超少子高齢化・成熟化社会を迎える21世紀の日本社会において、年金・医療・介護等の社会保障各制度は、長い人生の間に生起するリスク対応策として不可欠な制度である。これら各制度における諸問題を解決するための正しい思考法について,関連する国家の財政制度、国債、国際金融、リスク管理などに視野を拡げつつ、政界、官界、労働界、マスコミ等を経験したトップクラスの専門家からなる講師陣が講義を行う。第2では、第1と異なり、理論的・実証的・数理的な視点から、如何にすれば安心して暮らせる社会が構築できるのかについて、年金・医療・介護などの個別政策の重要問題を重点的に取り上げた講義を中心として行う。 昨今は、年金や医療制度の危機を一部のマスメディアや経済学者等が煽っているが、事実無根かつ表層的な見方のため、真実を正しく伝えていない。本講義では、法律、経済、金融、数理、リスク管理などの幅広い専門領域を基盤としつつ、本質的な内容を講義し、受講生がこれらの諸問題について本質的な理解を深め正しい思考法を習得することにより日本を世界に発信していく際の基本的教養を身に付けさせる。また、講義の中から受講生にテーマを選ばせ、その課題と解決策をレポートすることにより課題設定力を養成することをねらいとする。
本講義を履修することによって次の能力を修得する。
1)公的年金制度の本質、誤った見解の誤り、平成26年財政検証の内容と今後の課題と解決策を説明できる。
2)医療・介護の2025年問題と解決策である地域包括ケアの内容を説明できる。
3)医療制度改革と改革への医療ビッグデータの活用方策について説明できる。
4)財政赤字が引き起こす国債・国際金融への影響と財政赤字解決策を説明できる。
5)海外と日本の社会保障政策の潮流について説明できる。
6)レポートを作成することにより課題を見出す能力と解決するために必要な道筋を立てる能力を身につける。
公的年金、医療制度改革、介護保険、地域包括ケア、国家財政と国債・国際金融、医療ビッグデータ、公的年金のリスク管理
専門力 | ✔ 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
14回の講義を通じて、毎回の講義のテーマを理解できるようにスライドの冒頭に本日のテーマを示す、レジュメを作成するなどの工夫をできるだけ行います。原則として講義終了前の5分間程度の時間にアンケートへの記載を求めます。講義に対する理解度や満足度などを表記したり、毎回の課題に対するコメントを記述することにより、講義に対する理解を深めるようにして下さい。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | ガイダンス/公的年金制度の本質(畑満) | 公的年金制度の本質の理解 |
第2回 | 公的年金制度に対する誤解を解く(畑満) | 税方式化、積立方式化等の見解が誤っていることへの理解 |
第3回 | メディアによる年金改革提言合戦の結末(梶本章) | 年金改革提言合戦のカラクリの理解 |
第4回 | メディアから見た医療・介護の2025年問題(梶本章) | 医療・介護の2025年問題への理解 |
第5回 | 地域づくりと地域包括ケア(畑満、ゲストスピーカー(GS)) | 地域づくりと地域包括ケアの現場への認識 |
第6回 | 医療制度改革のあり方(中村秀一) | 進行中の医療制度改革の内容の理解 |
第7回 | 介護保険制度と今後のあり方(中村秀一) | 認知症対策の重要性と内容の理解 |
第8回 | 勤労者のリスクマネジメントとしての年金制度のあり方(小島茂) | 年金制度に対する労働組合の取組への理解 |
第9回 | 勤労者のリスクマネジメントとしての医療・介護制度のあり方(小島茂) | 介護離職防止に向けた労働組合の役割の理解 |
第10回 | 海外と日本の社会保障政策の潮流(畑満、GS) | 福祉国家の類型論と海外と日本の社会保障政策の潮流に対する理解 |
第11回 | ビッグデータを活用した地域医療経営(畑満、GS) | ビッグデータの地域医療への活用方策の理解 |
第12回 | 財政と国債・国際金融(畑満、GS) | 財政赤字が引き起こす国債や国際金融への影響に対する理解 |
第13回 | 公的年金の平成26年財政検証と年金改革(畑満、GS) | 公的年金の平成26年財政検証と今後の課題に対する理解 |
第14回 | 公的年金と企業年金のリスク管理(畑満、GS) | 公的年金や企業年金のリスク管理手法に対する理解 |
第15回 | レポート提出(畑満) | 講義で与えられた知識を体系的に把握するため厚生労働白書平成24年版を通読するとともにレポートとして取り上げる課題に関する著書を参考書の中から少なくとも1冊通読して、課題に対する解決策を提示してレポートを作成すること。 |
毎回講義資料を配布するとともに、レジュメを適宜配布するため、特定の教科書は用いない。
毎回講義資料のファイルを事前にOCW-iを介し開示するので予習や復習に用いること。
厚生省「平成11年版厚生白書―社会保障と国民生活」
厚生労働省「平成24年版厚生労働白書」
吉原健二著「わが国の公的年金制度」中央法規出版
権丈善一著「年金改革と積極的社会保障政策ー再分配政策の政治経済学Ⅱ」(第2版)慶応義塾大学出版会
増田雅暢・畑満著「年金制度が破綻しないことがよくわかる年金Q&A」TAC出版
玉木伸介著「年金2008年問題―市場を歪める巨大資金」日本経済新聞社
権丈善一著「医療年金問題の考え方ー再分配政策の政治経済学Ⅲ」慶応義塾大学出版会
吉原健二・和田勝著「日本医療保険制度史」東洋経済新報社
島崎謙治著「日本の医療―制度と政策」東京大学出版会
池田省三「介護保険論」中央法規出版
和田勝「介護保険制度の政策過程」東洋経済新報社
貝塚啓明、アン・O・クルーガー編「日本財政破綻回避への戦略」日本経済新聞出版社
厚生労働省年金局数理課「平成26年財政検証結果レポートー「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し」(詳細版)-」
厚生労働省社会保障審議会年金数理部会「平成26年財政検証・財政再計算に基づく公的年金制度の財政検証」報告書
厚生労働省社会保障審議会年金数理部会「公的年金財政状況報告(平成26年度)」
出席してアンケートに必要事項を記入することにより、授業への貢献があったものとして、評価する。14回の講義全てに貢献した場合は配点として40%の評価をする。残り60%はレポートへの配点である。レポートは講義の中からテーマを選定して課題と解決策を論じるものとする。なお、14回の講義のうち出席が7回未満の場合はレポート内容の如何にかかわらず不可とするので注意すること。
特になし