【概要】
経営工学系では、「利用者の観点から、ICTの有効利活用ができる人材の育成」、より具体的には、企業エンジニアリングの観点から、ビジネスを支援するためのICT利活用を構想できる人材を育成してきた。情報通信技術(ICT-Information Communication Technology)について、利用者の観点から研究する学問分野を「情報システム学」と呼ぶが、この授業の目的は、ICTの観点から、その理論的基礎について学ぶことである。
本講義では、はじめに、「システム」というものの見方について説明する。次に、コンピュータの原理について説明し、仮想的な計算機を用いたシミュレーションを行う。、最後に、システム理論の基礎として、状態表現や機能的構成表現について学び、最後に企業情報システムの基礎となるエンタープライズオントロジーについて学ぶ。
【ねらい】
“システム”として対象を見るということは,二つの意味を持っている。一つは,構成要素の間の相互作用によって生じる創発性に注目するということであり,もう一つは,現象の背後にある共通構造に注目するということである。人間活動を主な構成要素とするシステムにおいて,複雑な相互作用によってどのような創発性が生ずるかについては,利害関係者の立場によって,観点が異なってくる。すなわち,「同じものに対して異なる見方を与える」ことが重要となる。一方,現象の背後にある構造に注目するということは,「異なるものに対する共通した見方を与える」ことを意味している。この授業では、このような2つの見方を身につける。
還元論ではなく全体論的で、現象に対する法則ではなくその背後にある構造に注目するという、「システム」というものの見方ができる。コンピュータ内でどのようにデータ処理が行われているかについて理解している。入出力システムの様々な内部表現を理解している。
システム,モデル、シミュレーション、情報システム、創発性,構造同型性,
専門力 | 教養力 | ✔ コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
一方的な講義ではなく、頻繁に問いかけを行ったり、チームごとの演習を混ぜるなど、双方向の授業を行う。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | システム、モデル、シミュレーション | 第2回の前までにAnylogicのPLE(Personal Learning Edition)をダウンロードしておくこと |
第2回 | 創発性 | |
第3回 | 構造同型性 | |
第4回 | 論理思考 | |
第5回 | 議論の構造 | |
第6回 | コンピュータの原理 | 第7回の前までにCASL2 Visible Inside 5.5をダウンロードしておくこと |
第7回 | データの表現 | |
第8回 | 命令の表現 | |
第9回 | プログラミングの基礎(1) | |
第10回 | プログラミングの基礎(2) | |
第11回 | 状態表現―連続系と離散系― | |
第12回 | アクセプタ表現と形式言語 | |
第13回 | 帰納的構成表現とチューリング機械 | |
第14回 | 離散事象システム | |
第15回 | 企業情報システムとEnterprise Engineering |
参考書にリストアップしている文献等を適宜用いる。
[1]L.フォン・ベルタランフィ著、長野敬他訳, 『一般システム理論―その基礎・発展・応用』, みすず書房, 1973.
[2] N.ウィーナー著, 池原止戈夫他訳, 『サイバネティックス――動物と機械における制御と通信』, 岩波文庫, 2011.
[3] W.R.Ashby, An Introduction to Cybernetics, Filiquarian Legacy Publishing, 2012.
[4] J.ノルト, D.ロハティン著, 加地大介訳, 『現代論理学(Ⅰ)』, オーム社, 1995.
[5] 野矢茂樹, 『新版 論理トレーニング (哲学教科書シリーズ)』, 産業図書, 2006.
[6] 高原康彦,飯島淳一,『システム理論』,共立出版社、1990.
[7] 広瀬 健、『帰納的関数』, 共立出版社、1989.
[8] J.ホップクロフト他著、野崎昭弘他訳、『オートマトン 言語理論 計算論〈1〉』, サイエンス社, 2003.
[9] 飯島淳一, 『DEMO-企業活動の骨格を可視化するモデリング方法論』, NTT出版, 2014.
講義終了前行う小テスト 40%
期末試験 60%
集合論の基礎知識(集合,集合の演算,関係,関数など)