並行処理を形式的に記述するための形式的体系としてロビン・ミルナーにより提唱されたCCSについて学ぶ。特に、CCSのもとで、強模倣性、強双模倣性などの並行計算プロセスの等価性や比較を行うための概念を中心に習得する。さらに、構造的合同性、強等価性、観察等価性など概念を学ぶ。そして、並行計算システムをCCSで記述する方法を学ぶ。さらに、名前の受渡しが可能となるようにCCSを拡張した計算体系であるπ計算について学ぶ。π計算によるデータや関数やラムダ計算などの計算機構の表現方法を学ぶ他、π計算における強双模倣性、強等価性、合同性、観察等価性などの諸概念について学ぶ。
情報処理及び情報通信ネットワークにおける基本的な処理機構である並行処理を授業のテーマとする。並行処理を形式的に記述するための概念と形式的に記述するための手法を習得する。授業で習得した概念と手法を用いて、情報システムや情報通信ネットワークにおける並行処理を形式的に記述できるようになり、形式的に記述された並行システムを、デッドロックなどの並行性に関連する性質について推論し検証できるようになることを授業の到達目標とする。
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | はじめに 並行システムとその形式化 | 授業中に指定する。 |
第2回 | オートマトンと、状態遷移による並行システムの形式化 | |
第3回 | 逐次プロセスと強模倣と強双模倣 | |
第4回 | CCSの並行プロセスと構造的合同・反応規則 | |
第5回 | CCSにおけるラベル付き遷移と強等価性 | |
第6回 | CCSにおける観測等価性 | |
第7回 | CCSにおける並行システムの記述例 | |
第8回 | π計算の構文と操作的意味論(反応規則) | |
第9回 | π計算による応用事例 | |
第10回 | π計算による逐次的計算機構の表現 | |
第11回 | コミットメント規則と強双模倣 | |
第12回 | π計算における観測等価性 | |
第13回 | π計算における並行システムの記述例 | |
第14回 | 並行計算のためのその他の計算体系 | |
第15回 | まとめ |
Robin Milner著「Communicating and mobile systems: the π-calculus」Cambridge University Press
David Sangiorgi・David Walker著「The Pi-Calculus: A Theory of Mobile Processes」 Cambridge University Press
レポートと期末試験により評価する。レポートにより、教授内容を理解しているかどうかを確認し、期末試験により、教授内容の理解の深度について評価する。レポートの評価結果と期末試験の評価結果の両方の結果から総合的に判断する。評価の比率は、概ね、レポートと期末試験は6対4とする。
オートマトンの理論やλ計算についての基本的知識が必要です。