この講義では,複数の不可分財(離散財)を扱うオークションについて議論する.そのようなオークションにおいて,財の最適な配分および均衡価格は繰り返しオークションと呼ばれるアルゴリズム(プロトコル)によって求められることが知られている.本講義では,これまでに提案されている幾つかの繰り返しオークションを紹介し,離散最適化の観点から理解する.とくに,このオークションにおいて重要な役割を果たす,効用関数の粗代替性について説明し,離散凹性との関係を示す.
本講義では、離散最適化の理論に関する数学的な研究成果を用いることで,経済学におけるオークションへ新しい視点を与えられる,という面白さを味わってもらうことを目指す.
講義の終わりまでに,以下のことができるようになる.
(1)不可分財に関するオークションモデルを説明できるようになる.
(2)粗代替性の概念とその性質を理解できる.
(3)繰り返しオークションがどのようにして均衡価格を求めるのか,説明できるようになる.
(4)繰り返しオークションと最適化アルゴリズムの関係を理解できる.
オークション,離散最適化,均衡解,アルゴリズム
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
毎回の授業では,前半では講義を行い,後半ではその講義内容に関連した演習を行う.
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 講義の概要 | 各授業内で提示します. |
第2回 | オークションのモデルと粗代替性 | |
第3回 | 粗代替性と離散凹性 | |
第4回 | M凹関数の最大化 | |
第5回 | M凸性とL凸性の関係 | |
第6回 | L凸関数の最小化 | |
第7回 | 離散凸関数の双対定理 | |
第8回 | 繰り返しオークションとリアプノフ関数 | |
第9回 | リアプノフ関数とL凸関数 | |
第10回 | L凸関数最小化のアルゴリズムの解析 | |
第11回 | L凸関数最小化のアルゴリズムの応用(1) | |
第12回 | L凸関数最小化のアルゴリズムの応用(2) | |
第13回 | 単一需要オークションへの応用 (1) | |
第14回 | 単一需要オークションへの応用 (2) | |
第15回 | 講義のまとめ |
とくになし
参考論文:
K. Murota, A. Shioura, and Z. Yang: Time bounds for iterative auctions: a unified approach by discrete convex analysis, Technical Report METR 2014-39, University of Tokyo, December 2014.
参考図書:
室田一雄: 離散凸解析, 共立出版, 2001
室田一雄: 離散凸解析の考えかた---最適化における離散と連続の数理, 共立出版, 2007
K. Murota: Discrete Convex Analysis, SIAM, 2003
室田一雄, 塩浦昭義: 離散凸解析と最適化アルゴリズム, 朝倉書店, 2013
田村明久: 離散凸解析とゲーム理論, 朝倉書店, 2009
レポートと試験により評価
履修条件は特に設けないが,関連する科目を履修していることが望ましい.
shioura.a.aa[at]m.titech.ac.jp
いつでも可.メールで事前連絡の上,訪問することが望ましい.