2022年度 金属熱力学   Thermodynamics in Metals

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開講元
材料系
担当教員名
須佐 匡裕 
授業形態
講義    (ライブ型)
メディア利用科目
曜日・時限(講義室)
木3-4(H115)  
クラス
-
科目コード
MAT.M319
単位数
1
開講年度
2022年度
開講クォーター
1Q
シラバス更新日
2022年3月16日
講義資料更新日
-
使用言語
日本語
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講義の概要とねらい

 熱力学は蒸気機関の効率をいかに高めるかという考察から始まったが、その適用範囲は今や、量子物理学、宇宙物理学、生命科学、情報科学などにも拡大されている。熱力学の考え方は、材料工学においても重要であり、材料系で開講される多くの講義の基礎となっている。ギブズエネルギー変化からは,電池反応で取り出せる最大仕事量を予測することができるし、さらに、どのような条件下では反応が進行し、どのような条件下で系は平衡に達するのかを予測することも可能である。熱力学的に「起こらない」と判定される化学反応は決して自発的には起こらない。ギブズの相律は熱的平衡、機械的平衡および化学的平衡を達成するために、どの示強変数をどのように設定すべきかという検討に必須の概念である。本講義では、以下に示すように、熱力学の第一~第三法則の復習から始め、ギブズの相律や活量といった概念の理解をより深めるようにする。このために、講義では演習を多く取り入れる。
 本講義は,化学反応をともなう高温プロセスの熱力学に関するものである。熱力学第一~第三法則を基礎としているため、まずこれらの復習を行い、内部エネルギー、エンタルピー、エントロピー、ギブズエネルギーをはじめとする熱力学関数について解説する。特に反応の標準エンタルピー変化、標準エントロピー変化、標準ギブズエネルギー変化の計算方法に注力する。続いて、化学ポテンシャルを導入し、ギブズの相律を導出する。また、ギブズの相律を状態図や化学反応を含む系に適用して、系を平衡させるためにはどのような示強変数を実験的に固定する必要があるかといった問題についての考え方を解説する。さらに活量の概念を導入する。気体成分の活量および凝縮相成分の活量の標準状態と活量の定義について解説し、最後に、相互作用係数についても解説する。以上を総合して、様々な化学反応をともなう系についての化学平衡計算手法の基礎を提供する。
 熱力学は、高温材料やプロセスの研究・開発を進める上でも重要な分野である。エンタルピー、ギブズエネルギー、活量などの使い方だけではなく、なぜこのような概念が創出されたのかといった背景も理解してほしい。また、熱力学の考え方を自分の特定課題研究などにも適用してみてほしい。

到達目標

【到達目標】本講義では、化学熱力学の基礎を復習するとともに、ギブズの相律や活量の概念を多相・多成分から成る系にも適用できることを目標とする。また、本講義を履修することにより、大学院課程の「高温物理化学-製精錬プロセス」や「高温物理化学-金属の高温酸化」を理解するための基礎を習得することを到達目標とする。
【テーマ】本講義では,熱力学第一~第三法則の復習から始め、化学熱力学の中心的関数であるギブズエネルギー、化学ポテンシャルおよび活量など、また中心的概念であるギブズの相律の考え方をより深く理解し,これらの知識を高温プロセスや高温材料の研究・開発などで応用するための基礎を築くことを目的とする。
 本講義を履修することによって次の能力を修得する。
1)内部エネルギー変化、エンタルピー変化、エントロピー変化、ギブズエネルギー変化の計算ができる。
2)ギブズ相律を用いて、相平衡や化学平衡を達成するために指定すべき示強変数を考察することができる。
3)活量の概念を説明でき、ギブズエネルギー変化や平衡定数を用いて化学平衡計算ができる。

キーワード

熱力学第一・第二・第三法則、内部エネルギー、エンタルピー、エントロピー、ギブズエネルギー、化学ポテンシャル、平衡、ギブズの相律、自由度、活量、標準状態、平衡定数、相互作用

学生が身につける力(ディグリー・ポリシー)

専門力 教養力 コミュニケーション力 展開力(探究力又は設定力) 展開力(実践力又は解決力)
熱力学の基礎を理解して、工学上で使える道具としての熱力学を習得する。

授業の進め方

毎回の講義の前半で,復習を兼ねて前回の演習問題の解答を解説する。講義の後半で,その日の教授内容に関する演習問題に取り組む。各回の学習目標をよく読み,予習・復習を行うこと。

授業計画・課題

  授業計画 課題
第1回 第一法則とエンタルピー ー内部エネルギー変化とエンタルピー変化の違い 相変化や反応のエンタルピー変化の計算
第2回 第二・第三法則とエントロピー -宇宙、系および周囲のエントロピー変化 相変化や反応のエントロピー変化の計算
第3回 ギブズエネルギーと熱力学関数 -ギブズエネルギーの定義と意味 相変化や反応のギブズエネルギー変化の計算
第4回 化学ポテンシャルと相律 -成分、相および自由度 成分、相および自由度の数え方
第5回 活量 -気相および凝縮相成分の標準状態 気相の活量を用いた化学平衡についての計算
第6回 ラウール基準とヘンリー基準の活量 ー標準状態間の化学ポテンシャルの差 溶液が関与する化学平衡についての計算
第7回 活量(1mass%ヘンリー基準)と相互作用係数 -相互作用係数の使い方 相互作用係数による活量係数の求め方

授業時間外学修(予習・復習等)

学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する 予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。

教科書

特に指定しない。

参考書、講義資料等

講義資料は、T2SCHOLAにより配布する。
「材料熱力学(MAT.A204)」で用いたアトキンスの物理化学など、化学熱力学の標準的な教科書は参考書として役に立つ。

成績評価の基準及び方法

熱力学の各法則、各熱力学関数、化学ポテンシャル、相律、活量および標準状態の考え方,計算法及びそれらの応用について,その理解度を評価 配点は,期末試験(70%),演習・宿題(30%)

関連する科目

  • MAT.A204 : 材料熱力学
  • MAT.M202 : 統計力学(M)
  • MAT.M207 : 金属の状態図と相安定
  • MAT.M308 : 金属電気化学
  • ENR.J402 : 高温物理化学-熱力学
  • ENR.J403 : 高温物理化学-製精錬プロセス
  • ENR.J404 : 高温物理化学-金属の高温酸化

履修の条件(知識・技能・履修済科目等)

材料熱力学(MAT.A204)を履修していること,または同等の知識があること。

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