この講義の目的は大学院の修士レベルで習得すべき,より高度なマクロ経済分析の方法を習得することである.
この講義の前半(1-7)において,まず研究者レベルのマクロ経済分析に必要な数学的手法の基礎を習得する.そのうえで現在マクロ経済分析で広く用いられている動学的一般均衡モデルの基礎(Ramsey-Cass-Koopmansモデル)について学ぶ.
この講義の後半(9-14)において,このモデルを拡張し,経済成長や景気循環,失業などの重要なマクロ経済トピックのメカニズムがどのように決定されているかについて学習する.
本講義を履修することにより,最新のマクロ経済学の分析手法を身につけるとともに,この分野の最新の研究成果を理解し,自らの研究に活かす能力を習得する.
動学的一般均衡モデル,Ramsey–Cass–Koopmansモデル, 無限視野の最適化,力学系,定常状態,競争均衡経路,内生成長モデル,知識のスピルオーバーによる生産性の向上, R&Dによる技術進歩, 実物的景気循環,カリブレーション
✔ 専門力 | ✔ 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
各トピックの講義終了後に課題を出す.
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | ガイダンス:大学院でマクロ経済学を学ぶ目的と講義概要の説明 | マクロ経済学を学ぶ目的を知る |
第2回 | 数学的下準備(1):離散時間・無限視野の最適化入門とその経済的含意 | 大学院レベルのマクロ経済モデルを学ぶのに必須である離散時間,かつ無限視野の最適化について,その基礎を理解する. |
第3回 | (2):連続時間・無限視野の最適化とその経済的含意 | 大学院レベルのマクロ経済モデルを学ぶのに必須である連続時間,かつ無限視野の最適化について,その基礎を理解する. |
第4回 | 経済成長や景気循環に関する定型化された事実 | 経済成長や景気循環についての重要な事実を知る. |
第5回 | 基本となる動学マクロ経済モデルの解説 (1): モデルの設定 | 動学マクロ経済モデルの基礎をなすラムゼー・キャス・クープマンスモデル(RCKモデル)の設定について理解する. |
第6回 | (2): 競争均衡経路の特徴づけ | RCKモデルの競争均衡経路を導出できるようになる. |
第7回 | (3): 競争均衡経路の効率性について | RCKモデルの競争均衡経路を効率性について議論できるようになる. |
第8回 | 講義前半(1〜7回)の内容についての理解度確認 | 第1回~第7回までの内容を概観し、中間試験を実施する |
第9回 | 知識のスピルオーバーによる生産性向上を取り入れたマクロ経済モデル (1):モデル設定 | 前半で習ったRCKモデルに,知識のスピルオーバーを導入する方法を学ぶ. |
第10回 | (2): 均衡経路の特徴づけと,モデルから得られた結果が持つ現実経済への含意 | モデルの均衡経路を導出し,得られた結果が持つ現実経済への含意を学ぶ. |
第11回 | 独占的競争についての解説 | 独占的競争という市場形態の性質を理解する. |
第12回 | R&D活動による技術進歩を取り入れたマクロ経済モデル (1):モデルの設定 | 前半で習ったRCKモデルに,R&D活動による技術進歩を導入する方法を学ぶ. |
第13回 | (2): 均衡経路の特徴づけとモデルから得られた結果が持つ現実経済への含意 | モデルの均衡経路を導出し,得られた結果が持つ現実経済への含意を学ぶ. |
第14回 | 全体のまとめ | 講義全体の理解度確認をする. |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
特定の教科書は使用しない.講義スライドもしくはレジュメを講義前日までにOCW-iにアップロードする.
(1) Acemoglu, D. (2009) Introduction to Modern Economic Growth, Princeton University Press.
(2) Adda, J. and R. Cooper (2003) Dynamic Economics, Cambridge, MIT Press.
(3) Barro, R. J. and X. Sala-i-Martin (2004) Economic Growth, Second Edition, Cambridge,MIT Press.
(4) Ljungqvist, L. and T. J. Sargent (2012) Recursive Macroeconomic Theory, Third Edition, Cambridge, MIT Press
講義初回時にアナウンスする.
明確な履修要件は存在しないが,単位取得のためには学部レベルのミクロ経済学,マクロ経済学に関する十分な理解度と非線形計画の基本的な知識が必要となることが予想される.