本講義では、材料科学の基盤である統計力学について学びます。統計力学は原子や分子などの微視的な系の振る舞いが、集団として巨視的に観察された場合にどのような法則として映し出されるのかということをテーマとしています。高分子は一本鎖そのものが分子集合体ですので、その物性理解には統計力学的視点が必須です。標準的な統計力学の基礎を学びながら自然と高分子物理学の基盤知識を修得することを目的とします。
本講義の履修により、材料科学の基盤である統計力学の基礎について理解するとともに、得られた知識がどのように高分子物理学に活用されるのかを橋渡しすることを目指します。
本講義を履修することによって次の能力を習得する。
1) 小正準・正準・大正準集合、分配関数といった統計力学の基礎概念について説明できる。
2) 授業の各回で課される演習問題によって、上記の概念についての具体的な問題を解くことができる。
3) 高分子の統計力学的取扱いについての基礎的知識を説明できる。
小正準集合、正準集合、大正準集合、分配関数、エントロピー、自由エネルギー、平均場近似、ゴム弾性
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
講義内容は、板書と液晶プロジェクターを利用したスライドを並行して利用して、講義形式で行います。講義中に、講義内容に関する演習問題にも取り組んでもらいます。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 数学的準備(確率・統計の基礎) | 統計力学を学ぶために必要な、確率論などの数学的準備を行います。 |
第2回 | 小正準集合 | 小正準集合の方法について学び、温度の統計力学的意味を理解します。 |
第3回 | 内部エネルギーとエントロピー | 小正準集合の方法に基づき、内部エネルギーやエントロピーの統計力学的意味を学びます。 |
第4回 | 正準集合と熱力学ポテンシャル | 正準集合の方法について学び、分配関数およびその熱力学的諸量との関係について理解します。 |
第5回 | 相互作用のある系 | 相互作用のある系について、Ising模型や平均場近似などの近似法について学びます。 |
第6回 | 高分子系への応用 | 高分子一本鎖の統計力学やゴム弾性について理解を深めます。 |
第7回 | 理解度確認のための演習と解説 | 第1〜6回の講義内容を正確に理解し,演習問題に解答できるようにします。 |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
アトキンス「物理化学(下)第10版」東京化学同人(2017)
必要に応じて講義の中で紹介する。
期末試験による。演習問題を課題として、その成績を参考にする場合もある。
履修の条件は設けないが、初等的な熱力学の知識をもっていることが望ましい
knakaji[at]mac.titech.ac.jp
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