本講義では,希薄気体流れ(分子流れ)が通常の連続体流れとどのような点で異なっているのかを説明します。そして,希薄気体流れを扱うための基礎として,ミクロな視点から見た気体の平衡状態、輸送現象について説明し,希薄な流れの支配方程式とシミュレーションによる解法の概略について学習します.さらに,このような希薄流れの可視化手法や計測方法についても学習します.最後に、希薄な流れの工学的応用についていくつかの例を示して学習します.これにより,半導体製造プロセス,マイクロマシン,宇宙往還機に関与する熱流体現象を理解し,それらの設計に役立てるための知識を習得します.なお,学習内容の理解を深めるために,演習問題を適宜取り入れます.
本講義を履修することによって次の能力を修得する。
1)希薄な気体の流れと連続流体流れとの違いを理解できる
2)気体分子の運動を統計的に扱うための基礎が理解できる
3)ボルツマン方程式の物理的意味とその数値解法が理解できる
4)希薄流れの可視化方法と測定方法が理解できる
希薄気体流れ,クヌッセン数,速度分布,マックスウェル-ボルツマン分布,平均自由工程,ボルツマン方程式,DSMC
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
毎回の講義において、配布資料に基づいてその日の学習内容について説明します.各講義の最後にその日の教授内容に関する演習問題に取り組んでもらいます。各回の学習目標をよく読み,課題を予習・復習で行って下さい。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 希薄流れについての概要説明 -原子・分子の流れを考えることが必要なのはどんな場合か | 通常の流体力学で扱われる状態量と原子・分子との関係の理解 |
第2回 | 統計熱力学の基礎 -希薄気体における熱流体現象を学ぶための基礎作り | 気体分子の運動を統計的に考える物理的イメージの習得 |
第3回 | ミクロな視点から見た気体の平衡状態 -気体分子の熱運動を統計的に取り扱う手法 | 熱平衡状態にある気体の性質の理解 |
第4回 | ミクロな視点から見た輸送現象 -粘性や熱伝導などの気体の熱流体特性に関する物性の本質 | 気体分子の熱運動と熱流体特性との関係の理解 |
第5回 | 固体表面での気体分子のふるまい -気体分子と固体表面との干渉 | 気体分子が固体表面に入射した場合に生じる物理現象の理解 |
第6回 | 希薄流れの数値シミュレーション -DSMCを用いたボルツマン方程式の解法 | ボルツマン方程式の数値解法の理解 |
第7回 | 希薄流れの可視化と計測 | 希薄流れの可視化方法と計測方法の理解 |
第8回 | 希薄流れの先端工学への応用 -真空工学,半導体製造プロセス,マイクロマシン,宇宙工学 | 希薄流れの工学的応用の理解 |
必要に応じて資料を配布
日本機械学会・編 『原子・分子の流れ -希薄気体力学とその応用』 共立出版,ISBN-13: 978-4320081130
久保亮五・監訳 『統計物理 - バークレー物理学コース』 丸善,ISBN-13: 978-4621083437
Berkeley Physics Course 『Complete Statistical Physics (Berkeley Physics Course, Volume 5)』 McGraw-Hill Science/Engineering/Math,ISBN-13: 978-0070386624
講義資料は講義中に配布する。
希薄気体力学を取り扱うにあたっての基礎知識の習得と流れに特有な現象についての理解を評価する.期末試験(80%),演習(20%)で成績を評価する.
履修の条件を設けない