2021年度 金属物理化学   Physical Chemistry in Metals

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開講元
材料系
担当教員名
須佐 匡裕  林 幸  河村 憲一  上田 光敏  小林 能直 
授業形態
講義     
メディア利用科目
曜日・時限(講義室)
月3-4(H115)  木3-4(H115)  
クラス
-
科目コード
MAT.M302
単位数
2
開講年度
2021年度
開講クォーター
1Q
シラバス更新日
2021年3月19日
講義資料更新日
-
使用言語
日本語
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講義の概要とねらい

 物理化学は,材料の製造及び安定性を理解するために必須の学問体系である。本授業では,これまで学んできた熱力学および速度論を再確認するとともに,実際の材料に応用するために必要な事項を加え,実際の材料に適用する手法を学ぶ。

本講義では,金属物理化学を構成する熱力学と速度論について並行して解説していく。熱力学については、第一~第三法則の復習からはじめ、ギブズエネルギー、化学ポテンシャルなどの熱力学関数について解説する。続いて,ギブズの相律を状態図や化学反応を含む系に適用して、系を平衡させるために必要な示強変数の考え方を解説する。さらに気体成分の活量、凝縮相成分の活量と相互作用係数について解説し、化学反応を含む系についての化学平衡計算手法の基礎を提供する。その応用として最後にエリンガム図に言及する。一方、速度論については、鉄鋼製錬と速度論の関係及び物質・運動量・エネルギーの流れの概念を概説したのち、拡散流と反応速度についての講義を行う。まず、フィックの第一・第二法則を解説し、定常及び非定常状態における拡散流束を定量的に取り扱えるようにする。次に、反応速度論、特に鉄鋼製錬において重要な不均一反応について解説する。特に、律速段階や素過程について未反応核モデルを用いて説明する。
 「金属物理化学」は、材料系の多くの講義の基礎を成すとともに,高温材料やプロセスの研究・開発を進める上でも重要な科目である。ある材料を製造しようとしたときに、二つの観点から検討する必要がある。すなわち、「熱力学的に」その材料が自発的に生成する条件を検討すること、また「速度論的に」それがどの程度の速度で生成するのかを検討することである。熱力学的に「起こらない」と判定されたことは決して起こらない。熱力学や速度論の考え方を将来自分の学士論文研究にも適用してみてほしい。 

到達目標

【到達目標】材料熱力学(M)で学んだ熱力学,化学反応動力学(M)で学んだ速度論を基礎とし,これらの学問を金属の高温プロセスや金属の高温安定性に関わる問題に適用できるまで理解し,応用できるようになることを目標とする。
【テーマ】反応や物質移動の駆動力となるGibbsエネルギーを理解し,Gibbsエネルギーが引き起こす様々な現象を解析する手法を身につける。 

本講義を履修することによって次の能力を修得する。
1)内部エネルギー変化、エンタルピー変化、エントロピー変化、ギブズエネルギー変化の計算ができる。
2)ギブズ相律を用いて、相平衡や化学平衡を達成するために固定すべき示強変数を考察することができる。
3)活量の概念を説明でき、ギブズエネルギー変化や平衡定数を用いて化学平衡計算ができる。
4)エリンガム図の作成方法を理解するとともに,それを使うことができる。
5)物質、運動量、エネルギーの流れの概念が理解できる。
6)定常・非定常状態における拡散流束を定量的に取り扱えるようになる。
7)素過程や律速段階の概念を理解し、不均一反応速度を定量的に取り扱えるようになる。

キーワード

熱力学第一・第二・第三法則、内部エネルギー、エンタルピー、エントロピー,ギブズエネルギー、化学ポテンシャル、化学平衡、ギブズの相律、活量、標準状態、相互作用係数、エリンガム図、流束、定常、非定常、フィックの法則、拡散係数、反応速度、アレニウスの式,活性化エネルギー,素過程、律速段階、不均一反応

学生が身につける力(ディグリー・ポリシー)

専門力 教養力 コミュニケーション力 展開力(探究力又は設定力) 展開力(実践力又は解決力)
多くの演習を行い、科学哲学としてだけではなく、使える道具としての熱力学や速度論を学習する。

授業の進め方

毎回の講義の前半で,復習を兼ねて前回の演習問題の解答を解説します。講義の後半で,その日の教授内容に関する演習問題にもたくさん取り組んでもらいます。各回の学習目標をよく読み,課題を予習・復習で行って下さい。

授業計画・課題

  授業計画 課題
第1回 熱力学第一法則とエンタルピー -内部エネルギー変化とエンタルピー変化の違い 内部エネルギー変化、エンタルピー変化の計算方法
第2回 流れとは何か -流束の定義(物質、運動量、エネルギー移動)、フィックの第一法則 鉄鋼製錬と速度論の関係を学ぶ、定常状態における拡散流束の計算方法
第3回 熱力学第二・第三法則とエントロピー -宇宙、系および周囲のエントロピー変化 系の膨張や温度変化にともなうエントロピー変化の計算
第4回 拡散係数の定義と物質収支式 -カーケンダール効果、Darkenの解析、フィックの第二法則 物質収支式の一般式の導出方法
第5回 ギブスエネルギーと化学平衡 -ギブズエネルギーの定義およびその変化の意味 反応のギブスエネルギー変化の計算方法
第6回 定常状態の拡散 -気・液体の拡散、化学反応をともなった拡散 定常状態における気・液体の拡散及び化学反応をともなう拡散の計算方法
第7回 化学ポテンシャルとギブズの相律  -成分、相および自由度の考え方 自由度と状態図、相率の化学反応を含む系への適用
第8回 非定常状態の拡散 -フィックの第二法則の解析解、相互拡散係数の測定法 非定常状態の拡散の計算方法
第9回 活量の概念 -ラウール基準とヘンリー基準の活量 蒸気圧測定からの活量の決定、液相を含む系についての平衡計算
第10回 Boltzmann-Matanoの解析・上り坂拡散 -拡散係数が濃度の関数である場合 Boltzmann-Matanoの解析を用いた 拡散係数の計算方法
第11回 活量(1mass%ヘンリー基準)と相互作用係数 -ラウール基準の標準状態との化学ポテンシャル差 微量溶質を含む溶液についての化学平衡計算
第12回 化学反応速度論 -反応速度定数と反応速度式 一次反応・二次反応・逐次反応・界面反応等反応速度の計算方法
第13回 エリンガム図 -金属の高温酸化の熱力学 エリンガム図の作成方法と使用方法
第14回 不均一反応の解析 -律速段階と未反応核モデル,スラグ-メタル反応,ガスーメタル反応 トポケミカル反応の速度の計算方法

授業時間外学修(予習・復習等)

学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。

教科書

講義資料を配布する。

参考書、講義資料等

アトキンス 『物理化学第8版上・下』東京化学同人,ISBN: 978-4-8079-0695-6, ISBN: 978-4-8079-0696-3
日本金属学会 『金属物理化学』丸善, ISBN: 4-88903-011-5

成績評価の基準及び方法

熱力学の各法則、各熱力学関数、ギブズの相律、活量、エリンガム図、拡散流束、化学反応速度の考え方,計算法及びそれらの応用について,その理解度を評価 配点は,中間試験・期末試験(70%),演習(30%)

関連する科目

  • MAT.A204 : 材料熱力学
  • MAT.M203 : 化学反応動力学(M)
  • MAT.M202 : 統計力学(M)
  • MAT.M207 : 金属の状態図と相安定
  • MAT.M304 : 結晶成長と組織形成

履修の条件(知識・技能・履修済科目等)

材料熱力学(MAT.A204),化学反応動力学(MAT.M203)を履修していること,または同等の知識があること。

連絡先(メール、電話番号)    ※”[at]”を”@”(半角)に変換してください。

須佐匡裕 susa.m.aa[at]m.titech.ac.jp
林 幸 hayashi[at]mtl.titech.ac.jp

オフィスアワー

(須佐) メールで事前予約すること。
(林)  メールで事前予約すること。

その他

年度によって、奇数回の講義と偶数回の講義の順序が変わることがあります。最初の講義で案内しますので注意してください。

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