固体物性の起因を理解するうえで、結晶とフォノンの知識は必須です。対称性がつくりだす結晶構造の概念は,多数の原子からできている固体を簡潔に表現させます。この結晶の中の規則的な原子の配列から格子振動といった波とその量子化されたフォノンを理解することは,現代社会を支える多種多様な材料開発につながっています。漠然とした固体といった概念から,原子・分子レベルの構造をとらえ,それを固体物性の理解にまで到達させます。そのための具体的な講義項目として,結晶,格子,対称性,点群,空間群,格子振動,フォノン,比熱,熱伝導率などがあげられます。
【到達目標】 本講義を履修することで,幾何結晶学と結晶の対称性に関する共通の概念から格子振動とその量子化から生じる固体物性を考えられるようになることを到達目標とします。規則正しく配列した原子の構造から固体物性の基礎となる格子振動を正しく理解でき,物質の物性予測に至るまで応用できるようになることを目標とします。
【テーマ】本講義では,結晶構造を決定する対称性・点群・空間群を理解し,格子振動の波と第1ブリュアンゾーン,フォノン,比熱,熱伝導率などの固体物性の基礎を身につけることを目的とします。
結晶,格子,対称性,点群,空間群,格子振動,フォノン,比熱,熱伝導率
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
板書と必要な資料を配布して,講義を進めていきます。また,前回の講義内容の理解を深めるため,必要な演習問題に取り組んでもらうとともに,その解答を配布・解説します。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 結晶とは:結晶格子・単位格子・原子座標の関係 | 高校で学習した結晶の理解の復習から,原子配列の導入 |
第2回 | 点格子とブラベ格子 | 13のブラべ格子の関係 |
第3回 | 結晶面・指数・方向と実格子 | 結晶を示す規則の説明 |
第4回 | 逆格子と実格子との関係 | 逆格子の概念の理解 |
第5回 | 対称操作と対称要素 | 対称操作の種類 |
第6回 | ステレオ投影図と点群 | 32の点群の表記法 |
第7回 | 空間群と消滅則 | 空間群と回折条件の関係 |
第8回 | 空間群と点群と物性 | 結晶構造と材料物性との関係 |
第9回 | 単原子格子の振動 | 単原子の熱運動による格子振動とその量子化 |
第10回 | 2原子格子の振動 | 2原子の熱運動による格子振動とその量子化 |
第11回 | 格子振動の量子化,フォノンの運動量 | 現実の結晶の格子振動とフォノン運動量 |
第12回 | 格子比熱・アインシュタイン・モデル | 古典モデルとアインシュタイン・モデルによる格子比熱の導出 |
第13回 | 格子比熱:デバイモデル | デバイモデルによる格子比熱の導出 |
第14回 | 結晶における非調和相互作用(熱膨張) | 非調和振動子とフォノンの散乱 |
第15回 | 熱伝導率 | 熱伝導率と熱抵抗の関係 |
特になし
今野豊彦著 『物質の対称性と群論』 共立出版,寺内暉・中村輝太郎訳(G・バーン著) 『結晶としての固体』 東海大学出版
結晶の対称性・点群・空間群と格子振動・フォノン・比熱・熱伝導の考え方・その応用に関する理解度を評価する。期末試験(80%)と演習等(20%)で成績を評価する。
特に履修の条件は設けない。