講義の概要:運動量移動現象を解析するために必要なベクトル解析,テンソル解析に関する知見を学びながら流体の変形について応力テンソルと変形速度テンソルの意味とそれらの関係を理解します。また学部レベルではスカラー量として理解していた物理量の流束をベクトル,テンソルとして理解することにより3次元場の移動現象の基礎方程式である物理量収支式の導出について学びます。
講義のねらい:以上で学んだことをもとにしてさまざまな流れ場の速度分布,機械的エネルギー収支,流れ関数と速度ポテンシャル,境界層理論による2次元流れの解析,機械的操作の各種装置の性能評価,移動現象の数値解析法を理解することがこの講義のねらいです。。
化学装置による混合,分離を促進・制御したり装置を設計するためには装置内の流動場、ならびに流動と移動現象との関連を明確にしておく必要があります。本講義では学部授業で修得した単純な流動場の解析に関する基礎知識の上に実際の装置内の複雑な流動場についての深い知識を修得するとともに流動を伴う化学装置の性能を移動現象の観点から評価する方法を学ぶことを到達目標とします。
ベクトル解析,運動量移動論,流動,速度分布,流体輸送,流れ関数,速度ポテンシャル,境界層理論
✔ 専門力 | ✔ 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
講義に対応する教科書の内容を要約したスライドのコピーを事前にTokyo Tech.OCWiシステムにより配布した上でスライドに沿って講義を進める。毎回その日の授業に沿った内容の演習を授業の最後30-40分で実施する。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 移動現象論とは,運動量移動の基礎 | なし |
第2回 | 移動現象の基礎I:一般的な物理量収支式,連続の式 | 演習:様々な座標系における収支式の導出 |
第3回 | 移動現象の基礎II-1:熱収支,物質収支,応力テンソル | 演習:直角座標系の物理量分布を導出できるようになるための演習 |
第4回 | 移動現象の基礎II-2:運動方程式,速度分布の導出 | 演習:速度分布を導出できるようになるための演習 |
第5回 | 流れ関数と速度ポテンシャル | 演習:複素速度ポテンシャルによる解析 |
第6回 | 境界層理論I | 演習:速度境界層に関する問題 |
第7回 | 境界層理論II | 演習:温度境界層に関する問題 |
第8回 | レオロジー:流体の変形 | 演習:非ニュートン流体の基礎的な性質 |
第9回 | 境界層理論 | 演習:境界層理論に基づいて固体表面付近の移動現象を解析することができるようになるための演習 |
第10回 | 非ニュートン流体の流動 | 演習:非ニュートン流体の速度分布 |
第11回 | 乱流 | 演習:円管内乱流に関する問題 |
第12回 | 粒子の周りの流れ | 演習:流体中の単一粒子の挙動に関する問題 |
第13回 | 充填層内流れ | 演習:充填層内の圧力損失 |
第14回 | 機械的分離操作 | 演習:濾過における透過流束を計算できるようになるための演習 |
第15回 | 機械的混合 | 演習:攪拌槽のスケールアップ |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
OCW-iにより必要な資料を配布する。
小川浩平編集『流体移動解析』朝倉書店(2011)
R.B.Bird, W.E.Stewart, E.N.Lightfoot: "Transport Phenomena" Revised 2nd Edition, Wiley(2006)
C.J.Geankoplis: Transport Process and Separation Process Principles (INCLUDES UNIT OPERATIONS), Prentice Hall (2008)
吉川史郎著『ベーシック移動現象論』化学同人(2015)
小川浩平,黒田千秋,吉川史郎著『ケミカルエンジニアの流れ学』培風館(2002)
小川浩平,黒田千秋,吉川史郎著『化学工学のための数学』数理工学社(2007)
物理量の収支式の導出方法,速度分布の求め方,流体輸送におけるエネルギー収支の計算法,機械的操作に関する問題,移動現象の数値解析に関する理解度を評価する。期末試験(80%),演習・課題(20%)で成績を評価する。授業時間内に実施する演習の成績を総合評価に反映させるので,授業に出席すること。
学士課程レベルの数学,移動現象に関する基礎的な知識を有していること
なし