一意化定理により,リーマン面は球面幾何かユークリッド幾何あるいは双曲的幾何に属すること,および最後の場合が一番一般的であることが知られている.本講義は,双曲幾何の基本とそれがいかに曲面に関係しているかを紹介する.とくに,上半平面と実メビウス変換群を導入し,離散群と曲面との関係を解析し,その考えがいかに一般化できるかを論じる.
受講生は双曲幾何と離散群について修得する.さらに,講義で議論される考え方は数学のいろいろな分野から来ており,受講生はそれらの話題が関係している手法を修得する.
双曲幾何,離散群,リーマン面,幾何構造
✔ 専門力 | ✔ 教養力 | ✔ コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
板書による講義形式で行う.受講生が講義前に読んでおくべき資料は事前に提供する.また,宿題を課し,採点する.
授業計画 | 課題 | |
---|---|---|
第1回 | 講義概要と必要な背景について説明 | 概要と背景を理解する. |
第2回 | 上半平面上へのメビウス変換の作用 | 講義内容を理解する. |
第3回 | メビウス変換の分類 | 講義内容を理解する. |
第4回 | 上半平面における長さ,距離,面積 | 講義内容を理解する. |
第5回 | メビウス変換の双曲幾何 | 講義内容を理解する. |
第6回 | 離散群,不連続性,曲面 | 講義内容を理解する. |
第7回 | ユールゲンセンの不等式と一様離散性 | 講義内容を理解する. |
第8回 | 基本多角形 | 講義内容を理解する. |
第9回 | 算術性 | 講義内容を理解する. |
第10回 | 双曲平面の他のモデル | 講義内容を理解する. |
第11回 | 線形代数の視点からの双曲幾何 | 講義内容を理解する. |
第12回 | 四元数体,八元数環,クリフォード代数 | 講義内容を理解する. |
第13回 | 四元数体とクリフォード代数上のメビウス変換 | 講義内容を理解する. |
第14回 | n次元双曲空間の他のモデル | 講義内容を理解する. |
第15回 | 他の双曲空間とさらなる一般化 | 講義内容を理解する. |
講義内容のほとんどは参考書に挙げた Anderson の本に含まれている.また,6回目と9回目の講義内容は参考書欄の Beadon または Katok による本,11回目と13回目の講義内容は Parker による本に含まれる.
つぎの四つを挙げる.
1. James W Anderson, Hyperbolic Geometry (second edition), Springer 2005.
2. Alan F Beardon, The Geometry of Discrete Groups, Springer 1983.
3. Svetlana Katok, Fuchsian Groups, Chicago UP 1992.
4. John R Parker, Hyperbolic Spaces}, Jyvaskyla Lectures in Mathematics 2, 2008. Available from http://www.maths.dur.ac.uk/~dma0jrp/
講義内容に関連したレポートによる.
複素解析,線形代数,群論の基礎に関する講義を修得していることが望ましい.また英語講義であり,英語を聞くこと・読むこと・書くことに前向きであることも望ましい.