本講義は材料量子力学ならびに量子化学Bと対の授業である。はじめに初等量子力学を復習してから量子力学の定式化を学ぶ。すなわち、演算子、古典物理量と固有値、交換関係などの量子論の原則を理解する。その上で、量子化学における近似解法の必要性を学び、摂動法、変分原理などの計算方法を習得する。量子化学への応用法の具体を理解するためには、量子化学Bの履修が推奨される。
【到達目標】 最先端の材料科学を習得するためには、原子・分子の世界を支配する量子力学の体系を学び、これを材料や化学の諸問題に適用して、材料がどのような構造や性質を持つに至るかを理解する必要がある。本講義では、量子化学における近似解法を習得して、具体的な応用問題に対する展開的理解力を得ることを目標とする。
【テーマ】 対象となる系が複雑になると、量子力学は厳密解を得ることができない。このため種々の近似法を用いて問題の解決にあたることになる。本講義では、量子力学の定式化を踏まえた上で、摂動法や変分原理などの近似法の基礎を理解し、量子化学への応用に備える。
シュレディンガー方程式、調和振動子、水素様原子、N粒子系、古典物理量と固有値、ブラケット表示、交換関係、不確定性、古典物理量の時間変化、保存則、摂動、変分原理、リッツの変分法
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
前もってテキストを配布しますので、各回の授業内容の部分をよく読み、課題を予習・復習で行ってください。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 初等量子力学の復習(1)(シュレディンガー方程式) | 授業内容に即した課題を与える |
第2回 | 初等量子力学の復習(2)(並進と振動の基本問題) | |
第3回 | 初等量子力学の復習(3)(回転と水素様原子) | |
第4回 | 量子力学の定式化(1)(系の状態(N粒子系)、古典物理量と固有値、ブラケット表示) | |
第5回 | 量子力学の定式化(2)(交換関係と不確定性、古典物理量の時間変化と保存則) | |
第6回 | 量子化学における近似解法(1)(摂動論:縮重のないとき) | |
第7回 | 量子化学における近似解法(2)(摂動論:縮重のあるとき) | |
第8回 | 量子化学における近似解法(3)(変分原理、リッツの変分法) |
講義資料は前もって配布する
原田義也著「量子化学」(上) 裳華房、 大岩正芳著「化学者のための数学十講」 化学同人、 P. アトキンス著 「物理化学」(上、下) 東京化学同人
宿題などの提出物:20%、期末試験:80%を目安に、授業に対する取り組みも加味して総合的に判定する。
必須ではないが、1年次に基礎物理学系課目ならびに線形代数、微分方程式に親しんでいると理解しやすい。