本講義では,遺伝子工学に用いる核酸関連酵素(制限酵素,DNAリガーゼ,DNAポリメラーゼなど),クローニングベクター(プラスミドベクター,ファージベクターなど),宿主と遺伝子導入の方法(形質転換,形質導入),遺伝子クローニングの方法(ゲノムクローニング,cDNAクローニング,PCR,化学合成など),遺伝子の解析技術(ハイブリダイゼーション解析,ブロッティング解析,DNA塩基配列決定法など),遺伝子の発現と機能解析(遺伝子発現の効率化,ファージディスプレイ,転写開始点解析,RNAiなど)といった,遺伝子工学の基盤技術について述べる。また,遺伝子工学の応用技術(DNA鑑定,遺伝子診断・治療,メタゲノム,遺伝子組換え作物,クローン動物,幹細胞と再生医療など)について解説する。さらに,遺伝子工学の倫理的・社会的側面(生命倫理,バイオハザード,カルタヘナ法など)について言及すると共に,学生に対して問題提起する。
本講義のねらいは3つある。まず,実際に研究を行う際に必要となる遺伝子工学の基礎知識を習得させる。また,遺伝子工学の応用技術を紹介し,最先端技術の息吹に触れさせると共に,遺伝子工学技術の人類への貢献を実感させる。さらに,遺伝子工学技術の倫理的・社会的波及を理解させることで,遺伝子工学技術を社会に還元するために必要な優れた見識を涵養する。
本講義を履修することによって次の能力を修得する。
(1)制限酵素,ベクター,宿主,遺伝子クローニング,DNA塩基配列決定法など,実際に研究を行う際に必要となる遺伝子工学の基盤技術を説明できる。
(2)遺伝子診断・治療,遺伝子組換え作物,クローン動物,幹細胞など,遺伝子工学の応用技術を説明できる。
(3)カルタヘナ法の精神を理解し,倫理的・社会的側面から見た遺伝子工学技術の今後の望ましい方向性について自ら考えることができる。
制限酵素,クローニングベクター,宿主,遺伝子クローニング,DNA塩基配列決定法,遺伝子診断・治療,遺伝子組換え作物,クローン動物,幹細胞,カルタヘナ法
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
学生には授業前に教科書の対応部分を読んでおくことを求める。パワーポイント,板書,参考資料(ハンドアウト)等を活用した授業を行う。必要に応じて,授業中に小テスト・演習を行う。また,レポートを課すことがある。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 遺伝子工学に用いる核酸関連酵素(1):制限酵素,DNAリガーゼ | 制限酵素の反応と分類,DNAリガーゼの反応を説明できる。 |
第2回 | 遺伝子工学に用いる核酸関連酵素(2):DNAポリメラーゼ,ほか | DNAポリメラーゼ,その他の核酸関連酵素の反応を説明できる。 |
第3回 | クローニングベクター(1):プラスミドベクターとその利用 | プラスミドベクターの構成と利用法を説明できる。 |
第4回 | クローニングベクター(2):ファージベクターとその利用 | ファージの生活環,ファージベクターの構成と利用法を説明できる。 |
第5回 | 宿主と遺伝子導入の方法:大腸菌の遺伝子型,形質転換,形質導入 | 大腸菌の遺伝子型,形質転換,形質導入を説明できる。 |
第6回 | 遺伝子クローニングの方法(1):ゲノムクローニング,cDNAクローニングとその応用 | ゲノムクローニング,cDNAクローニングとその応用を説明できる。 |
第7回 | 遺伝子クローニングの方法(2):PCR,DNAの化学合成,産物のクローニング | PCR,DNAの化学合成,産物のクローニングを説明できる。 |
第8回 | 遺伝子の解析技術(1):各種ハイブリダイゼーション解析(濃色効果,プローブ調製,コロニーおよびプラークハイブリダイゼーション解析) | 各種ハイブリダイゼーション解析を説明できる。 |
第9回 | 遺伝子の解析技術(2):各種ブロッティング解析(ブロッティング技術,サザン解析,ノーザン解析,ウェスタン解析) | 各種ブロッティング解析を説明できる。 |
第10回 | 遺伝子の解析技術(3):DNA塩基配列決定法(マキサム&ギルバート法,サンガー法,蛍光式および次世代DNAシーケンサー) | DNA塩基配列決定法を説明できる。 |
第11回 | 遺伝子の発現と機能解析(1):遺伝子発現の効率化,融合発現,ファージディスプレイ | 遺伝子発現の効率化,融合発現,ファージディスプレイを説明できる。 |
第12回 | 遺伝子の発現と機能解析(2):転写開始点解析,DNA結合配列解析,RNA干渉 | 転写開始点解析,DNA結合配列解析,RNA干渉を説明できる。 |
第13回 | 遺伝子工学の応用技術(1):DNA鑑定,遺伝子診断・治療,メタゲノム | DNA鑑定,遺伝子診断・治療,メタゲノムを説明できる。 |
第14回 | 遺伝子工学の応用技術(2):遺伝子組換え作物,クローン動物,幹細胞と再生医療,ほか | 遺伝子組換え作物,クローン動物,幹細胞と再生医療を説明できる。 |
第15回 | 遺伝子工学の倫理的・社会的側面:生命倫理,バイオハザード,カルタヘナ法,ほか | 遺伝子工学の倫理的・社会的側面を認識できる。 |
野島 博 『遺伝子工学 ー基礎から応用までー』 東京化学同人,ISBN 978-4-8079-0804-2
必要に応じ,授業の際に参考資料(ハンドアウト)を配付する。
遺伝子工学の基礎と応用,さらには倫理的・社会的側面に関する理解度を判定する。
期末試験で成績を評価する。必要に応じて,授業中の小テスト・演習・レポートの結果を加味することがある(配点20%以下)。
生物化学第一(LST.A203),生物化学第二(LST.A218),分子生物学第一(LST.A208),分子生物学第二(LST.A213)を履修していること,または同等の知識があること。
中村 聡 snakamur[at]bio.titech.ac.jp 小畠英理 ekobatak[at]bio.titech.ac.jp
三重正和 mie.m.aa[at]m.titech.ac.jp 木賀大介 kiga.d.aa[at]m.titech.ac.jp
中村 聡,小畠英理,三重正和,木賀大介:電子メールで事前予約すること。