この科目は講義と演習からなる。講義の部分では、数理最適化モデルの基礎となっている線形計画問題について、代表的な解法であるシンプレックス法および双対定理などの理論面を扱う。非線形最適化では、最適解の満たす最適性条件の理論的性質についてふれた後、最急降下法や内点法などの計算手法を扱う。演習の部分では、シンプレックス法を実際に線形計画問題に適用し、その手順を確認する。また、講義内容の証明の一部などを行うことで、理論面の理解を深める。
数理最適化は、「特定の条件を満たす中から、最適な解を選び出す」という最適化に数学的なアプローチを行う学問であり、理学・工学の諸問題と密接に関係しているだけでなく、実社会に幅広く用いられている。例えば、必要なエネルギーを確保する食事メニューの中から、最小カロリーとなっているメニューを選び出す、などのようなダイエット問題を数学でどのように解くか、というようなことが考えられる。実社会の最適化問題をどのような数学的性質を使って性質をどのような手順で解いていくのか、理論面と計算面の2つを楽しめる科目である。
この科目によって,以下の内容を修得する。
(1) シンプレックス法による線形計画問題の求解
(2) 双対理論など線形計画問題の理論的性質を理解して,求解に用いることができる
(3) 非線形最適化における最適性条件と最適解の関係性を理解できる
(4) 最急降下法や内点法など,非線形最適化の計算手法の枠組みと特徴を説明できる
線形計画問題,シンプレックス法,双対理論,感度分析,最短路問題,最大流問題,凸関数,非線形最適化問題の最適性条件,Karush-Kuhn-Tucker 条件,最急降下法,Newton 法,逐次2次計画法,内点法
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
講義では,計算手法や理論的性質などの解説を主に行います。演習では,計算手法を実際に適用して数理最適化問題の求解や非線形最適化理論の証明に関する演習問題に取り組んでもらいます。なお,演習は基本的に毎回レポートを提出してもらいます。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 数理最適化の導入,線形計画問題 | 線形計画問題の基準形による表記 |
第2回 | シンプレックス法 | 線形計画問題へのシンプレックス法の計算 |
第3回 | 演習:線形計画問題とシンプレックス法 | 線形計画問題およびシンプレックス法などに関する演習問題 |
第4回 | Bland のルール,2段階シンプレックス法 | Bland のルールを用いたシンプレックス法および2段階シンプレックス法の計算 |
第5回 | 双対問題,双対定理 | 双対問題への変形,弱双対定理を利用した線形計画問題の理論的性質の導出 |
第6回 | 演習:2段階シンプレックス法と双対定理 | 2段階シンプレックス法および双対定理などに関する演習問題 |
第7回 | 相補性定理,行列表記によるシンプレックス法 | 相補性定理による最適解の導出,行列表記によるシンプレックス法の計算 |
第8回 | 感度分析,最短路問題 | 感度分析の計算,ダイクストラ法の計算 |
第9回 | 演習:行列表記によるシンプレックス法と最短路問題 | 行列表記によるシンプレックス法と最短路問題などに関する演習問題 |
第10回 | 最大流問題 | フォード・ファルカーソン法よる最大流問題の計算 |
第11回 | 理解度確認演習と前半の復習 | シンプレックス法など計算手法の理解度確認 |
第12回 | 演習:最大流問題に関する演習問題 | 最大流問題などに関する演習問題 |
第13回 | 非線形最適化問題,凸集合,凸関数 | 非線形最適化問題への定式化,凸性の定義確認 |
第14回 | 最適性必要条件,最適性十分条件 | 最適性条件の理解 |
第15回 | 演習:凸性と最適性条件 | 凸性と最適性条件などに関する演習問題 |
第16回 | 最急降下法 | 最急降下法の収束の証明を導出 |
第17回 | Newton 法,Karush-Kuhn-Tucker 条件 | Newton 法の計算手順の説明,KKT 条件と最適解の関係性の導出 |
第18回 | 演習:最急降下法と Karush-Kuhn-Tucher 条件 | 最急降下法と Karush-Kuhn-Tucker 条件などに関する演習問題 |
第19回 | Lagrange 関数,双対理論 | Lagrange 関数と KKT 条件の関連性の導出 |
第20回 | 逐次2次計画法 | 逐次2次計画法の計算手順の説明 |
第21回 | 演習:双対理論と逐次2次計画法 | 双対理論と逐次2次計画法などに関する演習問題 |
第22回 | 内点法 | 内点法の計算手順の説明,逐次2次計画法との違いの説明 |
教科書は必須ではないが、次の項目にある参考書などを参考として講義内容としている。
・ 「数理最適化」, 久野誉人, 繁野麻衣子, 後藤順哉, オーム社, 2012
・ Linear and Nonlinear Optimization, Igor Griva, Stephen G. Nash, Ariela Sofer, SIAM,
2009
・ Linear Programming, Vasek Chvatal, Freeman, 1983
・ Linear Optimization, Glenn H. Hurlbert, Springer, 2010
・ Introductory Lectures on Convex Optimizaiton, Yurii Nesterov, Kluwer Academic Publishers, 2004
線形計画問題については,シンプレックス法を適用した求解や,双対理論,ネットワーク最適化などの理解度を評価します。
非線形最適化理論については,最急降下法などの計算手法および最適性条件などの理論面についての理解度を評価します。
配点は,第8回の理解度確認演習(35%),期末試験(35%),演習でのレポート状況(30%)
応用線形代数 (MCS.T203) を履修していること,または同等の知識があること。