2022年度 金属の状態図と相安定   Phase Diagram and Stability in Metals

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開講元
材料系
担当教員名
細田 秀樹  木村 好里 
授業形態
講義 / 演習    (対面型)
メディア利用科目
曜日・時限(講義室)
火1-2(S223)  金1-2(S223)  
クラス
-
科目コード
MAT.M207
単位数
2
開講年度
2022年度
開講クォーター
3Q
シラバス更新日
2022年5月11日
講義資料更新日
-
使用言語
日本語
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講義の概要とねらい

(本年度の予定)本講義は演習を含むため、基本的には直接対面形式の予定で,オンライン配信は行いません。席等の状況から、受講希望生は2022/9/30正午までに登録を行ってください。講義に関わる事前相談はメールにて細田hosoda.h.aa@m.titech.ac.jpまで連絡をお願いします。その際には、メール題目を「金属の状態図講義に関する問い合わせ」とし、「氏名・学籍番号・必ずすぐに連絡のつく返信アドレス」を明記してください。通学にあたっては、マスクや手洗いなど感染防止に気を付け、体調の悪い場合は無理して出席せず、担当教員(前半細田、後半木村)に講義開始までにメールで連絡してください。 

(講義の概要) 本講義は,前半に状態図を理解して相平衡の情報を読み取る能力を身につけ,後半に状態図の熱力学的および物理的な成り立ちを理解するという構成である.まず,二元系状態図から相平衡の情報を読み取るためにギブズ相律,溶解度曲線,相境界および相領域をよく理解し,状態図を特徴づける不変系反応とそれによる組織形成について説明する.状態図の物理的な背景を理解するために必要な熱力学の基礎について,Gibbsエネルギー,化学ポテンシャル,異相平衡条件について理解を深め,さらに二元系から三元系に拡張するための概念を解説する.
 金属工学,材料科学の分野では,構造用材料および機能性材料を設計するために必要な相平衡の情報を「物質と材料の地図」としての役割を果たす状態図から読み取る能力が求められる。金属材料の機械的特性や機能特性は金属組織によって制御できるため,その形成過程ならびに温度と時間に依存した経時変化を相平衡の視点から理解するために状態図の知識を身につけることが必要である.金属組織は状態図で示される反応経路に従い凝固,析出反応,相変態などを経て形成される.状態図の平衡論に速度論を合わせて考慮しながら学ぶことによって,材料の機能と特性に大きく影響を及ぼす格子欠陥や異相界面を含む金属組織の制御法を理解して実践することが可能になる.

到達目標

 本講義を履修することによって次の能力を修得する.
1)二元系状態図のギブズ相律を理解し,相領域と相平衡に関する情報を正しく読み取ることができる.
2)溶解度線の意味を理解して固溶と相分離が説明でき,てこの原理を用いて共存する二相の体積分率の説明ができる.
3)二元系の不変系反応である共晶(共析)反応および包晶(包析)反応を理解し,これら反応による組織形成過程と形成される組織形態の特徴を説明できる.
4)二元系状態図の熱力学的な背景として,ギブズエネルギーと組成および温度の関係を理解でき,化学ポテンシャルの説明ができる.
5)二元系で異相が平衡する条件をギブズエネルギーと組成の関係から化学ポテンシャルを用いて説明でき,共通接線則の熱力学的な意味を説明できる.
6)二元系から三元系へ状態図を拡張する概念を理解して説明できる.
7)代表的な実用合金について組織制御の例をいくつか挙げて,使われている材料設計手法の説明が状態図を用いてできる.

キーワード

合金状態図,相平衡,ギブズ相律,相変態,不変系反応,化学ポテンシャル,組織制御,材料設計

学生が身につける力(ディグリー・ポリシー)

専門力 教養力 コミュニケーション力 展開力(探究力又は設定力) 展開力(実践力又は解決力)

授業の進め方

(注意)基本的に対面で行う予定ですが,今年度の進め方はまだ未定です。
(通常)毎回の講義開始時に演習課題を配布して,内容の説明を進めるなかでグループ(班分けして)ディスカッションをしてもらいます.講義全体を前後半に分けて,それぞれの小括として理解度確認テストを実施し,復習と補足を行います.各回の授業内容をよく読み,講義の予習と復習を行って下さい.

授業計画・課題

  授業計画 課題
第1回 イントロダクション:状態図の必要性-金属組織と機能特性 構造用材料と機能性材料の設計に状態図が必要であることを理解する.
第2回 状態図の読み方(1)物質の三態,同素変態,水の状態図,ギブズ相律 水の状態図を用いて物質三態の復習し,ギブズ相律の式を導出し,説明できる.
第3回 状態図の読み方(2)固溶体,中間相,単相および二相域 二元系状態図において,固溶体相,中間相,単相および二相域を明示できる.
第4回 状態図の読み方(3)全率固溶,溶解度曲線,てこの法則 全率固溶型状態図と溶解度曲線,固溶と相分離を理解し,てこの法則を用いて体積分率を説明できる.
第5回 状態図の読み方(4)不変系反応と凝固組織Ⅰ-共晶反応・共析反応 共晶反応による凝固組織と共析反応による組織形成の過程を理解して説明できる.
第6回 状態図の読み方(5)不変系反応と凝固組織Ⅱ-包晶反応・偏晶反応 包晶反応による凝固組織と包析反応による組織形成の過程を理解して説明できる.
第7回 状態図の読み方-理解度確認テスト1,復習,補足 二元系状態図の読み方に関する理解度を確認し、理解が不十分なところを復習する.
第8回 状態図と実用合金の組織制御-鉄鋼材料- 鉄鋼材料のFe-Fe3C系状態図に基づく多彩な組織制御について,利用する相変態や熱処理の違いによって整理する.
第9回 状態図と実用合金の組織制御-アルミニウム合金,チタン合金- アルミニウム合金の時効析出による組織変化と強化機構,チタン合金に特徴的な物性と二相組織制御について整理する.
第10回 状態図の成り立ち(1)ギブズエネルギーと組成・温度の関係 二元系におけるギブズエネルギーと組成および温度の関係を理解し,状態図との対応関係を説明できる.
第11回 状態図の成り立ち(2)ギブズエネルギーと化学ポテンシャル ギブズエネルギーの部分モル量としての化学ポテンシャルをギブズエネルギー-組成曲線から導出できるように理解する.
第12回 状態図の成り立ち(3)ギブズエネルギーと相平衡条件・共通接線則 ギブズエネルギー-組成曲線において,異相が平衡する条件を共通接線則を用いて説明でき,状態図との対応づけができるように理解する.
第13回 状態図の成り立ち(4)三元系状態図-読み方,三相平衡,不変系反応 状態図を二元系から三元系へ拡張する際のギブズエネルギーと相律の考え方の説明ができる.
第14回 状態図の成り立ち-理解度確認テスト2,復習,補足 二元系状態図の成り立ちに関する理解度を確認し,理解が不十分なところを復習する.

授業時間外学修(予習・復習等)

学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。

教科書

配布プリント

参考書、講義資料等

西澤泰二・田村今男・須藤一 共著 『金属組織学』 丸善,ISBN-13: 978-4621082430
西澤泰二 著 『ミクロ組織の熱力学』 日本金属学会,ISBN-13: 978-4889030280
三浦憲司・福富洋志・小野寺秀博 共著 『合金状態図』 オーム社,ISBN-13: 978-4274087448
渡辺義見・三浦博己・三浦誠司・渡邊千尋 共著『図でよくわかる機械材料学』コロナ社,ISBN-13: 978-4339046052
など,合金状態図とそれに関わる組織形成と熱力学に関わる教科書なら結構です.

成績評価の基準及び方法

(本年度)本年度の出席や演習のやり方が未定なので,多少変更の可能性があります.以下は今までの成績評価方法です.
(通常) 二元系状態図の読み方,不変系反応に伴う組織形成,ギブズエネルギーに基づく相平衡の条件,アルミ合金と鉄鋼材料における組織制御と状態図の関連について理解度を評価する.評価点数は,演習課題(24%),2回のレポート(10%),2回の確認テスト(28%)、期末テスト(38%)のそれぞれを合計し成績とする.単位取得には,期末テストと両確認テストの受講,両レポートの提出は必須であり,また,全体の2/3以上の演習への出席も必要とする.それらが不足する場合は合計点によらず不可とする.

関連する科目

  • 材料熱力学
  • 結晶学
  • 結晶成長と組織形成
  • 鉄鋼材料学第一
  • 鉄鋼材料学第二
  • 非鉄金属材料学

履修の条件(知識・技能・履修済科目等)

履修希望者は、9/30正午までに登録してください.メールアドレス:hosoda.h.aa@m.titech.ac.jp その際には、メール題目を「金属の状態図講義に関する問い合わせ」とし、「氏名・学籍番号・必ずすぐに連絡のつく返信アドレス」を明記してください。返信します。受講方式は,新型コロナの状況により変化します.現状は未定です.

連絡先(メール、電話番号)    ※”[at]”を”@”(半角)に変換してください。

細田秀樹 hosoda.h.aa[at]m.titech.ac.jp, 045-924-5057
木村好里 kimura.y.ac[at]m.titech.ac.jp, 045-924-5157

オフィスアワー

講義前後に直接か、メール等で教員の都合を問い合わせてください.(オンライン相談も受け付ける予定です)

その他

(本年度)講義形式の変更がありえます.
(通常)本講義では講義期間中で2-3回程度の班分けを行い,班ごとに演習やその発表を行いますため、履修希望者は必ず第1回目の講義に出席してください.また,1回目は出席したが以後は履修しない場合は,第1回目講義後のできるだけ早々に(遅くとも次の日の正午までに)細田までメール等で連絡をください.

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