[講義の概要] 本講義では、無機化学第一(結合論)を履修してきた学生を対象に、酸塩基反応、酸化還元反応、固体の構造、について解説する。
[講義のねらい] 化学反応は原子間で電子が授受されることによって新たな結合の生成や切断が起こる現象であり、その基礎的な反応機構を固体の構造とともに学ぶことは、元素の化学的性質を理解するために必要不可欠である。本講義では、まずブレンステッドとルイスの定義による酸と塩基の強さ・硬さや電気化学系列を用いて化合物の反応性を記述する方法を理解する。続いて、結晶構造や電子構造の型が元素の性質や原子の電子構造に由来することを理解する。そして、周期表をもとに分子や化合物の反応性や原子が緊密に結合した状態を議論できる能力を養う。
本講義を履修することによって、
1) 酸・塩基と酸化・還元に関する基礎的な知識と考え方を修得できる。
2) 元素の性質に基づいて、単純な固体の結晶構造やバンド構造を説明できる。
3) 周期表をもとに分子や化合物の反応性や原子が緊密に結合した状態を議論できる。
酸塩基反応、ブレンステッド酸・塩基、ルイス酸・塩基、酸化還元反応、電気化学系列、不均化反応、均等化反応、結晶構造、イオン結合、格子エンタルピー、バンド構造
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
本講義は、(1)酸と塩基、(2)酸化と還元、(3)固体の結晶構造、の順番で進める。そして最終回に、理解度確認のための演習と解説を実施する。
授業計画 | 課題 | |
---|---|---|
第1回 | 酸と塩基 | 酸性度定数を用いてプロトン移動の平衡を定量的に表す方法を理解し、ブレンステッド酸・塩基の特徴について説明できる。 |
第2回 | 酸塩基反応 | 電子対の受容体と供与対について一般化されたルイス酸・塩基の特徴を理解し、プロトン移動を伴わない種々の酸塩基反応について説明できる。 |
第3回 | 酸化還元対と電気化学系列 | 酸化還元対の標準電位から酸化還元平衡を定量的に示す方法を理解し、電気化学系列を使って化学種の安定性を導出できる。 |
第4回 | 酸化還元反応 | ラチマー図、フロスト図、プールベ図、エリンガム図を使いながら、種々の環境下における酸化還元反応の特徴について説明できる。 |
第5回 | 固体の構造 | 結晶構造の種類と記述方法を理解し、種々の結晶構造を表記できる。 |
第6回 | イオン固体の構造 | イオン固体の構造の分類法を理解し、結合様式や配位数を求めることができる。 |
第7回 | イオン結合とバンド構造 | イオンモデルの理論に基づいて固体の熱力学的な性質を議論できる。分子軌道法と関連付けて金属や絶縁体のバンド構造を説明することができる。 |
第8回 | 理解度確認のための演習と解説 | 演習により総合的な理解度を高め,到達度を自己評価する。 |
P. Atkins, T. Overton, J. Rourke, M. Weller, F. Armstrong著、田中、平尾、北川 訳「シュライバー・アトキンス無機化学(上)」第4版(東京化学同人)ISBN: 978-4-8079-0667-3
講義資料は講義中に配布するとともにOCW-iにアップロードする。
期末試験(90%)と演習(10%)で到達目標の達成度を評価する。
履修条件は特に設けないが、関連する科目(無機化学第一(結合論)(CAP.B221.R))を履修していることが望ましい。
大友明 aohtomo[at]apc.titech.ac.jp
野村淳子: jnomura[at]res.titech.ac.jp
メールで事前予約すること。