本講義では、材料研究においてデータの解析や機構の解釈に必要な、コンピュータを用いた数値解析・シミュレーションの基礎と応用例を解説する。コンピュータの機構、動作原理からはじめ、数値微分、数値積分、方程式の解法、最適化法などの数値計算の原理とアルゴリズムについて説明したのち、微視的な分子動力学法や量子計算法、巨視的なシミュレーション手法である有限要素法、フェーズフィールド法などを学ぶ。
材料研究においては、実験データの本質的な特徴を抜き出したりするだけでなく、結晶構造解析など、複雑な数値計算により材料の構造や物性を解析する必要がある。また最近では、第一原理量子計算などが新しい解析・材料設計ツールとして使われるようになっており、その物理基礎およびアルゴリズムの特徴を理解して使いこなすことが必要になっている。このように、計算材料学は先端材料科学を進める上での重要な科目である。ぜひ習得してほしい。
本講義を履修することによって次の能力を修得する。
1) コンピュータの機構と動作原理を理解し、それらに伴う計算誤差を考慮して数値計算を行う基礎を習得する。
2) 数値微分、数値積分、方程式の解法、最適化法などの数値計算の基本的な考え方を理解し、代表的なアルゴリズムを習得する。
3) 分子動力学法、量子計算法の基礎を学び、応用範囲を理解する。
4) 有限要素法、フェーズフィールド法などの巨視的なシミュレーション手法の基礎を学び、応用範囲を理解する。
数値計算、分子動力学法、第一原理計算、密度汎関数法、電子構造、有限要素法、フェーズフィールド法、微細構造
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
毎回の講義の最初あるいは最後に質問時間を設けながら進めます。質問は随時受け付けますので、気軽に質問してください。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | デジタル化と数値誤差 | コンピュータの内部機構、動作原理と数値計算誤差の原因の理解 |
第2回 | 差分法、数値微分、数値積分、常微分方程式の解法 | 差分法の考え方の理解と数値微分、数値積分、微分方程式の解法への応用 |
第3回 | 常微分方程式の解法の応用、補間、平滑化 | 常微分方程式の応用例として惑星シミュレーションや一次元量子方程式の解法を学ぶ。また、補間、平滑化などのデータ処理の基礎を学ぶ |
第4回 | 線形最小自乗法、最適化、方程式の数値解法 | 最適化問題の解法の考え方と代表的なアルゴリズムを学び、方程式の数値解法へ応用する |
第5回 | 非線形最小自乗法、Fourier変換、行列 | 非線形最小二乗法、Fourier変換の数値解析の考え方とアルゴリズムを学ぶ。行列の数値解法については基本的な考え方とプログラムライブラリィを紹介する。 |
第6回 | モンテカルロ法I | 乱数を使った数値計算手法の考え方としてモンテカルロ積分について学ぶ |
第7回 | モンテカルロ法II | マルコフ連鎖の考え方とメトロポリスモンテカルロ法がさまざまな多粒子系の統計的な性質の解析に応用できることを学ぶ |
第8回 | 有限要素法I | 偏微分方程式を近似的に解くための数値計算法である有限要素法の原理を学ぶ |
第9回 | 有限要素法II | 有限要素法の構造や力学、熱、電気、化学など様々な現象の予測に応用できることを学ぶ |
第10回 | フェーズフィールド法 | 相転移の秩序パラメータに相当するフェーズフィールドを用いて、結晶成長など材料科学の多くの現象を再現できることを学ぶ |
第11回 | 古典分子動力学法:基礎 | 古典粒子集合体の性質をシミュレーションできる手法について、モデリングや計算手順など方法論の基礎を学ぶ |
第12回 | 古典分子動力学法:応用 | 古典分子動力学法を用いて気体・液体・固体の諸性質をシュミレーションした例をもとに、実践的知識やデータ分析法などを習得する |
第13回 | 第一原理計算法:基礎 | 多体電子系の性質を量子力学に基づいて非経験的にシミュレーションできる手法について、密度汎関数理論など背景原理の初歩を学ぶ |
第14回 | 第一原理計算法:応用 | 第一原理計算法を用いて結晶中の電子構造(電荷分布、バンド分散、状態密度、フェルミ面など)を明らかにする具体的な手順やデータ解析法を習得する |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
教科書は講義中に指示する。必要に応じて資料を配布する。
特になし
期末試験で評価する。
微分、積分、線形代数などの基礎数学
古典力学、量子力学などの基礎物理/化学