生命理工学分野は、物理・化学・生物・情報科学などからなる融合分野である。近年のライフサイエンス、バイオテクノロジー分野の発展に伴い、生命倫理上の問題や、遺伝子組換え技術等に係る安全性の問題等に適切に対応するための関連法規が整備されている。本講義は、研究室配属前の学生を対象に、生命理工学分野に係る関連法規、生命倫理について解説するものである。
講義では、最初にライフサイエンス研究をとりまく環境や問題について外観した後、化学実験、アイソトープ実験、遺伝子組換え実験、動物実験、再生医療研究、生命倫理、ヒトを対象とする実験について、それぞれ関連する法規、生命倫理について、実例を交えながら、研究を開始する前に必要な知識、生命倫理観を醸成する。最後に、健全な科学の発展のために、科学者が身につけておくべき心得について学ぶ。
本講義を履修することによって、次の能力を修得する。
1)大学での研究活動に伴う危険を把握できる。
2)環境・安全管理で最も重要な法規を学び、適正に実験をおこなうための基本を修得する。
3)放射線に関する法規を学び、放射性物質の取扱い、環境への影響を理解する。
4)生物の多様性の保全の必要性と外来生物の問題を理解する。
5)病原性微生物の取扱いの国際的な枠組みを学び、感染リスク、病原性微生物の取扱いの基本を修得する。
6)遺伝子組換え実験の国際的な枠組みを理解し、適正な遺伝子組換え実験の基本を修得する。
7)動物実験をとりまく環境と法規制を理解し、動物実験の国際的基本原則を修得する。
8)ヒトを対象とした研究についての法規制を学び、高い生命倫理観を養う。
9)研究室配属前に研究者としての基本的な心得を学ぶ。
環境安全、放射線、生物多様性、病原体、バイオセイフティー、遺伝子組換え実験、カルタヘナ法、動物実験、再生医療、疫学、生命倫理、研究者倫理
✔ 専門力 | ✔ 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
各分野の専門家によるオムニバス形式で講義をおこなう。各講義内容の理解度を把握するために、講義の最後10〜15分で学習した内容に関する小テスト、演習を課す。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 生命倫理概論 | 本講義の目的と概要を理解する。 |
第2回 | 環境安全法規1(消防法、化管法) | 化学実験の危険性を理解し、消防法、化管法について説明できる。 |
第3回 | 環境完全法規2(高圧ガス、労安法など) | 高圧ガス、労安法について説明できる。 |
第4回 | 実験系廃棄物の取扱いと環境問題 | 実験系廃棄物により環境汚染問題と廃棄物の取扱いについて説明できる。 |
第5回 | アイソトープ実験関連法規(放射線障害防止法) | アイソトープ実験の基礎を理解するとともに、放射線障害防止法について説明できる。 |
第6回 | アイソトープ実験関連法規(原子力基本法、原子炉規制法) | 原子力基本法、原子炉規制法について説明できる。 |
第7回 | 生物多様性基本法と外来生物法 | 生物多様性基本法と外来生物法について説明できる。 |
第8回 | 病原体等のリスクとバイオセイフティ(WHO指針と安全管理) | 病原体等のリスクとバイオセイフティレベルについて説明できる。 |
第9回 | 遺伝子組換え実験関連法規1(カルタヘナ法) | 遺伝子組換え生物等の使用に関する定義とカルタヘナ法について説明できる。 |
第10回 | 遺伝子組換え実験関連法規2(遺伝子組換え実験の基礎) | 遺伝子組換え実験の危険度を理解し、遺伝子組換え実験の進め方について説明できる。 |
第11回 | 動物実験関連法規1(動物愛護法と関連法規) | 動物愛護法と動物実験の3原則について説明できる。 |
第12回 | 動物実験関連法規2(動物実験と名古屋議定書) | 名古屋議定書について説明できる。 |
第13回 | 再生医療研究と生命倫理(ヒトES細胞研究と特定胚研究) | 再生医療研究が関わる生命倫理について説明できる。 |
第14回 | ヒトを対象とした研究(疫学、個人情報の取扱い) | ヒトを対象とした研究に関する生命倫理について説明できる。 |
第15回 | 研究者倫理(科学研究者の心得) | 社会における科学研究者の責務を理解する。 |
特になし。
「科学の健全な発展のために」日本学術振興会(丸善出版)
講義開始時に資料を配布し、Power-pointを用いた解説をおこなう。講義資料は事前にOCWに開示するので、予習・復習に用いること。
講義ごとの演習および確認テスト(100%)
研究室配属前に受講(もしくは研究室配属直後に受講)