本講義では、高分子物理学、特に高分子の静的・動的振る舞いについてこれまで学んできたことを、スケーリング則という別の視点で捉え直す機会を与えます。スケーリング則は、できる限り鎖の構造の詳細を無視し、多くの高分子鎖に対して成立するような単純で普遍的な性質を抽出しようという態度で高分子物理学を捉え直すひとつの重要な方法論です。そのような考え方の導入部分についての基礎知識を取得することを目的とします。
本講義の履修により、今ではほとんどの高分子物理学者が身に備えているスケーリング則の概念を習得することを目指します。
本講義を履修することによって次の能力を習得する。
1) 次元解析の概念に始まり、高分子の物理的性質をスケーリング則によって記述することができる。
2) 一本鎖、高分子ブレンド、架橋高分子などを対象にブロッブと呼ばれる概念について説明できる。
3) ブロッブの概念が自然と絡み合いの記述に導かれることや臨界現象との関連について説明できる。
次元解析、スケーリング則、理想鎖、実在鎖、偏析、ゲル、動的スケーリング、レプテーション
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
講義内容は、板書と液晶プロジェクターを利用したスライドを並行して利用して、講義形式で行います。また途中で、学生間のフリーディスカッションの時間を設けます。
授業計画 | 課題 | |
---|---|---|
第1回 | 理想鎖のスケーリング則 | 理想鎖のスケーリング則について学び、さまざまな拘束条件下の鎖の振る舞いについて理解します。 |
第2回 | 実在鎖のスケーリング則 | 実在鎖のスケーリング則およびブロッブの概念を理解します。 |
第3回 | 平均場理論 | フローリー・ハギンスの平均場理論を復習します。 |
第4回 | 無熱溶媒のスケーリング則 | 無熱溶媒のスケーリング則によって重なり合いの閾値の重要性について学びます。 |
第5回 | 偏析の問題 | 高分子ー高分子系あるいは高分子ー溶媒系についての偏析の問題を扱います。 |
第6回 | ゲルのスケーリング則 | ゲルのスケーリング則について学び、パーコレーション模型について理解します。 |
第7回 | 動的スケーリングと緩和時間、単一鎖のレプテーション | 動的スケーリング則についてその導入部分を理解し、緩和時間の意味を考えます。また単一鎖のレプテーションモデルを理解し、長時間緩和について学びます。 |
第8回 | 理解度確認のための演習と解説 | 第1~7回の講義内容を正確に理解し,演習問題に解答できる. |
ド・ジャン「高分子物理学」吉岡書店(POD版)
必要に応じて講義の中で紹介する。
毎回の講義で課す課題による。
履修の条件は設けない
nakajima.k.aa[at]m.titech.ac.jp
メールで事前予約すること