有機材料工学において、化学合成の基本操作、合成物の基礎的分析方法、物性測定における基礎的操作の理解と習得、実験で行っている原理や実験結果に現れる諸物性の内容を理解することは必須である。また、最新の研究成果を踏まえ、実際に有機材料を用いた実験を行う事により、大学教養課程より先端研究までの広範囲の実験に対応できる理解力を養うことが可能となる。個別には、赤外線カメラを用いた温度の直接測定と熱伝達の可視化実験と有限要素法解析による熱伝達計算の比較、示差走査熱分析(DSC), 広角X線回折(WAXD), 動的粘弾性測定(DMA)を用いたポリ-L-乳酸 (PLLA) の構造と物性の解析、有機分子の吸収、蛍光、りん光などの基礎的な光物性の測定と解析を体験し、広範囲の有機材料への理解を促進し、講義で学んだ知見の具体的内容を実験を通して自らデータを解析することで、より深い理解を得ることができる。
本科目では、実験操作、実験原理、理論との比較などを通して、有機材料に関する基礎を身につけるとともに、教養課程から先端研究までの広範囲の実験に対応できるスキルと理解を向上させることが主たるねらいである。
実験室などの制約で、履修学生数を制限することがある。また履修クォータ、履修順序の変更もある。第1、第3、第4クォータで有機材料工学実験を全て履修すれば、「有機材料工学実験第一、第二、第三」の全内容を履修することができる。
【到達目標】 本実験を履修することで次の能力を修得する。
1)基本的な化学実験操作、物性測定操作の習得
2)化学反応と分析手法の理解
3)測定による物性値の意味と原理の理解
4)試料作製条件と物性値の関連の理解
5)レポートによる実験方法、実験結果の整理、実験結果に基づく考察などの考え方の理解、また、より高度な実験を行う際の基礎を習得
【テーマ】 本実験では、安全講習、有限差分法、ポリ乳酸の物性、溶融紡糸を行い、数値計算、実験、加工実習により、有機材料に関する広範囲にわたる基礎を理解し、より高度な研究に資する技術、概念形成などを行う。
有機材料、材料工学、実験、分析手法、物性測定、数値計算
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
本科目は班編成で進行し、各テーマを順次学んでいく。履修クォータ、履修順序の変更もある。第1、第3、第4クォータで有機材料工学実験を全て履修すれば、「有機材料工学実験第一、第二、第三」の全内容を履修することができる。レポートは期日までに提出しなければならない。なお実験内容の理解、安全やスムーズな進行のためにも事前に実験テキストをよく読んでくることが求められる。
授業計画 | 課題 | |
---|---|---|
第1回 | 全体ガイダンス | 実験における注意事項、グループ分け、スケジュール、レポート等について説明する。 |
第2回 | ポリマーの熱物性(全4回) 1: 熱伝導率と比熱容量の直接測定、熱拡散率の間接決定 | 異なる方法やセンサーで測定された諸熱物性の比較。有限差分法による数値解析と不確実性の計算。 |
第3回 | ポリマーの熱物性(2/4) | 温度変化可視化のための赤外線センサーの使用法入門、フラッシュ法と赤外線センサーを用いた熱拡散率の直接測定 |
第4回 | ポリマーの熱物性(3/4) | ポリマー材料における温度変化の時間依存性測定と1次元数値解析結果との比較 |
第5回 | ポリマーの熱物性(4/4) | 温度波を用いた熱拡散率の直接測定 |
第6回 | ポリL乳酸(PLLA)の微細構造と物性(全4回) 1: PLLAの示差走査熱量測定(DSC)による熱的性質 | PLLAの示差走査熱量(DSC)測定、広角X線回折、動的粘弾性測定(DMA)を行い、それらの測定原理を理解する。また、PLLAの微細構造と熱的、力学的物性(温度、周波数依存性)との関係を考察できる。 1日目は、示差走査熱量測定(DSC)を行う。 |
第7回 | PLLAの微細構造と物性(2/4) 2: PLLAの広⾓X線回折による微細構造解析 | 2日目は、PLLAの広角X線回折による微細構造解析を行う。 |
第8回 | PLLAの微細構造と物性(3/4) 3: PLLAの動的粘弾性の温度依存性 | 3日目は、PLLAの粘弾性特性の温度依存性の測定を行う。 |
第9回 | PLLAの微細構造と物性(4/4) 4: PLLAの動的粘弾性の周波数依存性 | 4日目は、PLLAの粘弾性特性の周波数依存性の測定を行う。 |
第10回 | 光化学入門(全4回) | 有機化合物の励起状態における現象(光吸収・蛍光・エネルギー移動)についての入門実験を行い、また光化学的背景を理解する。 |
第11回 | 光化学入門2: 有機化合物の光吸収・蛍光および量子収率の測定 | 有機化合物の吸収スペクトルと蛍光スペクトル、および量子収率を測定を行い、得られたスペクトルの物理的な意味について考察する。 |
第12回 | 光化学入門3: 有機化合物の量子化学計算と実験結果の比較 | 有機化合物の基底状態と励起状態の量子化学計算を⾏うことでその手法と意味について理解し、実験で得られた吸収スペクトルと蛍光スペクトルの結果と比較をする。 |
第13回 | 光化学入門4: 分子間エネルギー移動の観察と解析 | 有機化合物の間で進行するエネルギー移動を吸収と蛍光スペクトルより観察し、そのデータを解析することでエネルギー移動に関する光化学的な意味を理解する。 |
第14回 | 安全教育 | 研究室に所属して研究を進める上での安全上の注意事項について学ぶ。 ・薬品 ・電気 ・機械 |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね50分を目安に行うこと。
実験テキストは実験時に配布
実験テキストは実験時に配布
全出席および全実験履修が原則。実験レポート提出状況と採点結果により成績を評価する。遅刻や提出遅れを繰り返した場合は不合格とする。
履修条件は特に設けないが、関連する科目を履修していることが望ましい。