等を必要に応じて復習しつつ、生物活性化合物や医薬等の入手といったより具体的な事例により、高いレベルでの有機化学の応用・利用を活きた知識や考え方として定着させる。さらに本講義では、天然の生物活性化合物の利用や、それから出発して人工の薬剤の設計を行う際に必要な構造活性相関や分子認識による受容体とのマッチングにおける有機化学の重要性についても修得する。すなわち、有機化学の実践的な運用能力を修得するとともに、生命理工学分野において有機化学がカバーする幅広い領域について、製薬工業化も含めて理解する。
本講義を履修することにより次の能力を修得する。
1. 有機化学が、医薬開発において反応・合成のみならず生物活性化合物をリード化合物とする取り扱いや構造活性相関等に必須であることを理解し説明できる。
2. 医薬品に汎出するヘテロ環化合物の性質、反応、合成について理解し説明できる。
3. 光学活性化合物の性質、反応、および合成法について理解し説明できる。
4. 天然有機化合物や生体分子の構造の多様性と相応する合成法について理解し説明できる。
5. 天然有機化合物や生体分子を分子修飾した医薬について、その過程を理解し説明できる。
6. 医薬等の工業生産への道筋について理解し説明できる。
医薬品の命名、リード化合物、分子修飾、構造活性相関、ランダムスクリーニング、受容体、薬物代謝、ヘテロ環、生体分子、天然有機化合物、薬物動態、光学活性化合物、分子認識
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
授業・到達度テストは対面で実施する。ただし、いずれも今後のコロナ感染状況によって変更が有りうるので注意すること。講義は、プリント等の教材を利用して行うが、下記に示す教科書を使用する。毎回の授業の最後の10分間で小演習を行い、その解答や注意点は次回の授業の冒頭で解説する。
※15回目の8/1(火)は授業外の期末試験・補講期間だが、3回目の到達度テスト(秦担当)を実施する。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | ヘテロ環化合物と医薬品 | 生物活性化合物や医薬によく見られるヘテロ環化合物の性質を理解し説明できる。 |
第2回 | 脂肪族ヘテロ環化合物と医薬品 | 生物活性化合物や医薬によく見られる脂肪族ヘテロ環化合物の性質・反応・合成を理解し説明できる。 |
第3回 | 芳香族ヘテロ環化合物と医薬品 | 生物活性化合物や医薬によく見られる芳香族ヘテロ環化合物の性質・反応・合成を理解し説明できる。 |
第4回 | ヘテロ環化合物と生理活性 | 自然界に存在するヘテロ環化合物の生理活性を理解し説明できる。 |
第5回 | 到達度テスト(1) | |
第6回 | 創薬の歴史・現状・流れ | 医薬品創製の歴史・現状、医薬品開発の流れについて理解し、説明できる。 |
第7回 | 最近の創薬研究 | ゲノム創薬、バイオ医薬品をはじめとする最近の創薬研究の動向について理解し説明できる。 |
第8回 | 標的となる生体分子 | 医薬品の標的となる生体分子の機能、薬物との相互作用、作用発現の様式について理解し説明できる。 |
第9回 | 代表的な医薬品① | 代表的な医薬品の作用機序について理解し、説明できる。 |
第10回 | 到達度テスト(2) | |
第11回 | 医薬品開発の基礎 | 医薬品開発において必要な医薬品の定義、知的財産、後発品、薬害、規範、生物統計、研究開発の流れついて理解し説明できる。 |
第12回 | 医薬品の構造 | 医薬品が薬理作用を示すための構造、生物学的等価性、化学的パラメーターについて理解し説明できる。 |
第13回 | 薬物動態・薬物送達システム | 医薬品開発において重要な薬物動態を考慮した医薬品の分子設計や薬物送達システムを理解し説明できる。 |
第14回 | 代表的な医薬品② | 代表的な医薬品の作用機序について理解し、説明できる。 |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
第1~5回:ボルハルト・ショア― 『現代有機化学(下)第8版』 化学同人 25章
第6〜15回:『創薬科学・医薬化学(第2版)』化学同人
必要がある場合は、講義中に紹介します。
毎回の授業の最後に行う小演習の取り組み(30%)と期末テストの成績(70%)の合算で評価する。
特に有りません。
神谷真子:kamiya.m.ad[at]m.titech.ac.jp、045-924-5786;秦 猛志:thata[at]bio.titech.ac.jp、045-924-5838;藤枝俊宣:t_fujie[at]bio.titech.ac.jp、045-924-5712
日時をメールで事前に予約して下さい。神谷真子:B1棟9階901号室;秦 猛志:B2棟11階1127号室;藤枝俊宣:B2棟10階1022室