光合成に関する基礎知識を包括的に理解すること、またそれに関連した光化学・光生物学的基礎知識の修得を目標とする。植物や藻類をはじめとした光合成生物の環境適応機構を理解し、その生物学的意義・来る低炭素社会実現に向けた技術開発の方向性を考察する。光合成がどのように成立し、それが過去の地球に起こった環境変動に対してどのような役割を果たしたかについて学ぶ。
具体的には、生体エネルギー変換の基礎、光合成生物の進化過程、光合成を行う細胞の構造と特徴、光合成の分子機構、光合成の調節、に関して概説する。この講義を通じて、光合成が全ての生物の活動を支える重要な反応であり続けてきたことを実感してほしい。
地球上で最大のエネルギー変換反応である光合成に関する次の能力を習得する
1)光合成が生命活動の基礎を支えていることを説明できる
2)光合成の分子機構が説明できる
3)光合成の環境適応機構を説明できる
4)光合成の成り立ちに関して考察できる
5)人工光合成に関してコメントできる
光合成科学、光科学、光工学、分光学、生物物理学、電子伝達、タンパク質複合体、生体エネルギー変換、人工光合成
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
授業は5名の担当教員によるオムニバス形式による講義形式で行う。東京大学光合成教育研究会 編「光合成の科学」(東京大学出版会)、を教科書とし、各講義で主に取り上げる章をそれぞれの授業計画に記した。各講義では、独自に追加した資料を各教員が作成・配布する予定。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 光合成とは(増田)(1、2章) | 生体エネルギー変換の基礎 |
第2回 | 光合成を行う細胞の構造(田中)(3、4章) | 植物細胞・葉緑体の特徴 |
第3回 | 光合成を行う色素分子の特徴(増田)(5章) | クロロフィル・カロテノイド分子の物理化学的特徴 |
第4回 | 光合成明反応1(久堀)(6章) | 水の分解と電子伝達に関わる光合成タンパク質の機能 |
第5回 | 光合成明反応2(久堀)(6章) | 二酸化炭素同化系に還元力を供給する光合成電子伝達系の理解 |
第6回 | ATP合成(久堀)(6、8章) | 光に依存したATP合成とその制御 |
第7回 | 光合成同化反応(田中)(7、8章) | 光合成同化反応のメカニズム |
第8回 | 窒素と光合成(田中)(7、8章) | 窒素代謝に関連した制御機構 |
第9回 | 光合成の調節1 遺伝子発現を介した光合成の調節(田中)(9章) | 遺伝子発現を介した光合成の環境適応, 葉緑体構築・分化 |
第10回 | 光合成の調節2 葉緑体タンパク質・脂質・色素の制御(下嶋)->10章 | 葉緑体タンパク質・脂質・色素の合成とその制御 |
第11回 | 光合成の調節3(増田)植物の光に応答した明反応の調節 ->11章 | 非光化学的消光・ステート遷移のメカニズムの理解 |
第12回 | 光合成の進化(増田)(12章) | 細菌型光合成の特徴と進化 |
第13回 | バイオエネルギー・人工光合成(下嶋)(13章) | バイネルギー・人工光合成の原理と応用 |
第14回 | 低炭素社会実現に向けた植物改変技術(刑部)13章 | 光合成強化・バイオマス増産を目指した植物ゲノム改変技術 |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
東京大学光合成教育研究会 編「光合成の科学」東京大学出版会
[参考書]佐藤公行 編集「光合成」朝倉書店
光合成に関する基礎知識および応用研究について,その理解度を、期末テスト(対面)の結果で評価。講義中小テストを科す場合はそれも評価に含める。
なし