金属材料の加工や強度について考えるためには,ともにテンソルであるところの応力とひずみについての理解が必要になります。本講義前半では,応力とひずみの基礎と弾性的な変形における応力とひずみのあいだの関係,フック(Hooke)の法則についての講述を行います。また後半では,金属材料の塑性変形をマクロ及びミクロの観点から捉え,特に,金属の塑性変形と結晶欠陥(転位)との関係を理解し,金属材料の強化方法について講述します。
【到達目標】 金属材料をはじめとする固体の変形を記述するために必要な応力とひずみについて,それらの基礎的な事項を理解することを本講義の前半の到達目標とします。また,後半では,実際に金属材料の塑性変形がどのように生じるのかを原子レベルから理解することを目標とします。
【テーマ】 応力とひずみは成分を持つ量であるが,それらがベクトルではなく(2階の)テンソルであること理解することは固体の変形を記述するために不可欠であり,本講義の前半のテーマと言える.後半では,塑性変形が結晶欠陥の運動と密接に結びついていることを理解した上で,金属材料の変形挙動,強化機構をテーマとします。
応力,ひずみ,テンソル,座標変換,変位勾配,弾性変形,塑性変形,フックの法則,ヤング率,ポアソン比,体積弾性率,剛性率,弾性係数,転位,すべり変形,シュミットの法則,臨界分解せん断応力,降伏応力,耐力,引張強さ,破断ひずみ,加工硬化,強化機構,固溶強化,析出強化,分散強化,結晶粒界,ホール・ペッチ則
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
講義のあいだに演習問題を出題します。講義,各回の学習目標をよく読み,予習,復習そして宿題を確実に行って下さい。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 応力とひずみを学ぶ意義と金属の変形について | 金属の変形と破壊.ヤング率,降伏応力,引張強さといった応力−ひずみ曲線を特徴つける値. |
第2回 | 最も単純な場合での応力とひずみ | 円柱状試験片の引張変形.荷重−伸び曲線と応力−ひずみ曲線. |
第3回 | ベクトルである面力とテンソルである応力の定義 | 面力と応力についての理解 |
第4回 | 応力の性質 | 応力成分の対称性.面力と応力の関係.添え字を持つ変数についての総和規則. |
第5回 | 応力成分の座標変換 | ベクトル成分の座標変換.テンソル成分の座標変換 |
第6回 | 変位勾配とひずみの定義 | 変位勾配とひずみの概念についての理解 |
第7回 | 弾性係数とフック(Hooke)の法則 | 4階のテンソルとしての弾性係数.等方弾性体における弾性変形. |
第8回 | 理解度確認総合演習 | 応力とひずみの理解度とその応用力について評価 |
第9回 | 塑性変形(降伏現象) | 降伏と転位の運動についての理解 |
第10回 | 理想強度と結晶欠陥 | 転位の有無による結晶強度の違い |
第11回 | 結晶塑性と転位のすべり | 転位のすべり運動についての理解 |
第12回 | 単結晶の変形(変形の幾何学) | シュミットの法則と臨界分解せん断応力についての理解 |
第13回 | 多結晶の変形(結晶粒界の役割) | ホール・ペッチ則についての理解 |
第14回 | 変形機構と強化機構 | 加工硬化,固溶強化,析出強化,分散強化についての理解 |
第15回 | 理解度確認総合演習 | 金属材料の塑性変形,結晶欠陥,強化方法の理解度とその応用力について評価 |
特になし(Hand-out 資料)
W. D. Callister, Jr: Materials Science and Engineering An Introduction, John Wiley and Sons, Inc.
金属の塑性、幸田成康監修、丸善
A. Kelly and G. W. Groves: Crystallography and Crystal Defects, Longman Group Ltd., London
応力とひずみについての考え方と計算手法,そして単結晶と多結晶の変形(強度とひずみ)に関する理解度を評価する。中間試験・期末試験(80%),演習(20%)で成績を評価する。
特になし
特になし