雨の日、水滴は傘の表面を流れ落ちていきますが、別の水滴はその場にとどまります。このような違いは、どのような理由から生まれるのでしょうか。どのような性質を調べ、改良すればよいのでしょうか。これまで、固体の静的な濡れは、主にコロイド界面科学分野で、また、動力学的な濡れは、主に流体力学や機械工学分野でそれぞれ取り扱われてきました。本講義では、これらを橋渡しして「固体表面での静的・動的濡れ性を制御する」ためのサイエンスを解説します。本講義は英語での「双方向」授業です。学生は12回目までの講義で濡れの科学を学び、その後、各自が濡れ制御に関するresearch proposalを作成してプレゼンします。そこでの討論を通じて「固体表面の濡れ」に関する理解を深めてもらいます。
本講義では,固体表面の構造とその大きさや階層、また、化学組成の大きさと変化の割合、それらの分布等が、固体表面の濡れに及ぼす影響を理解し,それらを制御して所望の特性を導くことができるようにするための基礎を築くことを狙いとします。固体に関する表面化学、界面科学の知識を応用展開できる能力を身につけます。
本講義では,物理と化学の境界領域に位置する、固体表面の濡れ制御に関する基礎的事項を学びます。粉体を含む固体表面での濡れの状態に影響を及ぼす内因的外因的要素と、その寄与の程度を正しく理解し、この分野での総合的な問題解決能力を獲得することを到達目標とします。
濡れ、接触角、転落角、表面エネルギー、Youngの式
✔ 専門力 | 教養力 | ✔ コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
講義を初めの12回程度で行い、学生が講義の内容を元に、「濡れ」が関わる課題を設定してそのresearch proposalを作成します。後半3回はそのプレゼンを英語で行い、そこでの質疑をもとにしたresearch proposalの最終案を教員に提出します。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | イントロダクション: 進め方、表面の定義、様々な濡れ制御とその応用、静的・動的濡れ性 | 授業の概要を説明する。 |
第2回 | 固体表面科学の基礎: 理想表面、実表面、構造緩和、表面粗さ、吸着平衡 | 表面の分類と緩和について説明する。 |
第3回 | 様々な固体表面: 無機材料、有機材料、良溶媒、貧溶媒、LTT構造、自己組織化 | 各種固体材料の表面の特徴を説明する。 |
第4回 | 表面エネルギーI: 表面エネルギーの熱力学、ヤングデュプレの式、接触角、G-G式、 | 表面エネルギーの起源と特徴について解説する。 |
第5回 | 表面エネルギーII: ベルテローの式、表面エネルギーの分類、表面エネルギー測定法 | 表面エネルギーの起源と特徴について解説する。 |
第6回 | 表面エネルギーIII: ラプラス圧、ケルビン式、毛管長、線張力、表面粗さと濡れ | 表面構造と濡れとの関係について解説する。 |
第7回 | 動的濡れ性I: 静的濡れ性の限界、ファミッジの式、接触角ヒステリシスと転落角 | 静的濡れ静と動的濡れ性の違いについて述べる。 |
第8回 | 動的濡れ性II: ピンニング、転落のモード、粒子画像流速計測 | 動的濡れ性の測定法と支配因子を紹介する。 |
第9回 | 動的濡れ性III: 転落と蒸発、表面エネルギーの分布と形状が及ぼす影響 | 動的濡れ性に及ぼす表面エネルギーの分布の影響について説明する。 |
第10回 | 外場による濡れ制御: 電界、磁界、風圧の効果、 | 電場、磁場、風など重力以外の作用が水滴の動的挙動に与える影響について説明する。 |
第11回 | 濡れを応用した機能表面I: 超撥水材料、着雪防止材料、 | 超撥水材料について説明する。 |
第12回 | 濡れを応用した機能表面II: 酸化チタンの光誘起超親水性 | 超親水材料について説明する。 |
第13回 | 英語でのresearch proposal発表1:表面構造制御に関する新規濡れ性の創出 | 発表準備、レジメ作成、発表を聞いての質疑応答 |
第14回 | 英語でのresearch proposal発表2:外場(電場、磁場、光等)を用いた濡れ制御 | 発表準備、レジメ作成、発表を聞いての質疑応答 |
第15回 | 英語でのresearch proposal発表3:濡れの新規応用とその計測・評価 | 発表準備、レジメ作成、発表を聞いての質疑応答 |
特に使用しない
・固体表面の濡れ制御(中島章:内田老鶴圃) ・固体表面の濡れ(中島章:丸善)
research proposalでの発表(30%)、質問回数と質問内容(30%)、発表時の質疑を取り入れた最終的なproposalレポート(40%) 発表、質疑、レジメ作成はすべて英語で行ってもらいます。質疑に内容を踏まえてresearch proposalをリバイスし、A4で10ページ程度のproposalにして提出してもらい、採点します。
特にはないが学部レベルの熱力学を理解していること。
本講義は英語で開講するため、英語で講義を理解できること。