[講義の概要]本講義では群論の基礎、および指標表を用いて化合物の対称性から予測される分子の諸性質について定性的に理解する手法について解説する。
[講義のねらい] 対称性は無機化学において極めて重要な概念であり、群論から導かれる対称性の概念を応用することで分子の分類、分子軌道の組み立て、ならびに分子振動およびその選択律の解析に用いることができる。群論を利用することで、分子の物理的・化学的な性質に関するいくつかの一般的な結論をまったく計算をせずに導き出すことも可能である。本講義では分子の構造(対称性)から、指標表を用いて分子の特性に関する情報を導出する手法を習得することを目的とする。
本講義を履修することによって次の能力を修得する。
1) ある構造の分子の対称操作と対称要素を説明できる。
2) 分子の構造から、分子の属する点群を決定できる。
2) 指標表を用いて分子の特性を予測できる。
3) ある特定の対称性をもつ原子軌道の線形結合(対称適合線形結合)を用い、単純な分子の分子軌道を組み立てることができる。
対称性、対称操作、対称要素、点群、指標表、対称標識、対称適合線形結合、分子振動、分子軌道
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
本講義では、まず群論の基礎について学び、分子の属する点群を決定する手法について解説する。さらに、ある分子の属する点群の指標表を用いて分子の物理的および化学的性質を予測する手法について解説する。具体的には分子振動モードの決定とその選択律について、ある特定の対称性をもつ原子軌道の線形結合(対称適合線形結合)を用いた分子軌道の組み立て方について解説する。最終日には理解度確認のための期末試験を実施する。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 分子の対称性、対称操作と対称要素 | 対称操作と対称要素を説明できる。 |
第2回 | 分子の点群 | ある構造の分子の属する点群を帰属できる。 |
第3回 | 指標表と対称標識 | 指標、対称標識、指標表を説明できる。 |
第4回 | 対称性の応用:分子振動 | 分子の構造から分子振動モードを決定することができる。 |
第5回 | 射影演算子と対称適合線形結合 | 対称適合線形結合を説明できる。 |
第6回 | 対称性の応用:分子軌道の組み立て | 原子軌道の対称適合線形結合から分子軌道を組み立ていることができる。 |
第7回 | 対称性の応用:結晶場理論 | 配位子の対称適合線形結合を用いて八面体形錯体の結晶場分裂を説明できる。 |
第8回 | 理解度確認のための演習と解説 | 第1~7回の講義内容を理解し、演習問題に解答できる。 |
P. Atkins, T. Overton, J. Rourke, M. Weller, F. Armstrong著、田中、平尾、北川 訳「シュライバー・アトキンス無機化学(上)」第4版(東京化学同人)ISBN: 978-4-8079-0667-3
1) 指定なし。
2) 授業で扱う全ての資料は、事前にOCW-iにアップする。
期末試験(70%)、授業参加度(30%)(授業参加度は授業中の小テストなどにより算出する)
履修の条件は設けないが、無機化学第一(結合論)(CAP.B221)、無機化学第二(反応と構造)(CAP.B222)、無機化学(材料化学)(CAP.B223)、無機化学(元素と化合物)(CAP.B224)を履修していることが望ましい。
高尾 俊郎 (takao.t.aa[at]m.titech.ac.jp・内線 2580)
メールで事前予約すること。