本講義では、遺伝情報を親から子へと伝えるしくみの基本原理を習熟したのちに、遺伝子機能やゲノム配列の解析法、細胞生物学研究において遺伝学が果たしてきた役割などを理解する。
生命理工学分野の基礎研究のみならず、工学(有用な生体分子や有機化合物の生産など)、医学•薬学(疾患発症の分子機構の解明、創薬など)、および農学(農作物の品質改良など)の応用研究においても、今や遺伝子の機能を利用した研究•開発が不可欠な時代となっている。本講義は、遺伝学が生命原理の解明や科学技術の発展のために果たしてきた重要な役割や、社会とのつながりを理解することをねらいとする。
本講義を履修することによって次の能力を修得する。
1) 分子レベルの遺伝学・ゲノム科学の基礎について説明できる。
2) 真核・原核両生物の細胞運動・細胞骨格の分子機構と、その理解に遺伝学が果たしてきた役割を説明できる。
3) 酵母とヒト細胞における細胞周期制御の分子機構と、その理解に遺伝学が果たしてきた役割を説明できる。
メンデル遺伝、ゲノム、細胞運動、細胞周期
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
必要に応じて各回の講義冒頭の10分で過去の講義内容を振り返り、今回の講義の要点を示す。各回の講義最後の15分に、講義内容の理解を確認するための小テストを課す場合がある。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | メンデル遺伝と非メンデル遺伝 | メンデル遺伝と非メンデル遺伝の法則を説明できる。 |
第2回 | 遺伝の染色体説・組換えと遺伝子地図作成 | 染色体の遺伝様式および遺伝におけるその役割を説明できる。 |
第3回 | 順遺伝学(表現型から遺伝子型へ) | 順遺伝学の研究方法を、その歴史的経緯を含めて説明できる。 |
第4回 | 転移因子と宿主ゲノムの多様性 | 転移因子が宿主ゲノムの成り立ちに及ぼす影響を説明できる。 |
第5回 | ゲノム学(Genomics)の過去と現在 | ゲノム学の概要について説明できる。 |
第6回 | ゲノム配列解析とその応用 | ゲノム配列解読のためにこれまで開発された様々な技術の利点と欠点を説明できる。。 |
第7回 | 逆遺伝学(遺伝子型から表現型へ) | 逆遺伝学による研究アプローチを思考することができる。 |
第8回 | システム生物学入門 | 1システムとして生命系を理解するための視点と方法の基礎を説明できる。 |
第9回 | 細胞運動・細胞骨格の遺伝学1(アクチン系) | アクチン繊維の関与する細胞運動の分子機構を説明できる。 |
第10回 | 細胞運動・細胞骨格の遺伝学2(微小管系) | 微小管の関与する細胞運動の分子機構を説明できる。 |
第11回 | 細胞運動・細胞骨格の遺伝学3(中間系フィラメント、古典遺伝学と細胞運動) | 中間径フィラメントの役割と、細胞運動研究の古典遺伝学的手法を説明できる。 |
第12回 | 細胞周期の遺伝学1(酵母) | 出芽酵母と分裂酵母をもちいた細胞周期解析の基本的なストラテジーとその結果を説明できる。 |
第13回 | 細胞周期の遺伝学2(ヒトなどの生物) | 酵母でみつかった細胞周期制御の原理がどうヒトなどの細胞周期の理解に適用されたかを説明できる。 |
第14回 | 細胞周期の制御機構 | 細胞周期の制御の真核生物で共通の点と生物によって大きく異なる点を説明できる。 |
第15回 | 生物時計、細胞の寿命と生物の寿命 | 生物時計や細胞の寿命と生物の寿命の分子的制御機構を説明できる。 |
特に指定しない。
参考書:ハートウェル遺伝学(メディカル・サイエンス・インターナショナル)、細胞の分子生物学(Alberts et al.)(ニュートン・プレス)、Molecular Cell Biology(Lodish et al.) (W H Freeman & Co)。必要な資料を毎回プリントとして配布する。
上記到達目標を達成できたかかどうかを成績評価の基準とし、期末試験により評価する。
生物化学第一・生物化学第二・分子生物学第一・分子生物学第二を履修していることが望ましい。