2017年度 磁気物性特論   Advanced Course of Magnetism

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開講元
材料コース
担当教員名
伊藤 満  谷山 智康 
授業形態
講義     
メディア利用科目
曜日・時限(講義室)
火1-2(J234)  金1-2(J234)  
クラス
-
科目コード
MAT.C406
単位数
2
開講年度
2017年度
開講クォーター
4Q
シラバス更新日
2017年3月17日
講義資料更新日
-
使用言語
日本語
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講義の概要とねらい

 本講義では、磁気的な相互作用の根源となるスピン角運動量と交換相互作用の理解から出発し、他の磁気的相互作用、その結果、発現する強磁性、反強磁性、らせん磁性について理解し、さらに金属磁性の基礎を学ぶ。また、磁気応用の基礎となる磁気異方性等についても取り扱う。
 磁気現象は、無機材料、金属材料、有機材料など多様な物質において広範に観測され、また多岐に亘る技術にも応用展開されている。これらの磁気現象の起源は、電子移動を伴わない絶縁体と電子移動を伴う金属とでその取り扱い方が大きく異なり、磁気現象を理解するためには、それぞれ電子状態に対して特徴的な磁気的相互作用を理解することが必須である。本講義では、これらの理解を通して、磁気現象を包括的に捉えるための基礎知識を修得する。

到達目標

本講義を履修することにより、以下の能力を修得する。
1) 絶縁体、金属において特徴的な磁気的相互作用から多様な磁気物性が如何にして生まれるかについて理解することができる。
2) 物質科学において見出される新たな磁気現象を、磁気物性とその微視的な起源を対応付け、自らの力で考え解釈し、磁気現象の本質を捉えることができる。
3) 磁性材料を応用するために必須となる巨視的な磁気物性の取り扱い方について理解することができる。

キーワード

磁気モーメント, スピン角運動量, 交換相互作用, 超交換相互作用, 二重交換相互作用, ジャロシンスキー・守谷相互作用, 結晶場分裂, ヤーン・テラー効果, 強磁性・反強磁性の分子場理論, らせん磁性, スピン波理論, Stoner理論, RKKY相互作用, 近藤効果, 磁気異方性, 磁化過程, 磁区構造, 磁気と伝導, スピントロニクス

学生が身につける力(ディグリー・ポリシー)

専門力 教養力 コミュニケーション力 展開力(探究力又は設定力) 展開力(実践力又は解決力)

授業の進め方

適宜、講義に関連する演習問題等に取り組みながら理解を深められるように授業を進める。

授業計画・課題

  授業計画 課題
第1回 磁気モーメントとスピン角運動量 磁気モーメントとスピン角運動量の概念の理解
第2回 交換相互作用 交換エネルギー演算子の導出
第3回 超交換相互作用 超交換相互作用の定性的理解
第4回 二重交換相互作用 二重交換相互作用の定性的理解とMn酸化物の磁性の説明
第5回 ジャロシンスキー・守谷相互作用 ジャロシンスキー・守谷相互作用に基づく結晶の対称性とスピン構造の関係の導出
第6回 結晶場分裂とヤーン・テラー効果 八面体結晶場における3d軌道の分裂に基づくヤーン・テラー効果の理解
第7回 強磁性・反強磁性の分子場理論 反強磁性体の磁化率の導出とスピンフロップのメカニズムの理解
第8回 らせん磁性 らせん磁性の発現機構の理解
第9回 スピン波理論 ハイゼンベルグ運動方程式に基づくスピン波分散関係の導出
第10回 強磁性のStoner理論 強磁性発現のStoner条件の導出
第11回 RKKY相互作用 希薄磁性合金におけるRKKY相互作用とスピングラス秩序の理解
第12回 近藤効果 アンダーソン・ハミルトニアンに基づくスピンフリップ散乱の理解と希薄磁性合金の電気抵抗の温度依存性の説明
第13回 磁気異方性と磁化過程 立方対称強磁性体における結晶磁気異方性とトルク曲線の導出
第14回 磁区構造 一軸異方性を持つ強磁性体における磁壁の厚さの導出
第15回 磁気と伝導とスピントロニクス スピン流、非対称性スピン散乱、スピンホール効果の概念の理解

教科書

以下の参考書のいずれかを参照のこと。

参考書、講義資料等

安達健五著「化合物磁性」裳華房、永宮健夫著「磁性の理論」吉岡書店、芳田奎著「磁性」

成績評価の基準及び方法

磁気的相互作用と磁気物性の起源についての理解度を評価する。期末試験で成績を評価する (100%)。

関連する科目

  • MAT.M408 : 量子統計力学
  • MAT.M407 : 固体物理特論
  • MAT.C401 : 誘電体・強誘電体特論

履修の条件(知識・技能・履修済科目等)

学部レベルの電磁気学、量子力学、統計力学を履修していること。

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