本講義では、理工系大学院生に必要な知的財産権制度の理解を促し、卒業後に将来直面する知的財産権の課題に対し知的財産マネジメントの適切な意思決定ができるための基本的な知識を習得する。このために、現実の企業活動で知的財産マネジメントがどのように行われているかの事例も提供する。また、大学院で進めている自らの研究課題に関連して、特許情報検索および分析を試み、特許情報から得られる技術情報を研究活動に活用し研究成果の拡大に利用するとともに、更に、研究成果を特許出願につなげていくプロセスを概観する。
本格的なグローバル経済へ向かい経営資源および企業活動の再構築が進められており、その一環として、知的財産の創造、保護、活用という正のサイクルを構築し、国際競争力向上のための独自の知財戦略の策定が求められている。将来理工系人材として活躍する修士課程の学生に対し、自らの研究成果の知的財産価値を理解し、これを保護するための知識を習得することを目標とする。技術、法律、ビジネスの境界領域における課題抽出および解決のための幅広いセンスを習得する。
技術、知的財産、知的財産戦略、知的財産情報、知的財産マネジメント
✔ 専門力 | ✔ 教養力 | ✔ コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
まず、知的財産を巡る現状認識、知的財産行政の現状と課題の理解から、今日社会が抱える知的財産上の問題を把握する。また、技術の創造、保護、活用というサイクルの中で、技術と知的財産がどのようにマネジメントされているかを世界の先進企業における知的財産活動の例から理解し、特に、技術の標準化と知的財産の関係について理解する。知的財産権制度のもとでは多くの知的財産情報が公開されるが、これらの情報を如何に分析し管理活用していくかは、企業における技術のマネジメントと密接に関連している。知的財産情報の分析を理解したうえで、知的財産戦略の策定手法を学び、さらに、産業分野ごとの特殊性を理解したうえで知的財産戦略策定の演習を通して実践的な技術と知的財産のマネジメント手法を身につける。
各回の授業内容をよく読み、課題を予習・復習で行ってください。
毎回の授業で出席を取ります。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 技術と知的財産のマネジメントのイントロダクション | イントロダクションとして、知的財産権とは何かを歴史的な経緯及び立法趣旨などから考える。 |
第2回 | 知的財産を巡る現状認識 | 知的財産を巡って、国内及び国際的にどのような動きが出ているかを把握する。 |
第3回 | 知的財産行政の現状と課題 | 知的財産制度の活用の強化がなされてきた。知的財産権を所管する行政庁では、どのような活動を推進しているかを理解しよう。 |
第4回 | 知的財産侵害事例 | 知的財産権侵害訴訟の事例から知的財産権の法律効果を学ぼう。 |
第5回 | 国際標準化と知的財産戦略 | グローバル経済の下で国際的な技術標準化が進んでいる。技術標準と知的財産権の関係について学ぼう。 |
第6回 | 知的財産情報活用の基礎 | 知的財産活動を推進するうえでは、膨大に発行される知的財産情報の活用が必要である。ここでは、知的財産情報の基礎を習得する。 |
第7回 | 知的財産情報の分析手法 | 知的財産権情報の分析手法を学ぶ。 |
第8回 | 知的財産情報の活用事例 | 知的財産情報の分析から何をつかむことができるか、事例を紹介しながら、活用法を更に考える。 |
第9回 | 修士課程での研究活動と知的財産管理と活用 | 大学院修士課程における研究活動と知的財産管理の関係を理解する。 |
第10回 | 知的財産戦略策定 | 企業における知的財産活動の指針となる知的財産戦略の策定の基本を理解する。 |
第11回 | 電機メーカーにおける知的財産マネジメント | 企業における知的財産活動を紹介する。(電機メーカーの事例) |
第12回 | 機械メーカーにおける知的財産マネジメント | 企業における知的財産活動を紹介する。(機械メーカーの事例) |
第13回 | 医薬、化学メーカーにおける知的財産マネジメント | 企業における知的財産活動を紹介する。(医薬、化学メーカーの事例) |
第14回 | 知的財産戦略策定の演習 | 知的財産戦略策定のケーススタディー |
第15回 | 技術と知的財産マネジメントの総まとめ | 技術と知的財産マネジメントの総合的理解を体系的に整理する。 |
講義資料はOCW-iに掲載
Steve Manton著『Integrated Intellectual Asset Management』Gower社
Poltorak & Lerner著『Essentials of Intellectual Property』JOHN WILEY & SONS社
田中義敏他著『企業経営に連携する知的財産部門の構築』発明協会
授業で扱うすべての資料は、事前にOCW-iに掲載
技術と知的財産のマネジメントの実践の習得度を評価する。講義内での3回程度のレポート(70%)、グループディスカッションでの貢献度(30%)
全出席が原則
履修条件は特に設けないが,関連する科目を履修していることが望ましい。
tanaka.y.al[at]m.titech.ac.jp
03-5734-2249
後日授業内で知らせる