講義の概要は次の通りである。エネルギーは技術的側面だけではなく、社会、産業、経済、政策、様々な側面から理解する必要がある。本講義では、これら多様な側面をリスクの視点で各分野のトピックを解説することで、エネルギー関連業種に就職する学生の啓蒙を行う。技術志向の高い本学学生に鑑み、エネルギー技術のリスクから始め、産業のダイナミズム、国際情勢とマーケット、政策とリスクとその対処を、実例を織り交ぜて、関連各分野のエッセンスをコンパクトに紹介する。
講義のねらいは、出身と卒業後進路が多様な受講者に対し、基礎知識の前提を必要とせずに概念を理解し、講義において学習した概念を卒業後に思い出して、業務遂行の知識やツールボックスの基礎を与えることにある。エネルギーと社会、経済、政策との接点をリスクの視点で体系化を試みた本講義は、卒業後の多様な分野の実務に役立つよう構成している。多くの学生諸君に受講を勧める。
1 エネルギー技術のリスクガバナンス(村山武彦先生(環境理工))
エネルギー技術を社会実装する際には、技術とリスク、公衆需要や心理など、幅広なバックグラウンドを理解・動員する技術のリスクアセスメントやリスクガバナンスが必要である。再生可能エネルギーや原子力などの技術導入の実例を通じて理解する。
2 技術のイノベーションとマネジメント(藤村修三先生(イノベ))
エネルギー関連ハイテク基幹産業(半導体・燃料電池・太陽電池・有機EL・フラーレン&カーボン・ナノチューブ等)を題材として、イノベーションの理論(科学・技術・産業の関係)、イノベーション・システムと技術者の社会的意識の関係を解説し、エネルギー関連産業の研究開発リスクと技術マネジメントを理解する。
3エネルギー産業組織論(後藤美香先生(価値))
エネルギー産業の構造や制度の概観、エネルギー企業の経営状況の分析を通じ、発送電分離などの自由化によってエネルギー産業がどう変わるのか、産業をとりまく環境の変化・リスクと政策的課題の実例を用いて説明し、エネルギー産業に対する経済学的な考え方について理解する。
4産業のダイナミズム:電機、自動車、ITなどを例に(泉田良輔先生(GFリサーチ代表))
日本を支えてきた電機産業の盛衰と、異業種融合戦の様相を呈する自動車産業(googleとトヨタ)やスマートグリッド(電力、ガス、IT、ディベロッパー)など、エネルギーに関連する産業のダイナミズムの分析事例を通じて、今後のエネルギー関連産業の潮流に触れる。
5国際エネルギー秩序と安全保障(小山堅先生(一般財団法人 エネルギー経済研究所 首席研究員))
石油・ガス、石炭の国際市場における価格の仕組みに始まり、価格や供給・国際貿易の安定と秩序維持のための国際エネルギー機関(IEA)などの枠組み、中国・インド・アセアン諸国のエネルギー需要増大や米国シェールガス、中東情勢など、今後の安全保障をとりまく情勢を理解する。
6エネルギーデリバティブ(前田章先生(東京大学))
エネルギーマーケットにおけるデリバティブ等の金融工学等の手法を理解するために、資産市場の基礎から解説し、価格決定とその変動リスク、その安定化について理解する。
7 エネルギー政策(芳川恒志先生(東京大学))
産業育成、市場安定化、資源確保など、我が国のエネルギーを取り巻くあらゆるリスクを、その政策手段(規制、行政指導、税制、補助金)、政策の形成過程などを、戦後から現在にかけて解説・評価し、今後の政策のあり方を理解する。
本講義を履修することによって、次の能力を修得する。
1)エネルギー経済・政策分野において、広く扱われる概念や理論を理解し、説明することができる。
2)様々な分野におけるエネルギー問題に対する課題設定と、それへの解決策に対し、講義内容の適用を行うことができる。
エネルギーのリスク、マネジメント、産業、安全保障、マーケット、政策
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
講義の最初10分程度、前回講義の振り返りを行った上で、その日の授業を行います。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 講義概要説明、エネルギー技術のリスクガバナンス | リスクアセスメントとガバナンスが説明できる。 |
第2回 | エネルギー技術のイノベーションとマネジメント | 研究開発リスクと技術マネジメントが説明できる。 |
第3回 | エネルギー産業組織論 | エネルギー産業の変化・リスクが説明できる。 |
第4回 | エネルギー産業のダイナミズム | エネルギー関連産業の潮流が説明できる。 |
第5回 | 国際エネルギー秩序と安全保障 | エネルギー安全保障の情勢が説明できる。 |
第6回 | エネルギーマーケットの経済とファイナンス | エネルギーマーケットとファイナンスの役割が説明できる。 |
第7回 | エネルギー政策 | 様々なリスクに対する政策的対応が説明できる。 |
指定なし
各回講義資料を配布。また各回講義において参考書が紹介される。
毎回の宿題(10点×7回)、最終レポート30点
なし
tokimatsu.k.ac[at]m.titech.ac.jp、045-924-5533(常時携帯へ転送、通話可能時に受信)
定まった曜日時間帯はないので、メール連絡すること。大岡山、すずかけ台、田町など随時面談可能。