[概要]本講義では、物質の基礎的性質や反応性を原子・分子レベルで理解し、高分子を含めた有用な物質の設計および変換に関する高度な化学技術システムおよび、その活用を修得した化学者を養成するため、応用化学分野の最前線で活躍する研究者が、基礎から応用までの研究成果を紹介する。
[ねらい]応用化学分野の最前線で活躍する研究者の基礎から応用までの研究に関する幅広い知識を修得することを目標とする。
本講義を履修することによって次の能力を修得する。
(1)物質の基礎的性質や反応性を原子・分子レベルで説明できる。(2)有用な物質の設計および変換に関する高度な化学技術システムを説明できる。(3)基礎から応用研究までの幅広い知識を説明できる。
基礎的性質、原子・分子、物質、化学技術、応用化学
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
対面とZoomによるハイブリッド型の講義形式で2名の講師がそれぞれ2日間の集中講義を行う。
前半:内山真伸講師 実験化学者のための実践的計算化学
後半:横澤勉講師 連鎖重合で進行する重縮合
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 1-1 「実験化学者のための実践的計算化学入門」 概要:実験化学者が量子化学計算を利活用するための「こつ」に焦点を絞り、解説する。「量子化学計算の種類」「化学計算によってわかること」「理論計算のコストと精度」「DFT 計算の長所と短所」「B3LYP 法の躍進と限界」「理論計算の使い方」「基底関数の選び方」などについて概説する。 1-2「理論計算と実験化学をどう組み合わせるか ーいくつかの研究例を参考にー」 概要:「実験と理論の融合による反応開発・機能創出研究の進め方」などについて当研究室での実例を紹介し、詳細に解説する。計算科学が得意とする『遷移状態解析』を基盤とした 「多成分連結反応、連続反応、触媒反応の理論解析」「生合成経路の理論解析」「理論計算と合成化学の融合による新反応開発」「理論と実験による近赤外利活用分子の創製」などについて詳述する。 1-3「未踏化学空間をいかに探索するか? ー出会い、偶然、執念、挑戦ー」 概要:化学は「ものづくり」を通して、常に生命科学・物質科学に新たな分子やツールを提供してきた。では、どのように未開拓領域を見出し、未来に向けた挑戦的課題に取り組めば良いか?これまでの化学は、特定の元素・結合・反応・構造をベースに発展してきたため、手つかずの領域(化学空間)がまだまだ拡がっていることに気付く。本講演では、未開の地を発見・開拓するための我々の研究/取り組みについて紹介したい。 2-1 「連鎖重合で進行する重縮合(ポリアミド・ポリエーテル)」 重縮合は逐次重合で進行するため分子量分布の狭いポリマーを分子量を制御して得るのは難しい。しかし、AB型モノマーが開始剤または高分子末端に反応した時に新たに生成した高分子末端の反応性が置換基効果の変化によって高くなる場合は連鎖重合が進行する。この重合によって芳香族ポリアミドやポリエーテルがリビング重合と同様に制御して得られることを講義する。 2-2「連鎖重合で進行する重縮合(π共役系高分子)」 芳香環を繋げる重縮合では遷移金属触媒のカップリング反応を用いている。この重合において芳香環上を配位子ながら移動する触媒を用いるとAB型モノマーの重合は連鎖重合となり、分子量分布が狭く、分子量の制御されたπ共役系高分子が得られる。この重合について講義する。 2-3「可逆的交換反応を利用したテレケリック縮合系高分子の選択的合成」 AA + BB 重縮合においてどちらかのモノマーを過剰に用いると過剰に用いたモノマーがポリマーの末端を封止してテレケリックポリマーが生成することはよく知られている。しかしながら多くの場合環状ポリマーが混入する。環状ポリマーを含まずにテレケリックポリマーを合成する2つの手法を開発した。1つは通常の重縮合で得られる環状ポリマーと低分子化合物との主鎖官能基交換反応、もう1つは可逆的重縮合でどちらかのモノマーを過剰に用いる方法である。これらの最近の成果について講演する。 | (1)量子化学計算の種類と特徴について説明できる (2)計算科学を活用した反応化学の動向について説明できる (3)重縮合において分子量を制御する方法を説明できる (4)テレケリック縮合系高分子の合成法の概略を説明できる |
指定なし
なし
全授業出席を原則とし、毎回の授業で出席確認をする。成績評価はレポートにより行う。
履修の条件は設けない。
講義実施予定日
第一回:10/21(金):10:45-17:20
第二回:10/24(月):10:45-17:20