はじめに原子炉の原理の理解ために必要な中性子と原子核の核反応及び核分裂連鎖反応について解説し、その定量的解析のもとになる中性子輸送方程式について解説します。さらに、一般に広く用いられている拡散近似により得られる中性子拡散方程式による原子炉内の中性子輸送の解析方法と重要な現象について解説します。
この科目を受講した後は以下ができるようになり、原子炉解析で必要な基礎的な中性子輸送現象が解析できるようになります。
1)中性子輸送理論と中性子拡散理論に基づき原子炉の原理が説明できる。
2)原子炉内の基本的な中性子輸送現象が解析できる。
3)原子炉内の基礎的かつ重要な現象について説明できる。
原子炉物理、中性子輸送、原子炉
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
毎回の講義の後、講義テーマに対応した課題で演習を実施します。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 原子核反応と核反応断面積 | 原子核反応の基礎と反応断面積の概念が説明できかつ基礎的な解析ができる。 |
第2回 | 中性子増倍率と臨界性 | 核分裂連鎖反応、中性子増倍、原子炉の臨界の概念がが説明できかつ基礎的な解析ができる。 |
第3回 | 中性子輸送方程式 | 中性子輸送理論の基礎と中性子輸送方程式の概念が説明できかつ基礎的な解析ができる。 |
第4回 | 非増倍体系での1群拡散理論 | 中性子拡散方程式の概念が説明でき、非増媒体系での解をもとめることができる。 |
第5回 | 原子炉の1群拡散理論 (1)平板原子炉 | 平板原子炉での拡散方程式を解くことができる。 |
第6回 | 原子炉の1群拡散理論 (2)一般の原子炉 | 一般の原子炉の基礎的な体系での拡散方程式を解くことができる。 |
第7回 | 多群拡散理論 | 多群拡散方程式の解の概念を説明することができ、2群方程式を解くことができる。 |
第8回 | 講義の復習 | 基礎的な中性子輸送理論の系統的説明 |
教科書はとくになし。毎回の講義資料をOCWにアップする。
John R. Lamarsh, “Introduction to Nuclear Reactor Theory”, Addison-Wesley Publishing Company, Inc. (1965).
(邦訳:ラマーシュ著、武田充司、仁科浩二郎訳、“原子炉の初等理論(上)(下)”、吉岡書店(1974))
James J. Duderstadt, Louis J. Hamilton, “Nuclear Reactor Analysis”, John Wiley & Sons, Inc. (1976).
(邦訳:J.J. ドゥデルスタット、L.J. ハミルトン著、成田正邦、藤田文行共訳、“原子炉の理論と解析(上)(下)”、現代工学社(1981))
George I. Bell, Samuel Glasstone, “Nuclear Reactor Theory”, Robert E. Krieger Publishing Co., Inc. (1970).
Samuel Glasstone, Alexander Sesonske, "Nuclear Reactor Engineering", Chapman & Hall, Inc. (1994).
小林啓祐著、“原子炉物理”、コロナ社(1996)
Weston M. Stacey, “Nuclear Reactor Physics”, WILEY-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA (2004).
岡嶋 成晃、 久語 輝彦 、森 貴正著、“原子力教科書 原子炉物理学”、オーム社(2012)
岡 芳明編著、“原子力教科書 原子炉設計”、オーム社(2012)
Raymond L. Murray and Keith E. Holbert, "Nuclear Energy: An Introduction to The Concepts, Systems and Application of Nuclear Processes Seventh Edition", Elsevier Ltd. (2013).
(邦訳:マレー、ホルバート著、矢野豊彦監訳、”マレー原子力学入門”、講談社(2015)
中性子輸送の基本原理・現象および解析手法の理解度を評価する。期末試験(50%)及び演習(50%)で成績を評価する。
ベクトル解析についての基礎知識があることが望ましい。
tobara[at]lane.iir.titech.ac.jp(小原教授)
メールで事前に予約すること。