本授業では、物質および光の量子状態を状態ベクトルで表し、量子状態の時間発展を記述するシュレディンガー表示、ハイゼンベルグ表示、相互作用表示について学びます。そのあと、光と物質の相互作用について線形である光吸収放出過程を学びます。さらに、量子光学などで重要であるコヒーレント状態について学びます。また最新の研究の例として、コヒーレントフォノン計測と光を用いた量子状態のコヒーレント制御について紹介します。
光と物質の相互作用に関する量子力学的な記述と計算方法を修得することを講義のねらいとします。
【到達目標】 本講義を履修することによって、量子力学に基づいた物質の状態とその時間発展を記述の仕方を理解し、振動電磁場である光との相互作用による状態変化の量子論的取扱い方を理解することを目標とします。さらに、この取扱い方法を、光を用いた物性評価および制御に応用できるようになることを目標とします。
【テーマ】 本講義では,物質の状態および光との相互作用を量子力学を用いて記述し、光を用いた物性研究をミクロな立場から理解することをテーマとします。特に、量子系の時間発展と振動電場との相互作用に注目します。
量子力学、光物性、非線形分光、レーザー
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
各授業項目に対して,最初の回で講義を行ったあと,次の回で演習を行います。自分で演習問題を解くことで,講義で学んだことの理解を深めるとともに,理解度を自分で確認できるようにします.
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 状態ベクトルと演算子 | 状態ベクトルを用いた量子力系を記述方法と,演算子を用いた計算方法を学ぶ. |
第2回 | 状態ベクトルと演算子に関する演習 | 演習問題を解くことで,状態ベクトルを用いた量子力系を記述方法と,演算子を用いた計算方法を身につける. |
第3回 | 量子系の時間発展 | 量子力学的系の運動方程式を学ぶ。特に,シュレディンガー描像,ハイゼンベルグ描像,相互作用描像での系の時間発展の記述方法を学ぶ. |
第4回 | 量子系の時間発展に関する演習 | 演習問題を解いて,量子系の時間発展の計算方法を身につける. |
第5回 | 調和振動子 | 調和振動子を取扱い,上昇下降演算子と数状態について学ぶ. |
第6回 | 調和振動子に関する演習 | 演習問題を解くことで,上昇下降演算子と数状態の計算方法を身につける. |
第7回 | 電磁場の量子化 | 調和振動子の取扱いをもとにして,電磁場の量子化の方法を学ぶ. |
第8回 | 電磁場の量子化に関する演習 | 演習問題を解いて,電磁場の量子化の方法を身につける. |
第9回 | コヒーレント状態 | コヒーレント状態の定義および性質について学ぶ。 |
第10回 | コヒーレント状態に関する演習 | 演習問題を解いて,コヒーレント状態の計算方法を身につける. |
第11回 | 密度演算子 | 密度演算子を用いた系の記述の方法を学ぶ。特に,時間発展の方程式とダイヤグラムの表し方を学ぶ. |
第12回 | 密度演算子に関する演習 | 演習問題を解いて,密度演算子を用いた量子系の計算方法を身につける. |
第13回 | 2凖位系の光過程 | 2凖位系を例として,光と物質の相互作用する系の時間発展を密度演算子を用いた記述方法を学ぶ. |
第14回 | 2凖位系の光過程に関する演習 | 演習問題を解いて,2凖位系の光過程の計算方法を身につける. |
第15回 | 量子光物性の理解度の確認と解説 | この授業を通して、量子光物性をどの程度理解できたかを確認する。 |
以下の参考書のいずれかを参照のこと。
"Modern Quantum Mechanics" by J.J. Sakurai and J.J. Napolitano (Pearson Education Limited 2014) ISBN 10:1-292-02410-0
"Principles of Nonlinear optical spectroscopy" by S. Mukamel (Oxford University Press 1995) ISBN 0-190509278-3
"Principles of Nonlinear optical spectroscopy: A practical Approach" by P. Hamm (www.mitr.p.lodz.pl/evu/lectures/Hamm.pdf)
物質の量子状態の時間発展と光との相互作用についての理解度を演習から評価する。また期末テストで成績を合わせて評価する。
学部授業で「量子力学」または「量子化学」に関連した授業を履修していること。