構造用材料が実社会で使われるためには,その強度信頼性を確保することは必須です。すなわち,一定の荷重や変位を与えたときに,その材料がどの程度変形するのか,あるいは,破壊しないかどうかを予め予測し,長期間の使用に対して問題なく使えることを保証するということです.このためには,金属,ポリマー,セラミックスとその複合材料の変形や破壊に共通する現象を一般化して理解するとともに,各材料で個別に起こる特殊な現象を,そのメカニズムから理解することが必要です.この総合と分析をいう相反する複眼的な見方で考えることができるようになるための各種の材料強度学上のテーマを,わかりやすい順番で,この講義では解説します.
【到達目標】 本講義を履修することによって,金属,ポリマー,セラミックスとその複合材料における変形と破壊現象について一般化して考えることができるようになることを到達目標とします。この一般化に加えて,個々の材料で起こる特殊な現象が発生する力学的条件についても理解を深め,また,それを数学的に表現する方法についても学習し,これらの考え方や手法を材料工学で応用できるようになることも目標とします。
【テーマ】 本講義では,実社会で使われている各種の構造用材料の力学的応答を理解するための転位論,破壊力学,破壊統計(以上,安田),複合材料とその力学,複合材料の作製方法(以上,矢野),粘弾性論,高温変形,高温破壊,焼結の力学の考え方(以上,若井)を理解し,その材料工学に応用するための基礎を築くことを目的とします。さらに,その中で,結晶学,状態図,材料プロセスについて復習して,他の科目との関連性についても理解を深めます。
弾塑性,真ひずみ,転位,金属概論,アルミナ,ジルコニア,窒化ケイ素,炭化ケイ素,理論強度,応力拡大係数,破壊靱性,ワイブル分布(以上,安田),複合材料の分類と応用,粒子分散複合材料,ナノ粒子分散複合材料,繊維強化複合材料,複合材料の合成方法(以上,矢野),粘弾性,ポリマー概論.高温変形,クリープ,超塑性,高温破壊,焼結力学(以上,若井)
✔ 専門力 | 教養力 | ✔ コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
受講生は講義の前に講義資料をダウンロードして,事前に予習をしてくること
担当教員,各回の講義の重要なポイントを解説し,演習問題を学生に提示する
学生は,講義中にその演習問題を解いて提出する
担当教員は,演習問題の簡単な解説を加える.
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 金属の応力/ひずみ線図,弾塑性体,真ひずみ (安田) | 金属の応力/ひずみ曲線について解説する |
第2回 | 金属転位論,刃状転位,らせん転位,バーガーズベクトル,すべり運動と塑性 (安田) | 金属転位論について解説する |
第3回 | 構造用セラミックスのプロセシング,アルミナ,ジルコニア,窒化ケイ素,炭化ケイ素,複合材料 (安田) | 構造用セラミックスの概論を解説する |
第4回 | 理論強度,亀裂先端の応力集中,応力拡大係数,破壊靱性 (安田) | 破壊力学について解説する |
第5回 | 破壊統計,潜在欠陥,最弱リンクモデル,ワイブル分布,ワイブルプロット,最尤法 (安田) | 破壊統計について解説する |
第6回 | 複合材料の分類と適用例 (若井) | 複合材料の分類について解説する |
第7回 | セラミックス系複合材料(1)粒子分散複合材料 (若井) | 粒子分散複合材料について解説する |
第8回 | セラミックス系複合材料(2)ナノ粒子分散複合材料 (若井) | ナノ粒子分散複合材料について解説する |
第9回 | セラミックス系複合材料(3)繊維強化複合材料 (若井) | 繊維強化複合材料について解説する |
第10回 | 各種複合材料の合成方法 (若井) | 複合材料の合成方法について解説する |
第11回 | 粘弾性、線形粘弾性の構成方程式、応力緩和、複素弾性率、複素コンプライアンス (若井) | 粘弾性について解説する |
第12回 | 高分子材料の構造、粘弾性緩和機構、非ニュートン流体 (若井) | ポリマーの概論について解説する |
第13回 | 高温変形、拡散クリープ、転位クリープ、溶解-析出クリープ、変形機構図 (若井) | 高温変形について解説する |
第14回 | 高温破壊、破壊機構図、粒界クリープ破壊、クリープき裂進展破壊、超塑性 (若井) | 高温破壊について解説する |
第15回 | 焼結の連続体力学、ミクロスケール・マルチスケールの焼結力学 (若井) | 焼結力学について解説する |
特になし
田中啓介著 機械工学基礎コース 『材料強度学』 丸善 (2008)
構造材料の変形と破壊の考え方,室温から高温までの強度信頼性解析法及びそれらの応用に関する理解度を評価する。各回の演習(100%)で成績を評価する。
必須ではないが,関連する科目を履修していることが望ましい
kyasuda [at]ceram.titech.ac.jp (第1回から第5回講義)
wakai.f.aa[at]m.titech.ac.jp (第6回から第15回講義)
事前にe-mailで日程の調整をしてください